環境・企業・広告主・TAAS、四方よしの機密書類用ゴミ箱「e-Pod Digital」《前編》

インタビュー

「全国382万社のゴミ箱をデジタルメディア化するプロジェクトが、クラウドファンディングで総額8,000万円以上の支援額を、わずか3時間で達成した」

 最初にこのニュースを聞いたときは、正直内容をイメージできなかった。ゴミ箱をデジタルメディア化するって、どういうことだろう。全国各地にある会社のゴミ箱をIoT化するということだろうか。そもそもクラウドファンディングで8,000万円以上って、そんなこと有り得るのか。しかも、たったの3時間で。

 もう少しWEBで情報収集を進めると、色々とわかってきた。

 今回のプロジェクトは、主にスタートアップにおける新たな資金調達方法として注目されている株式投資型クラウドファンディング(※)にて実施されたもの。

※株式投資型クラウドファンディング:非上場株式の発行により、インターネットを通じて多くの人から少額ずつ資金を集める仕組み。(日本証券業協会HPより抜粋)
 ゴミの中でも対象となるのは「機密書類」だということ。

 そして、企業はその機密書類を”無料で”処理することができる、ということ。

 企業の機密書類は、単にゴミ袋に入れるだけ、もしくは裁断するだけではだめだ。企業活動に関わる機密情報が書いてあるので、外部に漏れたりなどしたら一大事だからだ。多くの企業では、機密書類処理業者に処理依頼を発注し、業者の方で書類回収後、各社それぞれの工程を経て処理される。それ相応の予算が必要となり、企業にとって本来はコストになるものだ。

 何故”無料”で処理できるのだろうか。そもそもゴミ箱のデジタルメディア化とはどういうことだろうか。

 本プロジェクトを起案したTAAS株式会社 代表取締役兼CEOの大越隆行(おおごしたかゆき)氏に、前後編に渡ってお話を伺った。

3時間で上限の8,500万円に達したクラウドファンディング

--まず貴社事業内容について教えてください。

大越隆行(以下、大越氏):e-Podという機密書類の溶解処理プラットフォームを展開しており、その中で大きく2つのサービスを展開しています。

まず、弊社設立当初から展開しているのが「e-Pod for Business」です。私たちの原点となるサービスです。

一言で申しますと、オフィスで不要になった書類を回収し、専用工場で溶解処理(※)・加工をして、企業ロゴの入ったノートやメモ帳などのノベルティとして還元されるサービスとなります。

※溶解処理:水に溶解させて解読不可能な状態にする溶解

専用BOXが弊社から毎月郵送され、そこに書類を詰めて発送していただくオペレーションです。

大越氏:そして、これの進化版ともいうべきサービスが「e-Pod Digital」です。

e-Pod for Businessでは、一連の処理工程を実施するのに、企業様より処理費用を頂戴していました。もちろん、これは一般的な機密書類処理サービスでも同様です。

それに対しe-Pod Digitalでは、企業様は一切費用をかけずに処理できるような仕組みにしています。

まずはこちらの動画を見ていただくのが早いかと思います。

 

大越氏:機密書類専用処理BOXであるe-Pod Digitalは、ゴミ箱にデジタルサイネージ広告の機能をつけており、広告モデルによる「コストゼロ」を実現しています。

2018年7月15日から日本クラウドキャピタル社が運営する「FUNDINNO(ファンディーノ)」でクラウドファンディングを実施しての資金調達だったのですが、開始5分で目標額の5,000万円へ到達し、開始3時間で上限8,500万円へ到達し、無事に資金調達が完了しました。

※クラウドファンディング終了後、キャンセル発生も含め、実際の調達額は8,290万円となった。

機密書類処理の無償化というチャレンジ

クラウドファンディング終了直後のプロジェクト画面

--8,500万円をクラウドファンディングで、しかも3時間で調達するって、すごいですよね。

大越氏:ありがたいことに、それだけ多くの投資家の皆様からの期待値が大きかったと理解しております。

企業にとっては従来有料でしか利用出来なかった「機密書類の処理コスト」が、業界で初めて「タダで」利用できるようになり、また広告主にとっては企業のオフィス内にいるビジネスパーソンに対してダイレクトに自社の広告訴求ができるという、双方にとってこれまでにないメリットをご提供できます。

--そもそもどのような経緯で、e-Pod for Businessという有料で回収するモデルから、今回の広告モデルによるe-Pod Digitalに変遷することとなったのでしょうか?

