あなたは”妊活”という言葉をご存知だろうか。妊娠をするための活動のことを示し、妊娠についての知識を身につけたり、自身の身体の現状を把握し、必要に応じて改善することなどの行為が該当する。そして、この妊活に取り組む夫婦が、ここ数年で特に増えているのだ。
日本は現在、世界一の不妊大国とも言われている。不妊症とは、通常の性行為(つまりはセックス)を継続的に行なっているにもかかわらず、1年間妊娠をしない場合のことを示す。1年と聞いて、短いと思われる方がいるかもしれない。そう、自分は違うと思われている方も、実は不妊症患者である可能性があるのだ。
LoveTechMediaでは妊活を重要なテーマとして、これから複数記事に渡って取り上げていく予定であり、その第一弾では、妊活分野でオンラインコンシェルジュサービスを提供する株式会社ファミワンの関係者にお話を伺った。妊活をサポートする側とされる側とで、前編・後編に渡ってお届けする。
まず前編では、株式会社ファミワン代表取締役の石川勇介氏にお話を伺った。
適切な情報が必要な人に届いていない状況に課題を感じた
--まずは石川さんの現在のお仕事についてお伺いさせてください。
石川勇介(以下、石川氏):ファミワンの代表として、現在は妊活に取り組む夫婦に向けたLINEチャットを使ったパーソナルサポートサービス『famione(ファミワン)』を事業展開しています。基本的には、これから妊活する人も、すでに深く妊活・不妊治療をしている人も、そして男女問わずどのフェーズであったとしても、サービス利用の対象者となるよう設計しています。
--僕が最初に感じたことなのですが、「男性が妊活の会社をやるんだ」っていう、新鮮な感覚がありました。こういった領域って女性が始めるという勝手なイメージがありまして。どうして妊活の事業を始められたのですか?
石川氏:それはよく言われますね。そもそもは、私自身の妊活経験から来ているんです。私も妻も「子どもなんて、そのうち自然とできるものでしょう」と思っていて、のんびりと構えていました。当時は妊活という単語すら知らなかったと思います。でもなかなか妊娠の兆候が見られない。少しずつ焦ってくる中で、お互いが疲れていき、喧嘩も自然と増えていきました。
--その経緯の中で、妊活のことを知っていったということですね。
石川氏:はい。自分たちも真剣に妊活に取り組もうという流れになったのですが、まず当事者として相談できる人がなかなかいないことに悩みました。仲の良い友人だから相談できる、という類のものでもなく、むしろそういったテーマであるがゆえに誰にも相談できなかったです。かといって、いきなり医療機関に行くのもハードルが高く、自分たちで調べるしかありませんでした。ネット上には様々な情報があったのですが、玉石混合でどれが正しい情報なのか、どれが自分に適した情報なのかを判断することがなかなかできず、非常に苦労をしました。
--石川さんご自身の課題感から、妊活を事業テーマとして選択されたんですね。
石川氏:そうですね。ちょうど起業前に医療情報を扱う会社に勤めていたこともあって不妊の原因やそれを取り巻く医療の進歩について色々と深く調べることができました。それが奏功し、幸運なことに、妊活をスタートしてから程なくして第一子を授かることができました。
ただ、周りの友人や親戚、さらには将来自分の子ども達が同じ課題に直面すると考えると、このままの状況ではいけないなという使命感のようなものを感じまして。それで、夫婦が適切な情報を元に妊活に取り組めるようにサポートする事業を作ろうと決心しました。
専門家とともに、妊活を夫婦で”自分ごと”として考えてもらいたい
--起業当初は今とは違ったサービス形態でしたよね。
石川氏:はい、最初は成果報酬型のサービスを提供していました。月額2万円で妊娠に向けての情報提供や相談コミュニティ、グッズの提供などを行い、一定期間内に妊娠しなければ全額返金、というモデルです。あえて提供期間を区切ることで、検査や治療に進むきっかけにして欲しいと考えていました。
(成果報酬型サービス提供時の相談コミュニティ画面)
石川氏:ただそのサービスが「妊娠版ライザップ」とメディアで表記されるなど、あたかも「このサービスを使えば一定期間内に妊娠できる」という印象を与えてしまうことに違和感を感じました。夫婦で適切な情報を元に、しっかりと期間も区切って妊活に向き合ってもらいたい、という当初のビジョンとサービスへの期待内容にズレを感じ、一度サービスを閉じ、リニューアルすることにしました。
--リニューアル後はどんなサービス内容にされたんですか?
石川氏:全額返金モデルを辞めた後、数多くの試行錯誤を重ねてきました。使っていただいた夫婦の生の声を聞き、それを新しいサービスに反映させ、さらに使っていただいた結果をヒアリングする。その繰り返しで、現在のLINEをベースとした妊活コンシェルジュサービス『famione』にたどり着いています。
夫婦に寄り添いながら、夫婦で納得のいく妊活をしていただくための情報と選択肢を、しっかりとした専門家から案内していくというサービスです。
--なるほど。このサービスはどういった方が対象になるのでしょうか?
石川氏:妊活を行う全ての夫婦が対象で、すでに多くの方に実際に使っていただいています。取り組み始めたばかりで何をしたらいいかわかっていない方、そろそろ病院に行こうと考えているけれどもどう選べばいいか不安な方、そして体外受精などの治療をすでに行っている方などです。女性だけでなく、男性にも使っていただいてます。
具体的な使い方としては、『famione』に最初に登録すると、まず現状の妊活状況を細かくヒアリングするためのオンラインチェックシートが届くので、振り返りも兼ねて記入してもらいます。だいたい40問くらいのボリュームで、年齢、治療歴から夫婦仲について、様々な角度から質問するようにしています。
そこでご記入いただいた内容を元に、専門家からアドバイスやフィードバックが届くようになります。
--専門家とは、どのような方がいらっしゃるんですか?
石川氏:現在登録いただいているのは、全国に171名(2017年8月時点)しか認定されていない不妊症看護認定看護師の方や、同じく全国で100名(2017年7月時点)しか認定されていないNPO法人Fineの認定ピアカウンセラーの方などです。
先ほど、登録後のチェックシートを通じてフィードバックが返ってくるとお伝えしましたが、それ一回きりではもちろんなく、毎月や3ヶ月といった、その人の状態に応じて定期アンケートをとり、その内容に応じたフィードバックも実施しています。基本的にはこれらのサービスを、全て無料でご提供しています。
--全て無料で専門家の方に相談できるんですね!
石川氏:もちろん、プラスαとして個別に電話相談できるような形の有料プランも用意しています。ただ、基本的には無料プランで十分な情報提供ができるように、今は設計しています。
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