参加型民主主義に向けPolitech(政治×テクノロジー)人材輩出に本腰を入れる日本政策学校

インタビュー

政治 × テクノロジー = Politech

 Politech(ポリテック)という言葉をご存知だろうか。政治(Politics)とテクノロジーを掛け合わせた造語である。Fintech(金融×テクノロジー)やAgriTech(農業×テクノロジー)といった、”産業”と掛け合わせたXテック(クロステック)領域が盛んな中、政治領域におけるテックの応用と聞いても、日本ではまだピンとこない方が多いかもしれない。

 だが、海外ではすでに10年以上前からPolitechが盛んだ。

 例えば選挙における電子投票。IT先進国のエストニアでは2002年に電子投票の実験が行われ、2005年の地方議会議員選挙から正式に採用されている。実に14年前に、すでに電子政府構築の一環として、電子投票の仕組みが整っていたのだ。現在は地方議会選のほか、国会議員選挙や欧州議会議員選挙等にも幅広く導入されている。

 また、最近のPolitechスタートアップ各社によるサービスも面白い。支持者集めや資金調達のサポートといった政治活動を支えるもの、署名活動や法案に対する意見の見える化など一般市民の活動や認知を広げるもの、各所に偏在する政治関連情報を効率的に収集・分析できるものまで、様々である。

 ここ日本でも、ブロックチェーンを使ってトークンエコノミーを構築することで良質な政治コミュニティを作ることを目指すPoliPoliなど、面白いサービスが誕生してきた。

 そんなPolitech人材を養成する講座が、日本政策学校で初めて開講されるという。AIやブロックチェーンを活用して政治にイノベーションを起こす人材の輩出を目指し、国内で初めてPolitechに特化した講座群となる。

 Love Tech Mediaでは、我が国の政治における新たな可能性を模索すべく、本講座を企画した、日本政策学校学長の金野索一(こんの さくいち)氏にお話を伺った。

ダイバーシティに富んだ受講生

日本政策学校ホームページトップより

--まず、日本政策学校について、簡単に教えてください。

金野索一(以下、金野氏):一言で申し上げると、政治・政策について学ぶ学校です。

主義主張・政党を超えた自由な議論を通じて、多様な民意が反映される「真の民主主義社会」を実現するために、推進役となる政治リーダーの育成・輩出を目的として、2011年に立ち上げました。

特定の主義主張・政党にこだわらず、様々な分野の第一人者を講師にお招きして講座を開催しており、広く政治・政策を学び、研鑽し、政治リーダーになるための鍛錬の場を提供しています。

 

--これまでどのような方が参加されているのでしょうか?

金野氏:本当にまちまちです。

公務員・地方議員のようなパブリックセクター経験者はもちろん、会社員や経営者といった民間セクターの方、NPOなどの非営利セクターの方、学生、主婦、医者、弁護士、キャスター、芸能人etcまで、多種多様な方々が参加されています。

 

--すごくダイバーシティに富んだ受講メンバーですね。僕自身、日本政策学校出身の政治家の方を何名も存じています。

金野氏:もちろん、卒業後に政治家になる方もいらっしゃいますし、政治家でなくとも社会をより良くするべく、様々な活動へと昇華されている卒業生がたくさんおります。

庶民に近しい人が政治家になっていない、という現実

--そもそも、どうして日本政策学校をスタートさせたのでしょうか?

金野氏:大きく2点、今の政治に課題を感じているからです。

1点目は、人材の偏在です。

 

--どういうことでしょうか?

金野氏:日本の国会議員って、前職が地方議員・政治家秘書・公務員のいずれかである方が、実に約6割を占めています。

つまり、半分以上の国会議員は、税金でお金を得て生活してきた方です。

公的セクターの方が国会議員になってはいけないという話ではなく、国民の多くが民間である社会で、この国会議員の出身分野の偏在という事実が良くないことだと感じています。

一方米国を見てみると、国会議員は民間出身の方が多いです。

様々なバックグラウンドを持つ人材が政治・行政の領域に入ることで、多様な民意を反映し、政治イノベーションが促進されると感じています。

 

