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故人として話すAI「Generative Ghosts」を16人が体験。「転生型」を好む傾向がありつつ、依存への懸念も

2026 7/28
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長岡武司

米国の州立研究大学であるコロラド大学ボルダー校の研究チームが、近しい人を亡くした16人を対象に、故人を再現するAIと対話してもらう研究を行った。

参加者が体験したのは、故人について「〜さんは〜だった」といったような三人称で説明する「代理人型AI」と、故人として「私は〜だった」のような一人称で返答する「転生型AI」の2種類だ。全体として好まれたのは、目の前の故人に話しかけるような感覚が強い後者の転生型AIだった。

研究成果は査読を経て、ACM Designing Interactive Systems Conference 2026(DIS 2026)の論文集に収載され、2026年6月にシンガポールで発表された。著者らの把握する限り、故人との個人的な関係を反映したAIを参加者が実際に操作し、その体験を調べたユーザー研究には先行例がないという。

参加者は、生年月日などの事実が多少違うことよりも、呼びかけ方や語調、返答の長さが「その人らしいか」を気にしていた。故人を再現するAIは、保存されたデータだけで形づくられるわけではなく、残された人の記憶や期待も、会話の中の「故人らしさ」を作っているのだ。

今回の対話は1回限りで、AIの返答は研究者が確認しながら送信する形を採用していた。悲嘆を和らげる治療効果や、長期間使った場合の影響を検証した研究ではないものの、故人AIの設計を考えるうえで見逃せない結果があるとして話題になっている。以下、研究の仕組みと結果、残された論点を詳しく見ていく。

目次

16人が2種類の故人AIと約20分ずつ対話

研究を主導したのは、コロラド大学ボルダー校情報科学部博士課程のジャック・マニング[Jack Manning]氏と、同学部准教授のジェド・R・ブルベイカー[Jed R. Brubaker]氏ら5人である。

参加者は、近しい親族または友人を亡くした22〜50歳の16人だった。研究チームはソーシャルメディアと参加者からの紹介を通じて募集しており、全員が故人を基にしたAIとの対話を事前に了承していた。故人が亡くなってからの期間は1年未満から20年以上まで幅があり、祖父母を選んだ参加者が10人を占めた。

参加者は事前アンケートで、故人との関係や性格、話し方、思い出などを記入。当日のセッションはZoomで45〜90分行われ、研究者が故人について追加で聞き取りを行った。その情報を別の研究者がGPT-4への指示に組み込み、2種類の返答を作成したという。

一つは、「彼女はあなたと海へ行くのが好きでした」のように、故人について三人称で説明する「代理人型AI」である。もう一つは、「一緒に海へ行ったことを覚えているよ」のように、故人本人の立場から一人称で話す「転生型AI」だ。参加者は体験する順番を無作為に変えながら、両方と約20分ずつテキストで対話し、その後の半構造化インタビューで体験を比較した。

もちろん、参加者には開始前に、対話相手が故人本人ではなくシミュレーションであることが説明され、いつでも中止できると伝えられた。セッション中はファシリテーターが待機し、カウンセリングなどの情報も用意していた。研究計画は同大学の倫理審査を受けている。

全体的に「転生型AI」が好まれるも、代理人型AIを嗜好する参加者も

論文のアブストラクトは、結果の中心を次のように記している。

“Reincarnation was preferred for its immediacy, but participants shared fears of over-reliance.”

「転生型AIは、故人をすぐ近くに感じられることから好まれた。一方、参加者は過度に頼ってしまうことへの不安も共有した」(編集部訳)

— 出典:Designing Conversations with the Dead: How People Engage with Generative Ghosts

転生型AIでは、AIが「私」としてユーザーへ話しかける。参加者の中には、故人との会話が再開したように感じ、慰めや一区切りを得られたと振り返る人がいた。三人称で故人について説明する代理人型AIよりも、転生型AIの方が直接的で感情を動かされやすかったというのが、本研究のポイントの一つである。

もっとも、全員が一律に転生型AIを選んだわけではない。「AIが故人に “なり代わる” 感覚」に強い違和感を覚え、代理人型AIの方が安心できたと話した参加者もいる。また、会話より独り語りを好んだ祖母の記憶と代理人型AIの文体が偶然重なり、こちらの方が本人らしいと感じた例もあった。

さらに、代理人型AIとの会話でも、参加者は「おじいちゃん」と直接呼びかけることがあった。AIが「あなたの祖父は」と三人称で返答しても、ユーザー側が故人との対話へ読み替えていたのである。研究チームは、AIが設定した話し手の立場よりも、故人へ話しかけたいというユーザーの目的が、会話を強く方向づけたと分析している。

生年月日より、呼び方や返事の長さが「その人らしさ」を左右

参加者がAIを本人らしいと感じるかどうかは、故人に関する事実の数だけでは決まらなかったという。言葉遣いや感情の表し方、返答の間合いなど、日常のやり取りで覚えた細かな特徴が大きく影響したのだ。

たとえば、ある参加者の義父を再現したAIは、その人が実際には使わなかった「champ」という呼び方を選んだ。コロラド大学ボルダー校の公式発表によると、参加者はそれだけで故人らしさを感じられなくなり、セッションをやめかけたという。反対に、故人が使っていた地域特有の言葉や愛称が合っていると、詳しい経歴を言い当てられなくても、会話は強く心に響いた。

返答の長さも重要だった。GPT-4が生成しがちな長い段落は、普段のテキストメッセージより電子メールに近く、会話の勢いを損なった。参加者が好んだのは、短い文や絵文字を交え、すぐに言葉が返ってくるようなやり取りだった。

