記事の要点
・三菱重工業と日本IBMが、CO₂を有価物として活用する新社会への転換を目指すデジタルプラットフォーム「CO₂NNEX™」(コネックス)の構築に向けて、連携することを発表。
・CO₂NNEX™は、サイバー空間上におけるCCUSバリューチェーンの可視化し、選択肢が限られているCO₂の流通を、可視化・整流化することで、用途の選択肢を広げるような仕組みになっている。
・三菱重工はフィジカル世界におけるインフラ構築、日本IBMはサイバー世界のデジタルネットワーク構築を担い、2021年5月からは、デジタルプラットフォームの実証実験に向けたPoCを行う予定。
LoveTechポイント
今回発表された「CO₂NNEX™」は、CCUSバリューチェーンの可視化することで、取引サイクルが活性化し、世界規模でのカーボンニュートラルの早期実現に貢献することが期待されます。
大手2社のリソースをふんだんに使えるからこそ、CO₂活用の選択肢拡張に大きく貢献すると感じます。
編集部コメント
三菱重工業株式会社 と日本アイ・ビー・エム株式会社が、CO₂を有価物として活用する新社会への転換を目指すデジタルプラットフォーム「CO₂NNEX™」(コネックス)の構築に向けて、連携することを発表した。
日本を含む世界各国で、2050年までに、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量から、森林などによる吸収量を差し引いてゼロを達成する「カーボンニュートラル(脱炭素社会)」の実現が宣言されているなか、CO₂を回収して貯留や転換利用する「CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)」への期待が高まっている。
日本の主な電力供給源である火力発電は、天候に左右されず、すぐに発電できる利点がある一方で、CO₂の排出が多いという課題がある。この火力発電のCO2排出量を抑えるため、行われている取り組みの一つが、このCCUSである。
CCUSの前段階として、発電所や化学工場などから排出されたCO₂を、ほかの気体から分離して集め、地中深くに貯留・圧入する「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)」があり、この分離・貯留したCO₂を利用しようという仕組みがCCUSとなる。
現状、回収されたCO₂の行き先は、廃棄コストを払って貯留されるか、または価値資源として取引されるかの2択となっている。だが、将来的にCO₂の資源化需要を高めるには、バリューチェーンにおける現状の課題を顕在化させ、回収・輸送・貯留・分配・転換利用といった業務の流れ全体を最適化するための仕組みをつくることが重要だと言える。
このような背景から構築が進んでいるのが「CO₂NNEX™」だ。
これは、サイバー空間上におけるCCUSバリューチェーンの可視化し、選択肢が限られているCO₂の流通を、可視化・整流化することで、用途の選択肢を広げるような仕組みになっている。
実社会となるフィジカル空間でのCO₂の流通は、回収後の総量や移送量、購買量、貯留量などといった別々のフェーズでしか見られていなかったが、CO₂NNEX™では、CO₂の流通全体をつないで可視化してその証跡を残すので、投資やコストに関する検証と改善のフィードバックループが可能となっている。
また、販売したいエミッターと購入したい需要家をマッチングさせ、工業や農業、燃料などの新用途に対する供給も実現できるので、CO₂活用の裾野も広がることになる。
今回の連携において、三菱重工は、CO₂排出や回収、圧縮、輸送、貯留、分配、利用などといった流通の要所に、CO₂の物理量や状態を監視しデータを有効利用するスマートメーターを設置するなどといった、フィジカル空間におけるインフラ構築の検証を行う。
一方で日本IBMは、安全で信頼性の高いデータ共有を可能にする「IBM Blockchain Platform」やハイブリッドクラウド技術、AI技術などを活用して、サイバー空間におけるCO₂NNEX™の構築を検討して進めていく。
2021年5月からは、デジタルプラットフォームの実証実験に向けたPoCを行い、具体的に検討を進めていく予定とのことだ。
取引サイクルを活性化させ、カーボンニュートラルの早期実現に貢献することが期待されるデジタルプラットフォームとして、PoC含めた今後の動向を注視したい。