5月25日(土)に高知県立大学・高知工科大学 永国寺キャンパスにて開催された「IT・コンテンツアカデミー オープンキャンパス」。
高校生・大学生・社会人を問わず、実に150名以上の高知県民が参加した本イベントは、高知県が昨年から開催している「IT・コンテンツアカデミー」のキックオフとも言える催しだ。ITコンテンツの担い手となる人材の育成を目的に、IT・コンテンツビジネスの基礎知識から最先端のプログラミングまで、幅広く学べるものとなっている。
vol.1記事では、課題先進県として同県の抱える課題と、それに対する打ち手、そしてイベントの基調講演についてお伝えした。
vol.2記事では、このIT・コンテンツアカデミーでも中核的な存在である「アプリ開発人材育成講座」の内容と卒業生の声、そして今期における実際の講義状況について、それぞれお伝えする。
アプリ開発人材育成講座2コース
IT・コンテンツアカデミーには様々な科目が用意されているが、その中でも実際のアプリ開発に取り組む「アプリ開発人材育成講座」というものがある。今回はこの講座の2コース「アドバンスコース」「エキスパートコース」について、それぞれ紹介された。
「可能性の認識差」を超えて(アドバンスコース by.ライフイズテック株式会社)
ライフイズテック株式会社 取締役 讃井康智(さぬい やすとも)氏
最先端の教育プログラムに基づき、大学生や専門学校生が、中・高校生にプログラミングを教えるためのレッスンとして用意されたのが、アドバンスコースである。
講座を受け持つのは、中学生・高校生向けの楽しいIT・プログラミング教育サービスを提供するライフイズテック株式会社。2010年にスタートしてから現在まで、のべ39,000人がLife is Tech ! のキャンプ・スクールに参加しており、また全国41大学、33自治体との連携実績がある、国内最大規模のプログラミング教育プラットフォームである(2019年5月末現在)。
最近では昨年3月に、ディズニーの世界を楽しみながら、初心者でもプログラミングを学べるオンライン学習教材「テクノロジア魔法学校」を発表し、多くのディズニーファンの心をプログラミングへと向かわせた。
実は同社は昨年も、このアドバンスコースを受け持っており、昨年はIT人材を地域で育成するプログラム「Tech for Local」を開催した。
今回は、中高生を導く大学生等向けITリーダー創造インターンシッププログラム「Life is Tech ! Leaders」を、四国で初開講するという。
この「Life is Tech ! Leaders」、コンセプトは「育てて・育つ」だという。つまり、中高生に教える(育てる)ことで、自分自身が成長する(育つ)ことを目指した設計となっている。
カリキュラムは以下の通り。
また研修日程は以下となっている。
「プログラミング未経験の子ども達が、例えばつまらないプログラミング教育を受けることで『プログラミングなんて向いていない』って思ってしまうことは、その一時の感情にとどまらず、今後のITへの意識を狭めてしまうという、計り知れない損失を与えてしまう恐れがあると考えています。
そうは絶対にさせないためにも、私たちはカリキュラムにおける”エンタメ性”を追求しています。
よく地方でプログラミングを教えると、『東京都内の地域の子は何が違いますか?』と聞かれます。
プログラミング能力に差はなく、あるとしたら、『可能性の認識差』だとお伝えしています。
つまり、自分が何ができるか、という無限の可能性を知ることなく、人生の選択をしてしまう可能性が、東京よりも高いということです。検索ワードに何を入れるかで、人生が大いに変わってきます。
そのような観点で、私たちは高知で、ただ単純にITリテラシーを上げたいわけではなく、新しいあたりまえをみんなで共有したい、と考えています。」
テクノロジーを活用した課題解決を(エキスパートコース by.株式会社div)
株式会社div 執行役員 内藤誠(ないとう まこと)氏
4ヶ月間におよぶカリキュラムをやり遂げることで、IT・コンテンツ関連企業の即戦力となり得る実践的プログラミング技術を身につけるためのレッスンとして用意されたのが、エキスパートコースである。
講座を受け持つのは、テクノロジー人材育成スクール「TECH::CAMP」や、短期集中プログラミング学習プログラム「TECH::EXPERT」を提供している株式会社div。
特に「TECH::EXPERT」は、600時間を超える充実した教育プログラムを用意しており、独学だけではなくチーム開発やペアプログラミングといった複数人での開発経験を積むこともでき、また専属トレーナーもつくというサポート体制を通じて、より実践的な内容を学べるので、最短3ヶ月かからずにエンジニアとしてキャリアチェンジできるカリキュラム設計となっている。
