新進気鋭のスタートアップ4社が登壇!次世代の巨大産業「タンパク質関連Tech」ミートアップレポート《後編》

インタビュー

 2025〜30年、世界でタンパク質の供給が需要に追いつかなくなるタンパク質危機問題。9月6日夜、この「タンパク質危機」に焦点を当てたイベントが、Creww株式会社主催のもと、同社が運営するコワーキングスペース「dock-Toranomon」にて開催された。本課題の解決に取り組んでいるスタートアップや大手企業、研究者の方々をお招きしての啓蒙活動が行われ、当日は100名を超える来場者で賑わった。Love Tech Mediaでは、前編・後編に渡ってイベント内容をレポートしている。

 前編ではこの分野における専門家の方々に、タンパク質危機の現状と今後における課題・取り組みについて、パネルディスカッション形式でお話いただいた。

 後編ではいよいよ、タンパク質関連テクノロジースタートアップ4社によるサービスプレゼン大会をお伝えする。「タンパク質」という軸で事業会社が集まることはなかなかないので、非常に貴重な場となった。

 以下、1社ずつプレゼン概要に触れていく。

》前編記事はこちら

 

株式会社ムスカ

 本イベントの企画会社でもある株式会社ムスカ。同社のビジネス優位性を一言でお伝えすると、「サラブレッドなハエ」である。

 45年1,100世代に及ぶ選別交配を重ねたイエバエの幼虫によって、生ゴミや畜産糞尿などの有機廃棄物をわずか1週間で全て高付加価値な飼料と肥料に変える100%バイオマス・リサイクルを実現する昆虫テクノロジーだ。世界に先駆けて昆虫(イエバエ幼虫)の安定大量培養にも成功。同技術の普及により、世界的規模でタンパク質の需要に供給が追いつかなくなる「タンパク質危機」の解決を目指している。

 なんとこのハエの種は、もともとは45年前の旧ソ連時代のものだというから驚きだ。(参考記事:昆虫×テクノロジーで食糧危機の解消に挑戦するムスカ《前編》

 様々な優位性がある一例として、例えば従来の堆肥化処理との比較を見ると一目瞭然。処理にかかる時間に限らず、温暖化ガスや汚臭、地下水汚染や外気温による影響など、多くの点で地球環境に非常に優しい。

 また、世界の競合他社を並べた際に、同分野において時価総額トップのAgriprotein社(南アフリカ共和国)と比較しても、飼料への返還率や生産サイクルなどの生産効率の観点で実に2.64倍と、圧倒的な生産優位性がある。

 今後の世界展開が非常に楽しみなスタートアップ企業だ。

 プレゼンターは同社暫定CEOの流郷綾乃(りゅうごう あやの)氏。Love Tech Mediaではこれまでも、同社について各種記事を発信してきた。暫定CEOという役職詳細については、以下の記事を併せてご参照いただきたい(参考記事:昆虫×テクノロジーで食糧危機の解消に挑戦するムスカ《後編》)。

 

エリー株式会社

 2社目は、日本初の機能性昆虫食「シルクフード」を開発するスタートアップ、エリー株式会社。京都大学との共同研究開発により誕生した企業だ。

 「シルクフード」とは、昆虫食の特徴である「環境負荷が低い」「高い栄養価」に加えて、多くの「機能性」成分を含む次世代の食品。現在、京都大学と「栄養学」「昆虫学」の両面から研究開発を行っているとのこと。世界的にプロテイン補給目的の昆虫食が多い中、機能性に着目した昆虫食はブルーオーシャンとなっている。

 同社が対象とする昆虫は蚕(カイコ)である。もっと正確にいうと、家畜化されたカイコである「カサン(家蚕)」と、野生のカイコである「ヤサン(野蚕)」の中のエリサンである。

 特にエリサンは、蚕の中でももっとも美味とされ、既存食を上回るとも考えられている。茹で落花生のような味とのことだ。原産国のインドでは、高級食材としても扱われている。

 ちなみに、エリー株式会社の名称は、このエリサンからきているとのこと。

 蚕は、これまで研究が進んでいることで飼育コストが安く、味が美味しいことで食品としての価値が高く、栄養価が高くて多くの機能性を含むので、非常に事業化に向いているようだ。

