植物肉ベンチャー・DAIZが18.5億円の資金調達発表。大豆由来「ミラクルミート」の生産体制を拡大

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記事の要点

・発芽大豆由来の植物肉「ミラクルミート」を開発・製造するDAIZが、シリーズBラウンドにおいて、事業会社7社との資本業務提携と、金融投資家9社を引受先とする第三者割当増資により、総額18.5億円の資金調達を実施。

 

・今回調達した資金は、ミラクルミートの生産体制の拡大とR&Dの強化、グローバルでの事業展開、人材採用などに充てられる予定。特に生産体制の拡大としては工場の増床を行い、2021年6月からは年間4,000トンの生産キャパシティとなる。

 

・資本業務提携先との協業も進行しており、第一弾として大手食品メーカーの味の素、ニチレイフーズとはミラクルミートを原料とした家庭用・業務用商品の共同開発が進んでおり、また丸紅、日鉄物産、兼松・兼松食品とは、商社のネットワークを通じてミラクルミートの国内外への販路拡大を推進していく。

LoveTechポイント

欧米では十年以上前から認知が広がっている植物肉(代替肉)ですが、日本ではまだまだ注目を浴びていない領域だからこそ、今回の資金調達は認知向上の大きなきっかけになると感じています。

同社の独自技術・落合式ハイプレッシャー法による旨味アップが、どこまで人々の心を掴めるか。引き続き注視したいと思います。

編集部コメント

発芽大豆由来の植物肉「ミラクルミート」を開発・製造するDAIZが、シリーズBラウンドにおいて、事業会社7社との資本業務提携と、金融投資家9社を引受先とする第三者割当増資により、総額18.5億円の資金調達を実施した。これで累計調達額は合計30.5億円隣、植物肉スタートアップとしては国内最大の資金調達となる。

 

植物肉とは、植物を原材料とした代替肉のこと。日本では「べジミート」などの名称で、スーパーの食料品コーナーや飲食店メニューで見られることも増えてきた印象だ。最近では池袋にPBM(Plant Based Meat)を使用したハンバーガーショップ「The Vegetarian Butcher」もオープンしている。

 

なぜ植物肉が注目されているかというと、まず一つに、世界的な人口増加と新興国の経済成長により、2030年にはタンパク質の需要に供給が追い付かなくなる「タンパク質危機」が起こるとされており、それにより食肉価格が高騰することが予想されているからだ。タンパク質危機については、以下の記事も参照いただきたい。

 

また、肉を生産~輸送~消費する過程で、膨大な量の土地や飼料、水などの自然資源の消費と、その過程で放出される温室効果ガスも大きな社会問題となっており、さらに動物愛護の観点、最近のコロナ禍での健康維持の観点からも、「食肉」という行動習慣そのものが問題視されることが多くなっていることも挙げられるだろう。

 

このように注目度がましている植物肉だが、味と食感に残る違和感や、大豆特有の青臭さや油臭さ、そして肉に見劣りする機能性(栄養価)といった課題があり、本格的な普及の妨げとなっていた。

 

そこで、これらの課題を解決すべく立ち上がったのがDAIZ株式会社。同社取締役の落合孝次氏が開発した、味や機能性を自在にコントロールするコア技術「落合式ハイプレッシャー法(※)を世に出すために設立された会社である。

※大豆の発芽中に酸素・二酸化炭素・温度・水分などの生育条件を制御し、酵素を活性化させることで遊離アミノ酸量が増加し、素材の旨味を引き出す栽培法。(特許第5722518号)

 

その挑戦の第一歩として、同社の「ミラクルミート」が開発された。

画像データ:DAIZ株式会社Webページより

 

 

ミラクルミートの特徴は、まず、原料に丸大豆を使用しているという点。

 

これまでの植物肉は、大豆搾油後の残渣物である「脱脂加工大豆」を主原料としていたが、ミラクルミートでは原料に丸大豆を使用し、さらに、オレイン酸リッチ大豆を使用することで、大豆特有の臭みを無くし、異風味を低減している。

