記事の要点
・洋食器メーカーのニッコーが、飲食店のサステナビリティを支援するウェブマガジン「table source(テーブルソース)」をローンチし、同時に、食器のサーキュラー・エコノミーを推進する研究開発プロジェクト「NIKKO Circular Lab」をスタート。
・「NIKKO Circular Lab」は、循環型の食器づくりへの転換を通じて、飲食店やホテル、ユーザーとともに地球全体のサステナビリティを高めていくことを目指す組織横断型の研究開発プロジェクト。
・具体的な取り組みとして、普遍性のあるデザインと耐久性、機能性を兼ね備えた食器の製造や、サステナブルな梱包での配送、使用後の食器を回収した上でのリユースや修理、リファービッシュ、アップサイクルなどが挙げられる。
LoveTechポイント
サーキュラー・エコノミーの実践は、当然ながら一社で完結するものではありません。
だからこそ、「NIKKO Circular Lab」や「table source」のようなメディア連動型プロジェクトによるステークホルダーの巻き込み設計が、一つの重要なポイントであると感じます。
編集部コメント
石川県の老舗洋食器メーカー・ニッコー株式会社が、食器のサーキュラー・エコノミーを推進する研究開発プロジェクト「NIKKO Circular Lab(ニッコー ・サーキュラー・ラボ)」を開始した。
ニッコー といえば、1908年に国産の硬質陶器製造を掲げて創業された企業。原料加工から最終工程に至るまでの食器の製造を、石川県の自社工場にて一貫して行なっており、百余年間紡がれてきた匠の技によるテーブルウェアは、一流のホテルやレストラン、有名百貨店などで採用されている。
一般的に食器というものは、大量に資源を採掘した上で量産されていき、割れたり欠けたりしたらすぐに廃棄されるという、直線型のリニア・エコノミー(Linear economy)で成り立っている。
だが近年においては、美しい食器づくりに欠かせない上質な石や粘土などの天然資源が、過剰採掘や宅地造成などによって年々枯渇傾向にあり、一部の原材料ではすでに調達価格の高騰が始まっているという。
また、気候危機や土壌汚染、プラスチックによる海洋汚染など様々な環境破壊が原因で、食器に盛り付けるべき食の未来も、持続的でない状況となっている。
このような背景から、次の100年も食器づくりを続け、豊かな食とそれを楽しむ時間を守り続けていくという目標を達成すべく、同社は「NIKKO Circular Lab」をスタートさせたというわけだ。
このプロジェクトでは、 先述したような直線型のリニア・エコノミーからの脱却と、食器の耐久性向上や回収、再資源化などといった循環型のサーキュラー・エコノミーへの転換目標が掲げられている。
サーキュラー・エコノミーについては、以下の記事もご参照いただきたい。
[clink url=”https://lovetech-media.com/eventreport/20201116circulareconomy1/”]
具体的には、原材料調達や製造、デザイン、物流、販売といった、それぞれのバリューチェーンにおいて、サステナブルな仕組みとなるサーキュラー・エコノミーの原則に沿った取り組みが実施されているというのだ。
例えば原材料調達シーンでは、同社は「カドミウムフリーの高彩度顔料」の開発に着手している。
食器に鮮やかなオレンジ色や赤色の絵柄をつける場合、発色を良くするためにカドミウムやセレンが含まれる顔料を用いるのが一般的だ。だが、これらの成分が人体に入った場合、様々な健康被害が及ぶことがわかっている。だからこそニッコー では、誰もが安心して使える安全性と鮮やかな発色を兼ね備えた顔料として、カドミウムフリーの高彩度顔料を開発しているのだ。
また取皿の販売シーンにおいても、モノとしての食器の単発的な販売ではなく、食器という“機能”の継続的な販売、つまりはPaaS(Product as a Service)モデルのサブスクサービスを展開するとしている。つまり、ユーザーの利用終了後に回収することで、食器のリユース・リファービッシュ・リサイクルを行うというわけだ。
これらの情報は、「NIKKO Circular Lab」の発表と同日にリリースされたWebメディア「table source」内にて掲載されている。
ニッコーでは、英国に本部があるSRA(Sustainable Restaurant Association)の日本支部「「日本サステイナブル・レストラン協会」にも同時期に加盟しており、食のサステナビリティを推進するために世界の飲食店等が使用している標準セルフアセスメントツール「Food Made Good 50」の活用支援や、イベントの開催等も連携して進めていくとのこと。直近では、2021年5月19日(水)に、SRAとハーチ共催のイベント「コロナの先にあるレストランの未来~飲食業界のサーキュラーエコノミーを考える~」に登壇予定だ。
サーキュラー・エコノミーの実践は、当然ながら一社で完結するものではない。だからこそ、「NIKKO Circular Lab」や「table source」のようなメディア連動型プロジェクトによるステークホルダーの巻き込み設計が、一つの重要なポイントであると感じる。
食領域で持続的な経営を目指す事業者は、食器という観点で、まずは同サイトを覗いてみてはいかがだろう。