つまり、故人AIの開発者が正確な経歴や大量の文章だけを集めても、ユーザーが覚えている会話の手触りまで再現できるとは限らない。一方で、感情に合う返答を優先しすぎれば、誤った内容でも「その人が言いそうだ」と受け入れられるおそれがある。

実際、今回の参加者は、自分が答えを知らない質問もAIへ投げかけていた。親しみやすい口調が、生成された内容への信頼をどこまで高めるのかは、別に検証する必要があるだろう。

完全自動ではなかった故人AI。会話にはユーザーの記憶も反映

研究チームは「Generative Ghosts」を、故人に関するデータを基に、新しい発言や行動を生成できるAIとしている。この名称と設計枠組みは、Google DeepMindのメリディス・リンゲル・モリス[Meredith Ringel Morris]氏とブルベイカー氏が2024年に公開した先行論文で提唱したものだ。今回の研究の新しさは概念の提唱ではなく、実際に対話した人の反応を調べた点にある。

ただし、今回のプロトタイプは、故人が残した大量のメッセージで新しいモデルを訓練したものではない。研究者が参加者から聞いた性格や思い出をGPT-4へ入力し、生成された返答を確認してZoomへ転記したものになる。必要に応じて文章を軽く編集しているし、会話と無関係な返答に関しても作り直している。返答に平均60〜90秒かかったのも、この手作業によるものだった。

一方、研究者の介在だけが会話を作っていたわけでもない。参加者は違和感のある言葉を読み流したり、質問を変えたり、代理人型AIを故人本人として扱ったりして、対話を自分の記憶へ近づけていた。同じ返答でも、故人との生前の関係や、対話で得たいものによって受け止め方は変わる。

サービスとして故人らしさを高めるには、故人が残した文章や音声だけでなく、ユーザーが何と呼ばれていたか、どのような距離感で話していたかまで集めることになるだろう。こうした情報は故人だけのデータではない。二人の関係を記録した、きわめて私的なデータでもある。

AIのフロンティアモデルが、研究時点のものから大幅に進化している点に注意が必要

大学の公式発表によると、参加者16人は全員、故人AIを再び使いたいと回答した。一方、ほぼ全員が、深い悲嘆の中にいる家族や友人がAIに頼りすぎることの危険性・リスクも挙げている。自分自身よりも、喪失を受け止めきれていない身近な人への影響を心配する声が多かったというのだ。もちろん、参加者が体験したのはあくまで各モード約20分の対話であって、この結果が、実際に依存が発生したことを意味するわけではない。

参加者が感じた “慰め” についても同様だ。対話直後に「一区切りを得られた」と語った人はいたものの、悲嘆症状を臨床尺度で測るようなものではないため、故人AIに治療効果があるとは言えないし、そういう類の研究でもない。とはいえ、研究チームは現在、メンタルヘルスの専門家と協力し、便益とリスクを調べる次段階の研究に着手しているという。

なお、製品として提供する場合は、故人本人が生前に再現へ同意していたか、家族の誰が作成を決められるかという問題も残る。ある家族には慰めになる返答が、別の家族には故人の尊厳を傷つけるものと感じられるかもしれない。使用時間の上限や一時停止、データ削除、代理人型AIと転生型AIの切り替えを用意するだけで安全を確保できるかも、今後の検討事項となるだろう。

さらにもう一点重要なこととして、本研究がGPT-4という旧モデルで検証されている点だ。記事執筆時点のフロンティアモデルは、GPTシリーズでお伝えするとGPT-5.6 Solだし、最近ではAnthropicもOpus 5やFable 5をリリースしていることから、回答精度(残された人がどうすれば喜ぶのかといった推論含め)は飛躍的に向上している。

例えば、本研究では研究者によるヒューマン・イン・ザ・ループの設計が前提となっていたが、現在はAIエージェントによるリアルタイム編集が可能になっていることから、人間の介入が所与ではなくなる可能性も出てきている。

GPT-4の時代と比べると、AIエージェント機能もガバナンス機能含め本格的に実装レベルになっていることから、前提も変わってくることがあるだろう。

「技術的にできること」と「社会的にできること」の設計が急務

今回の研究は、対象が16人で、かつ故人AIとの対話に同意して応募した人に限られるため、広く一般化できる結果とは言えない。分析内容についても、西洋・英語圏の文化的背景に位置づけられると、研究者自身が説明している。宗教観や葬送文化、故人との関係によって、同じAIへの反応は大きく変わり得るため、西洋・英語圏以外の条件設定で進めた場合は、また異なる結果が出てくるかもしれない。

今回の研究結果を踏まえて、今後は、数カ月単位で使ったときに慰めや依存がどう変化するかを追ってみたいところだが、個人的に気になる点としては、故人AIが「また会える場所」になるほど、本人と家族の同意や会話データの管理に加え、その場所を誰が作り、止め、消せるのかまで設計が重要になることだ。

AIが物凄い勢いで進化している一方で、それに合わせた社会制度設計が圧倒的に間に合っていない。故人AIに限った話ではないものの、「技術的にできること」と「社会的にできること」をどのように考え、整えていけばいいのか。まだ議論すら始まっていないケースも多いのではないだろうか。

※Googleはブルベイカー氏を、同名の故人AI研究プロジェクトに対する研究助成の採択者として掲載している。この助成が今回の論文を直接支援したかは、公表情報から特定できない。

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AIコンパニオン Generative Ghosts グリーフテック 悲嘆 故人AI

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この記事を書いた人

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LoveTech Media編集長。映像制作会社・国産ERPパッケージのコンサルタント・婚活コンサルタント/澤口珠子のマネジメント責任者を経て、2018年11月にあいテクテク株式会社創業。愛に寄り添うテクノロジーの切り口で事業を展開。一児の父。

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