 

 

また、落合式ハイプレッシャー法で大豆を発芽させることで、肉に劣っていた旨味や栄養価も大幅アップすることに成功。後者については、お肉のタンパク質16%に対し、落合式発芽大豆は18%だという。

 

さらにその発芽大豆をエクストルーダー(押出成形機)(※)にかけて、膨化成形技術(特許出願中)により、肉さながらの弾力と食感を再現しているという。

※食品加工時に使用される機械。材料に水を加えながら、高温下でスクリューで圧力をかけ押し出すことにより混練・加工・成形・膨化・殺菌等を行う装置。

DAIZの植物肉「ミラクルミート」の製造工程

 

 

DAIZはこのミラクルミート事業を、2019年12月より本格的に展開しており、特にこの1年余りで採用が大きく進んでいる。

 

例えば外食チェーンのフレッシュネスバーガーでは、「THE GOOD BURGER」シリーズとしてミラクルミートを使用したメニューを販売している。また、イオンやライフ等のスーパーマーケットでの「発芽豆からつくったおにく」シリーズや、ニチレイフーズブランドの冷凍食品「大豆ミートのハンバーグ」にも採用されている。

 

一般家庭で、牛肉・豚肉・鶏肉と同じように植物肉が食卓に並ぶのも、さほど遠くない未来のことになるだろう。

 

今回調達した資金は、「ミラクルミート」の生産体制の拡大とR&Dの強化、グローバルでの事業展開、人材採用などに充てられる予定だ。特に生産体制の拡大としては工場の増床を行い、2021年6月からは年間4,000トンの生産キャパシティとなる予定だという。

 

また、資本業務提携先との協業も進行。第一弾として大手食品メーカーの味の素、ニチレイフーズとは、ミラクルミートを原料とした家庭用・業務用商品の共同開発が進んでおり、また丸紅、日鉄物産、兼松・兼松食品とは、商社のネットワークを通じてミラクルミートの国内外への販路拡大を推進していく。

 

さらに、SDGs貢献を目的としたENEOSホールディングスとの資本業務提携では、CO2排出削減に資する事業の創出を目指す同社とミラクルミートの普及を通じて、低炭素社会の実現を目指していくとのことだ。

 

▽資本業務提携先(7社)

  • 味の素株式会社
  • 丸紅株式会社
  • 日鉄物産株式会社
  • 兼松株式会社・兼松食品株式会社
  • ENEOSイノベーションパートナーズ合同会社
  • 株式会社きちりホールディングス

 

▽金融投資家(9社)

  • MSIVC2020V投資事業有限責任組合(三井住友海上キャピタル株式会社)
  • 農林中央金庫
  • グローバル・ブレイン7号投資事業有限責任組合(グローバル・ブレイン株式会社)
  • 食の未来1号投資事業有限責任組合(kemuri ventures合同会社)
  • 三菱UFJキャピタル7号投資事業有限責任組合(三菱UFJキャピタル株式会社)※追加投資
  • Golden Asia Fund Ⅱ, L.P.(Golden Asia Fund Ventures Ltd.)
  • QB第一号投資事業有限責任組合(QBキャピタル合同会社)※追加投資
  • 投資事業有限責任組合しんきんの翼(信金キャピタル株式会社)
  • KIRIN HEALTH INNOVATION FUND(グローバル・ブレイン株式会社)

 

環境や健康に良いとはわかっていても、味や食感、また栄養面で肉より劣ることから、植物肉を取り入れていない人はまだ多いだろう。

 

試しにミラクルミートを食してみると、印象が大きく変わるかもしれない。

 

LoveTechMedia編集部

「”愛”に寄りテクノロジー」という切り口で、社会課題を中心に、人々をエンパワメントするようなサービスやプロダクトを発信しています。

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