同社も昨年から、このエキスパートコースを受け持っており、高知県内に実践的なプログラミング技術を持つ人材を多数輩出することで、企業誘致のさらなる促進と県内人材の定着などの効果を見込んでいる。
実施体制としては以下の通り。600時間以上の教育コンテンツなど、通常のTECH::EXPERTと、基本的な部分は全て一緒である。
また研修日程は以下となっている。
「1983年に発売開始されたファミコンと、2017年に発売されたSwitchを比較すると、CPU性能差は4万8000倍、メモリはなんと200万倍です。テクノロジーの進化スピードは激しく、今後、全ての産業における仕事がテクノロジーによる変化を迫られることになるでしょう。
では、これから10年でなくならない仕事は何かと言うと、既存の仕組みや概念を組み合わせて新しい価値を生み出す『創造的な仕事』と言えます。
そして、この創造的な仕事の幅を広がらせるのが、テクノロジーへの理解だと言えるでしょう。Google、Facebook、Microsoft、Amazon、Apple、Tesla。どの創業者も、テクノロジーに明るい方です。
今後はテクノロジーを活用して、解決できる課題を見つけることがますます重要となり、その手段がプログラミングとなります。
皆さまの人生にサプライズを与えることのできる講座を用意しているので、ぜひご参加ください!」
人材育成講座OB達の声
各コース紹介の後は、昨年度の人材育成講座を受講したOB 2名が、その実績を報告した。
「諦めずに挑戦する強い心」が手に入った
現在e-Janネットワークス株式会社に勤務する川村友義(かわむら ともよし)氏は、昨年度のアプリ開発人材育成講座受講者のお一人。同氏はエキスパートコースを受講したという。
プログラミング技術がこれから先の社会で必須になり、且つ今のうちに身につけることで仕事の幅が広がるのではないかという考えから、エンジニアへの転身を決意し、講座を受講したという。
受講修了後は県内にテクニカルセンターを有するe-Janネットワークスへと入社され、エンジニアへの転身が早々に叶ったという。自由な雰囲気で仕事ができていると同時に、エンジニアとして日々学びがあることに楽しさとやりがいを感じているという。
「具体的なIT知識の習得はもちろんですが、それ以上に、講座を通じて『諦めない心』を学べたと感じています。
毎日原因すら分からないエラーに立ち向かい続け、心が折れそうになる時も何回もありました。
それでも踏ん張って努力を続け、仲間と励まし合いながら協力して進んでいきました。
すべての課題を乗り越えた後、「IT知識」だけではなく「諦めずに挑戦を続ける心」も一緒に学ぶ事が出来たと感じました。
将来IT業界に就職したい人だけではなく、自分に自信がない人や、何かに打ち込んだ経験のない人は是非この講座を受講してみてください!
一つの事を努力し続け、仲間と一緒にやり遂げた経験は、どんな将来でも役に立つはずです!」
とにかく、学生こそ参加すべき!
現在高知工科大学 2年生の森田大智(もりた だいち)氏も、昨年度のアプリ開発人材育成講座受講者のお一人。同氏はアドバンスコースとエキスパートコースの両方を受講したという。
2018年6月から7月の間は週に1回のペースでアドバンスコース(Life is Tech)を受講し、同年7月から11月まではエキスパートコース(TECH::EXPERT)にてどっぷりとプログラミングに浸かったという。
また、コースの受講中および修了後に、AWS(Amazon Web Services)が提供するクラウドコンピューティングを利用する人々のコミュニティである「JAWS-UG(AWS User Group – Japan)」にも計3回参加され、「初心者がAlexaを知るためにチュートリアルをやりまくってわかったこと」「AWSどこから勉強したらいいかわからない説」といったライトニングトーク等の登壇発表もしている。
「バックグラウンドがそれぞれ違う中で、やりたいことがある色々な人たちと沢山出会えて切磋琢磨できた経験は、とても大きいです。Life is Tech受講時に流れていたBGMを聞くだけで涙が出るくらい、貴重な思い出です。
TECH::EXPERTについても、学校でのプログラミング学習ではエンジニアになれる未来が全然見えなかった中、一通り必要な知識を学ぶことができたので、自分の自信につながりました。
学生の方は、受講費5万円は高いなって思うかもしれませんが、両親に頼めばなんとでもなるので、絶対に受講するべきです。
とにかく、学生こそ参加すべきです!
何を受講すれば分からない、とう方は、とりあえず全部の口座に申し込めば良いと思います!」
各アプリ開発人材育成講座に潜入!