--なるほど。確かに日本では、政治家は政治家がなるものだというイメージが強いですね。

金野氏:2点目は、国会議員が提出する議員立法比率の低さです。

年によりますが、日本で成立する法案の7〜8割が閣法(内閣提出)でして、国会議員発議の議員立法は2〜3割程度なんです。

要は、国会議員は法案を作る仕事よりも、行政が作った法案をジャッジする仕事に重心がいっているということです。

結局これだと、生産者や提供者の論理での法案が多くなりがちです。日本の行政機構の多くは、生産者・提供者の分野別に省庁が創られているからです。生産者・提供者とは、例えば医者・医師会・製薬会社、農家・農協、学校・教育委員会、などです。逆は、消費者・生活者の論理です。こちらは、患者、食料消費者、学生・生徒・児童などです。

まとめると、今の政治の大きな課題は、「納税者に近しい人が政治家になっていない」ということと、「多数の消費者・生活者の側ではなく、どちらかというと生産者・提供者ベースの法案が多い」ということです。

 

--言語化すると、確かにその通りだと感じます。

金野氏:統治機構が過去の明治維新、戦時・復興体制の途上国型中央集権モデルなので、今や成熟社会ましてや少子高齢社会に世界最速で突入した日本社会においては、現状は相当厳しいなと感じています。

そんな課題感から、民間の立場から、日本政策学校を立ち上げました。

政治・行政を変革するには、政治家や公務員になって変える、企業・ビジネスを通じて変える、町おこしやNPO活動、政策提案によって変える等、様々な方法があるべきです。つまり公共セクター、企業セクター、非営利セクターの壁を越えて、多様な立場からの参加とアプローチを通じてこそ、政治イノベーションは実現可能であると言えます。日本政策学校は、政治と民主主義の在り方を変革する、3つのセクターの垣根を超えた新たな人材ビジョンとして「政治イノベーター」を掲げ、その実践者を輩出し、その活動を大きく後押ししていきます。

政策調査AIエンジン「レノン」

日本政策学校ホームページより

--そんな中、今年3月23日に入学式を迎える第14期から、新たに「Poli Tech人材養成講座」を始められると伺いました。どのような内容の講座なのでしょうか?

金野氏:文字通り、Politechの視点から政治・政策を考える講座です。

最新技術に精通した多様な人材が日本の政治に参画すること、それが日本の政治を進化させることにつながることを目指します。

14期講師陣には、田原総一郎氏、野田聖子衆議院議員のほか、知事・市長、官僚、大学教授、ジャーナリスト、企業経営者、作家など党派やイデオロギーにとらわれない多彩な人材を擁しておりまして、昨今の政治的諸問題や各種ケースメソッドをテーマに、徹底的な議論をメインとした受講者参加型のカリキュラムで展開していく予定です。

 

--すごいメンバーですね。講義内で、何かテクノロジーを活用したコンテンツはあるのでしょうか?

金野氏:AI企業と共同で開発した「レノン」という、政策課題に関するデータ調査AIエンジンを活用して講義を進めていく予定です。

政策調査AIエンジン「レノン」とは、 下記の10分野の政策分野ごとに、エンジンを10種類開発。その分野ごとにAIがクローリングして調査に行くURL先(政党、その分野の専門家・シンクタンク・省庁、マスメディア等)が30〜60箇所程度、設定されています。その調査先が、思想・信条等に基づいてプロットされている政策ポジション図が表示されており、そのポジションごとにリサーチ調査結果が表示されるものです。

  1. 憲法外交・安保
  2. 社会・福祉
  3. 教育
  4. 環境・エネルギー
  5. 地方自治
  6. Ai&ITと科学技術
  7. 経済(財政、金融、貿易、産業)
  8. 資本主義と人類
  9. 政府と公共機関(政と官)

 

--「データ収集分析の効率化」について、もう少し詳しく教えてください。

金野氏:世の中には様々な立場から、様々な政策内容について発信している政党やメディア・個人の方がいます。

例えば「学校無償化」というテーマ一つとっても、自民党や共産党、朝日新聞や産経新聞、ニューヨークタイムズや寺脇研氏、陰山英男氏など、様々な意見をもつ発信主体がいます。