大越氏:e-Pod for Businessの契約企業の方々とお話する中で、「そもそもこの機密書類処理の費用と時間のコストをなんとかできないか」という声を頂いていました。

特に溶解処理はどうしても焼却処理よりも費用がかかってしまうので、機密保持というセキュリティ面では優れていて環境にも優しいが、現実的に出費を抑えたいとのことでした。

どんなにペーパーレスが進んだとしても、企業活動の中での”紙”出力文化は、おそらく無くなる事はないでしょう。

そうすると企業はいつまでたっても、それらの書類を処理するのに、時間とお金をかける必要があります。

業者に頼むと毎年数万〜数百万円の負担となります。一方、自分たちで処理をしようとすると、シュレッダー処理をするのに、これまた莫大な労力が必要となります。弊社の試算によると、コピー用紙1箱(5,000枚)分の処理にかかる時間は約7時間でして、およそ1日分の人件費になります。

--昔、一度だけ、延々とシュレッダーをかけ続ける日を体験したことがあります。とても辛い時間でした。

大越氏:まさに、働き方改革に逆行する業務です。e-Pod Digitalでは、書類をそのままデジタルボックスの中にポンっと入れるだけです。

また業者に頼んだ場合、機密書類回収後のプロセスを確認できないまま処理が行われることも課題だとおっしゃっていました。実際に低セキュリティのサービスでは、情報漏洩がおこるといった状況すら発生しているようでして、発注企業が自分たちで処理工程を確認できることも大切だと考えました。

どうやったらこれらの課題解決ができるかを考えた中で、e-Pod Digitalのアイデアに辿り着きました。

 

--e-Pod Digitalではセキュリティ面でも安心ということでしょうか?

大越氏:安心・安全で見える化された処理の流れを実現しています。

まず、弊社ではロジスティクスパートナーとして日本郵便様と契約しております。機密書類の輸送は全て日本郵便様が実施してくれるので、荷役・保管・配送の観点で非常に信頼度が高いと自負しています。

また、提携している処理工場は24時間365日監視カメラで監視しており、書類が処理された時点でWEB上から企業様がいつでも確認でき、必要に応じて「処理証明書」も発行できるように設計しています。

SDGs・ESGでの事業貢献も可能なe-Pod Digital

--まさに、機密書類処理におけるイノベーションですね。ちなみに、この事業は環境にも優しいと伺ったのですが、なぜなのでしょうか?

大越氏:弊社が採用している溶解処理は、焼却よりもCO2排出量を抑えた、環境に優しいリサイクルができます。

よって企業・広告主双方にとって、弊社サービスを利用することが即ちSDGs・ESG(環境・社会・ガバナンス)での事業貢献が可能となります。

また、処理されたパルプを再利用してコピー用紙やメモ用紙といったノベルティグッズにして、企業へ還元します。

それによりさらに、事務用品への出費も抑え、資源を有効的にリサイクルさせます。SDGs No12の「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」項目に取り組んでいます。

e-Podサービスページより

--日本では、SDGsこそ2018年にトレンドワードとして一気に盛り上がりましたが、本質的な取り組みはまだまだ少ない印象で、ESG投資については認知すら限定的な印象ですね。

大越氏:まさに、全世界の資産運用残高のうち、ESG投資を考慮した投資割合は2016年時点で26.3%あり、特にヨーロッパでは50%を超えています。

また、ESG投資の投資残高も約23兆ドル(約2600兆円)となっている中で、欧米に比べて、日本・アジア地域のESG投資は日本が3.4%、アジアが0.8%に過ぎません。

日本はもちろん、世界的に見ても、今後拡大が見込める市場と言えます。

この分野でも、弊社事業が牽引していく存在になれたらと考えています。

グローバルでのESG投資が占める割合

--環境・企業・広告主・そして御社、いずれにとってもWinな事業ですね。これならVCがまとまった金額を投資してくれそうなものですが、なぜ新規事業であるe-Pod Digitalへの出資をクラウドファンディングで実施されたのですか?

大越氏:この溶解処理の業界って相当ニッチなので、VCの方々にとっても特に知見のない領域です。なので、なかなか投資対象として判断してもらえませんでした。

それでも色々な投資家への面会を通じて出資を得ることはできたとは思いますが、とにかく早く事業展開を進めたかったので、スピード重視でクラウドファンディングで出資を募ることにしました。

今回プラットフォームに選定させていただいたFUNDINNOは日本初の株式投資型クラウドファンディングなのですが、審査を経たのちに1ヶ月程度で準備を進めてくれたので、非常に助かりました。

 

前編では、大越氏率いるTAAS株式会社の新規事業であるe-Pod Digitalの事業概要について詳しくご説明いただいた。

後編では、大越氏がどのような経緯で同社を立ち上げ、どのような思いで現在の事業を運営され、どんな未来を見られているのか。この部分について、詳しく伺った。

 

》後編記事につづく

 

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