イベント修了後、当日夕方にエキスパートコースの無料体験会が、翌日の朝からアドバンスコースの1日目が、それぞれ開催された。
こちらの様子もお伝えする。
エキスパートコース無料体験会
長時間のイベント終了後にも関わらず、無料体験会には大勢の受講希望者が殺到しており、急遽講座を2グループに分けての実施となっていた。
この日のやることは、プログラミング言語「Ruby」を使って以下のプログラムを書くというもの。
文字で書くと分かりにくいが、要は以下のようなアウトプットがコンソール上に表示されるようなものを作る、ということだ。
講座の概要や講師の自己紹介などが終わったら、後はひたすら、各自に割り当てられたパソコン上のWebカリキュラムを進めていく。
もちろん、分からなかったらすぐに質問できる体制となっている。
エキスパートコースではこのように、ひたすらWebカリキュラムおよび自分との戦いが続いていくという。さすが、4ヶ月で即戦力となる実力を要請する講座である。本格的だ。
なお、受講者が快適にプログラミング学習を進めることができるよう、会場部屋には多くの観葉植物が配置されている。画面とのにらめっこが続く状況の中では、有難い気遣いだ。
アドバンスコース1日目
イベントの翌日、朝9時から、今度はアドバンスコースの第1日目が開催された。申込者は全部で38名であり、この日は31名が参加していた。
ファシリテーターは、前日のオープンキャンパスでも登壇されたライフイズテック株式会社 取締役の讃井康智氏。
前日の真面目な表情とは打って変わり、全力で講座を楽しみ、盛り上げている表情が印象的であった。
また、この講座は先述の通り、学生や専門学校生が、中・高校生にプログラミングを教えるためのレッスンとして用意されたもの。様々な大学から、メンターとなる大学生の皆様が4名集まっていた。
そう、前日にオープンキャンパスで、昨年受講者OBとして実績報告をした森田氏(写真一番右)も、今回アドバンスコースのメンターのお一人なのだ。他のメンター陣も、AI研究やDNA研究を専攻するなど、バラエティーに富んだメンバーが揃っていた。
冒頭の説明が終了し、参加者チーム毎の自己紹介が済んだところで、チームビルディングとしてマシュマロチャレンジが行われた。
マシュマロチャレンジとは、以下のようなルールのもと、パスタタワーの高さをチーム毎に競うものだ。人材開発領域でよく活用されるワークである。
ほとんどの参加者にとって初めてのマシュマロチャレンジであり、大いに盛り上がっていた。
ちなみに、本取り組みを企画している高知県 産業創造課の皆様も一緒にチャレンジされていた。
会場の空気が一気に温まったところで、いよいよ、プログラミングのスタートである。
「まずは作ってみる。プログラミングをする上で、この意識はとても重要です。作ることで初めて、次の課題や、やることが見えてきます。」
これから約1ヶ月半の期間をかけて、このプログラマーの思考・行動習慣を養っていくのだろう。
コース初日で参加者がお互いを知らない状態にも関わらず、みな楽しそうな雰囲気である。そして何より、運営サイドも全力で楽しんでいる印象だ。
各所で流されるBGMの効果も相まって、場の雰囲気をしっかりと構築することに設計が及んでいる。
これならば、プログラミングの面白さも醸成されるに違いない。本講座を受講できている参加者の皆様は非常にラッキーだと感じた次第だ。
しつこいようですが、学生は絶対に受講するべき!
最後に、昨年の講座受講生OBであり、今年のアドバンスコースのメンターでもある森田氏に、改めてコメントを頂いた。
「この講座を通じて、本当に様々な人との出会いがありました。
講座受講中および修了後に、AWSのコミュニティであるJAWSイベントに3回も登壇させていただき、そこで出会った大阪の方の会社で、現在インターンをしています。
また、アドバンスコースであるLife is Techで出会った方とは、今度一緒に会社を立ち上げよう、という話が進んでいます。ざっくりですが、企業へのインターンの斡旋に関するサービスを、現在進行形で開発中です。行政・企業・学生のマッチングをする仕組みです。
高校の時は本当にこんなにアンテナが立っていなかったのですが、この講座を通じて、他の大きな世界があることがわかりました。
今後はさらに大きな世界を見てみたく、東京、さらには海外にも出ていきたいと思っています。
何度もしつこいですが、IT業界にちょっとでも興味のある学生は、絶対にこの講座を受講した方が良いと思います。」
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高知県 IT・コンテンツアカデミー オープンキャンパスレポート
vol1. 学生など150名以上がIT・コンテンツ企業求め集結、高知県 産業創造課の挑戦《vol.1》
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vol2. プログラミングで「可能性の認識差」を超えろ!高知県 産業創造課の挑戦《vol.2》
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vol3. 漫画マーケ・AI対話システムなど県内企業10社がピッチ、高知県 産業創造課の挑戦《vol.3》
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vol4. 高知を絶対に沈ませない!熱い思い込める高知県 産業創造課の挑戦《vol.4(last)》
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