レノンは上記10分野ごとに、それぞれ世界中のあらかじめ設定された発信主体URLから情報をクローリングしていき、政策に関するデータを収集してきます。

また、上記の10分野ごとに、そのクローリング収集先である各政党・メディア・組織・専門家個人等を、各思想・信条に基づいてプロットされた政策ポジション図が表示されています。そのポジション別に収集された最新の政策調査結果をベンチマークした上で、各個人の政策立案を進めることができます。さらに、調査した「学校無償化」のテーマで、政党、各専門家等のポジションズ図を、自分自身で作成し、立案した自分の政策もポジション図内にプロットし、世の中にわかりやすく問うて行きます。

自分で作成する最新のポジション図により受講者は、世の中にどのような政策や思想があり、自分の考える政策は全体図の中でどのようなポジションで、どのような政党や個人と意見が似ているのか、といったことを効率的に学び、実際に政策を考えることができます。

公共・民間・非営利それぞれのセクターの壁を超えて

--世界中の政策やそれに対する意見・立場が”見える化”されるって、すごいことですね。

金野氏:さらにその上で、講義ではPoliPoliと連携して、ブロックチェーン技術を活かしたSNSツールによる資金と支持者の獲得スキルを学び、より具体的に政策を実現していくためのステップを考えていきます。

他にも、先端技術を活かした民主主義や政治の事例、行政効率化の事例といった、「PoliTech」のリアルケースも学んでいただきます。

 

--最後にLove Tech Media読者に向けて一言お願いします。

金野氏:先ほどもお伝えした通り、我が国の政治は人材と生活者視点の立法という2点で大きな課題を抱えています。

企業などの民間セクターの人材が、もう少しパブリックセクターにシフトしていくことが必要であり、だからこそ、就業後に通えるように講義体系を設計しています。会社を辞めずとも、政治・政策について十分学べるということです。

パブリックセクター、企業セクター、非営利セクターの壁を越えて、多様な立場から、政治と民主主義の在り方に少しでも変革を起こしたいと思われる方は、ぜひ、3月23日開講の日本政策学校第14期生としてご応募ください!

 

編集後記

Love Tech Mediaではこれまで、介護や保育といったテクノロジーの介入に時間のかかる領域を取材してまいりましたが、政治についても同様、テックの導入には時間がかかるものと想定しています。

 

一方で株式会社PoliPoliのように、現役大学生が政治領域でイノベーションを起こしているという事実もまた、大きな可能性を感じます。

 

民間セクターで政治学校を営む日本政策学校がPolitech領域の啓蒙を進めることが、さらなる認知と活用の促進につながることは間違いありません。

 

ちなみに、政策課題データ調査エンジン「レノン」は、かのジョン・レノンからきているとのこと。

 

Peace(平和)を究極の目的として据えられたネーミングに、筆者として親近感を感じました。

 

3月から始まる「Poli Tech人材養成講座」について、引き続き注視して参りたい。

 

『日本政策学校』詳細についてはこちらをご覧ください

 

本記事のインタビュイー

金野 索一(こんの さくいち)

日本政策学校学長
多摩大学大学院特任教授、NPO法人Edo Tec Global代表理事、公益財団法人東京コミュニティ財団評議員、株式会社ピーステックラボ取締役

《最終学歴》
コロンビア大学国際公共政策大学院修士課程修了
《経営分野・過去の経歴》
(株)ブレークスルー代表取締役(政策学校・一新塾と起業学校アタッカーズ・ビジネススクールの運営会社)(株)大前アンドアソシエイツ・パートナー、(株)ビジネスブレークスルー取締役、(株)ネットキャピタルパートナーズ取締役、(株)小西美術工芸社社長補佐等を歴任。
《学校教育分野・過去の経歴》
政策学校・一新塾(運営会社ブレークスルー)代表取締役、起業家養成学校アタッカーズビジネススクールビジネス(運営会社ブレークスルー)代表取締役、
《社会分野・過去の経歴》
公共政策シンクタンク「平成維新の会」研究員、NPOへの寄付ポータルサイト「ガンバNPOネット(現・ギブワン)」 設立者

LoveTechMedia編集部

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