リリース概要
株式会社ユーグレナ(本社:東京都港区、社長:出雲充、以下「ユーグレナ社」)は、明治大学黒川農場、戸田建設株式会社、株式会社ルートレック・ネットワークス、株式会社DAインベント、Office FUJIWARAと共同で、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ、以下「ユーグレナ」)を原料とした有機液肥※1を用いた農作物の栽培実証を実施し、従来の化学液肥と同等の農作物の収穫量が得られることを確認しました。
※1 有機液肥とは、有機物を原料として、「水熱分解処理」(高温・高圧の密閉タンクの中へ投入し分解する処理技術)から得られる栄養成分を含む液体のことを指します
背景
ユーグレナからバイオ燃料の原料となる脂質を抽出する工程で、抽出後の残渣(以下、「ユーグレナ脂質抽出残渣」)が副産物として発生します(図1)。ユーグレナ脂質抽出残渣は、その利用方法の開発が資源の有効利用につながるだけでなく、副産物であるユーグレナ脂質抽出残渣が有価物として販売可能になればバイオ燃料の生産工程全体でのコスト低減に繋がると考えています。
今回、ユーグレナ脂質抽出残渣の有効利用を検討する中で、有機液肥に注目しました。これまで明治大学黒川農場では、牧草や野菜くずなどを原料とする有機液肥を用いて試験を実施していましたが、栽培する農作物によっては牧草や野菜くずなどに含まれる有機酸の影響により、生育障害が発生することが課題となっていました。ユーグレナ脂質抽出残渣は、脂質を抽出する過程で含有する有機酸が減少するため、これまで課題となっていた有機酸による農作物の生育障害の発生を抑制することを期待し、牧草や野菜くずの代わりにユーグレナ脂質抽出残渣を使用した有機液肥の可能性について実証実験を行いました。
図1 脂質抽出後のユーグレナ残渣
研究の内容と結果
ユーグレナ脂質抽出残渣を原料とした有機液肥(以下「ユーグレナ有機液肥」)を製造し、これを、イチゴの栽培において、従来の植物性原料から製造した有機液肥、および化学肥料の液肥と比較する研究を実施しました。その結果、ユーグレナ有機液肥は、農作物生育に及ぼす有機酸の被害がみられず、従来の植物性原料から製造した液肥と比較し、農作物の生育に対して有望であることが示唆されました。また、化学液肥と比較しても、収量、品質に差がないことも確認されました(図2、図3)。
図2 1株当たりのイチゴ収穫量
図3 実験でのイチゴ果実糖度の推移
今後の展開
ユーグレナ社では、これまで、バイオマスの5F※2の基本戦略に基づき、ユーグレナなどの微細藻類を活用して、食品や化粧品をはじめとするヘルスケア事業やバイオ燃料の開発・製造などを含むエネルギー・環境事業に取り組んできました。今回のユーグレナ有機液肥は、バイオマスの5Fの内、Fertilizer(肥料)にあたり、新たな用途でのユーグレナの活用が期待できます。現在、肥料の可能性について、資本業務提携先である小橋工業株式会社等の複数のパートナーと共同で開発に取り組んでおり、今後も微細藻類やバイオテクノロジーを活用した事業を通して、サステナブルな社会の実現を目指してまいります。
※2 バイオマスの5Fとは、バイオマスには、重量単価が高い順にFood(食料)、Fiber(繊維)、Feed(飼料)、Fertilizer(肥料)、Fuel(燃料)の5つの用途があり、重量単価の高いものから低いものに順次事業を展開することで、バイオマスの生産コスト低減と利用可能性の拡大を推進する、という事業戦略(図4)
図4 バイオマスの5F概略図
株式会社ユーグレナについて
2005年に世界で初めて石垣島で微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)食用屋外大量培養技術の確立に成功。石垣島で生産した微細藻類ユーグレナ・クロレラなどを活用した機能性食品、化粧品等の開発・販売を行うほか、バイオ燃料の生産に向けた研究を行っています。2012年12月東証マザーズに上場。2014年12月に東証一部市場変更。経営理念は「人と地球を健康にする」。https://euglena.jp