 プレゼンターは同社取締役の梶栗隆弘(かじくり たかひろ)氏。現時点ではまず、国内での昆虫食啓蒙と市場創出が短期目標となるが、将来的には「世界の食料・環境問題の解決」を目指されている。科学の力で昆虫を食する文化を創出し、日本から世界へシルクフードを普及させていくとのことだ。

 

株式会社ちとせ研究所

 3社目は、幅広い生物(微生物・培養細胞・微細藻類など)の育種・培養技術を有し、それらの技術と知見を生かしたビジネスを展開する株式会社ちとせ研究所。

 様々な事業の中でも、今回はタンパク質危機というテーマなので、地球上で最もタンパク質生産効率の高い藻類(スピルリナ)事業についてお話しされた。

 35億年前に地球に誕生した、最古の植物とも呼ばれるスピルリナ。60種類以上の栄養素を含み、スーパーフードの王様として広く知られている。

 藻類というと、どうしても臭いや味がきつい印象があるが、藻類・微生物研究者が5年の研究開発を経て無味無臭の生スピルリナの製品化に成功。本格的に事業展開すべく、2014年に株式会社タベルモを設立した。

 同社の技術を使えば、これまで叶わなかった熱帯での藻類培養が可能になる。2018年5月には三菱商事と産業革新機構から合計17億円の資金調達を実施し、ブルネイに製造拠点を設立されるとのこと。グローバル展開を加速させる予定だ。

 実際に会場に置かれていた、粉末状のスピルリナを見てみたが、色も臭いもなく、まるで小麦粉のような印象だった。これならば、様々な食事に入れたとしても全く問題ないだろう。

 プレゼンターは株式会社ちとせ研究所 取締役/最高光合成責任者の中原剣(なかはら けん)氏。最高光合成責任者なんて、非常にユニークな役職だ。スピルリナの大量生産と販売を通じ、目前に迫るタンパク質危機の解決、人類が持続的に暮らせる世界の実現を目指されている。

 

インテグリカルチャー株式会社

 最後4社目は、細胞培養による食糧生産「細胞農業」の社会実装を目指すスタートアップ、インテグリカルチャー株式会社。

 動物を殺すことなく、細胞培養技術を通じてお肉などのタンパク性食糧を作ることのできる未来を作ろうとしているビジョナリー企業だ。

 細胞培養による生成した肉は「純肉(クリーンミート)」と呼ばれる。もともと、この純肉を作るには多くの資金投入が必要だった。200gの純肉ハンバーグを作るには、2,800万円もの資金が必要、という海外での事例もある。

 そんな中同社では、細胞培養コストを現時点で1/100以下にするCulnetシステム(細胞工場)を研究開発し、それを基幹技術として超省資源な食糧生産を目指している。

 高価な細胞由来機能成分や、細胞そのものを安価に生産可能な同社技術は、コスメや機能性食品への応用だけでなく、大規模プラントでの食肉生産も期待できる。この大規模プラント運用が実現すれば、2026年には細胞培養コストを1/10000以下にまで下げることができると想定している。まさに、農地不要・超省資源で様々な「細胞農業」が可能となる。

 将来は宇宙での食糧生産実現を視野に入れているとのこと!

 プレゼンターはインテグリカルチャー株式会社 CCO(Chief Culture Officer)の田中啓太(たなか けいた)氏。同社チャプター1枚目の写真は、まさに未来の田園風景をイメージしているとのこと。「やさしいSFの世界を実現したい」との思いで事業展開されている。

 

編集後記

今回は「タンパク質危機」というキーワードを軸に、産官学様々な方のお話を伺うことができ、非常に理解が深まりました。

 

「世界の食糧危機」というと、どうしても広く遠い視点での話となりますが、自分たちの子ども世代が大人になった時の食糧事情という視点で考えると、途端に身近なテーマになります。

 

パネルディスカションで登壇いただいた専門家の方々、及びショートプレゼンをされたスタートアップ企業の皆さま、それぞれが将来の地球及び人類への思いやりと愛に溢れていました。

 

Love Tech Mediaでは今後、今回登壇されたスタートアップ企業各社に、より詳しくお話を伺ってまいりたいと思います!

 

 

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