株式会社リクルートライフスタイルが開発する、スマホで精子をセルフチェックできるサービス「Seem(シーム)」。男女共に妊娠を「自分ごと」として認識してもらうための第一歩として、男性の妊活参加ハードルを低くすることを目的に作られたプロダクトだ。
前編では、Seemサービス開発責任者である入澤諒氏に、サービス開発の経緯や思い、これからの展開についてお話を伺った。
後編では、実際にSeemを使われたユーザー2名に、それぞれお話を伺った。
佐藤亮太(さとう りょうた)氏
27歳。都内在住。職業はスマホアプリの企画/ディレクター職。
同年齢の奥様と結婚。2018年に第一子が誕生。
山口順通(やまぐち まさみち)氏
40歳。都内在住。職業はWEBサービスプロデューサー。
10歳年下の奥様と結婚。2017年に第一子が誕生。
精子の運動率がWHOの基準値以下でした
--最初に、お二人のSeemご利用歴について教えてください。まずは佐藤さん、お願いします。
佐藤氏:Seemを知ったのは2015年末ですね。当時はリリース前のモニター参加者を募集していて、知り合い経由で知りました。そこでスマホで精子をチェックできると聞いて、「自分の精子を見てみたい」という純粋な好奇心があって使ってみました。
--その頃、妊活はされていましたか?
佐藤氏:いや、当時は僕と妻の二人とも25歳でして、妊活はしていませんでしたし、しようという流れも特にありませんでした。
ただ、20代で子供ができたらいいね、とは前々から話していましたね。
--なるほど。ご自身の精子をスマホで見られた結果、いかがでしたか?
佐藤氏:Seemでは精子の「濃度」と「運動率」を測り、WHO(世界保健機関)が提示する基準値と比較できるのですが、僕の場合、運動率がWHOの基準値をちょっと下回っていました。
あれっ、と思ってもう一度測ってみたら、なんと、さらに結果が悪化しまして。
日を改めて3回目を実施したところ、ようやくWHOの基準値を上回りました。
--その後医療機関には行かれましたか?
佐藤氏:モニターということで実はその頃から入澤さんとは話していました。入澤さんには、医療機関でちゃんと検査したらより安心できるよとアドバイスされましたが、まだそこまでじゃないかなと思い、病院には行きませんでしたね。
ただ、Seemでの測定を機に妊活や不妊治療のことについて色々と調べたり、夫婦で少し具体的なことを話すきっかけになりました。
閉塞性無精子症という診断でした
--次に山口さんのSeemご利用歴について教えてください。
山口氏:僕も同じく、2015年末にモニターとしてSeemを利用しました。その少し前あたりから妻と「妊活を始めようか」という会話をしていたので、ちょうど良いタイミングでした。
最初使ってみると、Seemの画面上に動くものが何もなかったんです。おかしいなと思ってもう一度計測しましたが、やはり何も動いていない。
入澤さんに確認してもらったところ、「ちゃんと医療機関に行って診てもらった方がいいです」ということになりました。
--いきなり何も映らないと焦りますね。
山口氏:そうですね。その日のうちに医療機関での検査を予約しました。
医療機関では精液検査と、血液を採取しての染色体検査が行われまして、即日でまず精液検査の結果が出てきました。Seemと同じく、精子の数はゼロでした。
無精子症であることはほぼ間違いなく、染色体検査の結果を待っての正式診断とのことで、1ヶ月ほど待ちました。
結果として染色体に異常はなく、「閉塞性無精子症」と診断されました。
手術をして精子を取り出すことで子供ができる可能性がある、ということを教えていただき、すぐに高度生殖医療である顕微授精をすることになりましたね。
--時系列としてはどれくらいのスピード感だったのでしょうか?
山口氏:Seemを使ったのが2015年11月下旬で、医療機関で最初に検査を受けたのが12月上旬。そのあと手術を1月にすることになりました。
もともと男性にも不妊の原因があること自体は知っていましたが、まさか自分が当事者になるとは思っていなかったので、早く知ることができて本当に良かったと、今でも感じます。
次ページ:男性より女性の方が何倍も大変ですよ