記事の要点
・地理空間情報アプリプラットフォームサービス「mapry」を提供するマプリィが、島根大学 生物資源科学部 農林生産学科 森林資源管理研究室と、携帯端末およびドローンを用いた森林計測方法の開発と検証に関する共同研究を開始。
・mapryは、森林などの膨大な測量データ等を誰でも簡単に活用できるアプリプラットフォーム。三次元情報などのあらゆる空間情報を手軽に取得し、シームレスに解析・活用することが可能。
・本取り組みでは、より価値のある新規のアプリケーションや周辺機器の開発を目的に、スマートフォンやタブレットを用いた森林計測方法の精度検証と写真測量やドローンと組み合わせた森林計測手法の開発を目指す。
編集部コメント
地理空間情報アプリプラットフォームサービス「mapry」を提供する株式会社マプリィが、島根大学 生物資源科学部 農林生産学科 森林資源管理研究室と、携帯端末およびドローンを用いた森林計測方法の開発と検証に関する共同研究を開始した。
mapryとは、膨大な測量データ等を誰でも簡単に活用できるアプリプラットフォームとして、三次元情報などのあらゆる空間情報を手軽に取得し、シームレスに解析・活用することができるサービスだ。
具体的には、スマホやタブレットのみで画像およびLiDAR計測(光を用いたリモートセンシング技術)ができるので、高価な機器やソフトがなくても、誰でも手軽に3D情報の取得から解析・表示をすることができるというのだ。
その活用フィールドは、防災、農業、林業など多岐にわたる。
例えば林業では、様々な森林調査に活用できるだろう。区画の全ての樹木について樹種名や樹高、幹周などの各種データを測定する作業として「毎木(まいぼく)調査」というものがあるのだが、これまでは人手もしくは高価な機器で計測しており、PCにデータを移して処理をしていた。これをmapry利用によって、スマホやタブレットのみで安価にLiDARで自動計測し、精度の高い胸高直径・材積を算出することが可能というわけだ。
また、同時に植生や地形なども取得できるため、様々な目的の森林調査を効率化を実現し、GIS(地理情報システム)に集約して解析・共有・活用をワンストップで行うことができるという。
日本は国土の約7割を森林が占める世界でも有数の森林大国だが、費用や人手不足のため適切な管理がなされずに放置されている区域も少なくない。その結果、近年では土砂災害が多発しており、地域への重大な損害等にもつながっている状況だ。mapryのような「林業DX」を促進するソリューションは、サステナブルな資源活用に向けて非常に重要なミッションを担っていると言えるだろう。
もちろん植生のような作業だけでなく、例えば航空測量やドローン測量データ、スマホやタブレットで取得したデータ等を集約し解析することで、土砂災害等のリスクを可視化することも可能だし、リアルタイム3Dシミュレーション機能を利用することで、防災施業等における意思決定としてや関係者間での合意形成にも活用ができる。
さらに農業分野では、スマホやタブレットを活用したロボット開発により、リモートセンシングやソフトウェア処理をアプリ内で行うことで、安価でユーザーの使いやすいロボット開発にも貢献できるという。
今回協働する島根大学 生物資源科学部農林生産学科は、農産物及び林産物に関する持続可能な生産技術と経営・経済について教育と研究を行う学科。その中でも、森林資源管理研究室の米准教授らの研究グループでは、航空機・ドローン画像や地上計測から森林情報を抽出する技術の研究、GISを用いた広域森林情報解析と森林管理手法の研究を行っている。
スマート林業に不可欠なプログラミング技術などを培ってきたマプリィと、空中リモートセンシングなど森林資源量解析に関して豊富な研究実績を有する島根大学との協働によって、より価値のある新規アプリケーションや周辺機器の開発を進めていく予定とのことだ。
私たちの生活を支える重要な自然資本の最大化と、持続可能な地域経済の発展を両軸で実現するには、ここまで記載したような地理空間情報の取得や活用の民主化が不可欠だろう。デジタルツインやメタバースへと生活ドメインがシフトするDX時代においてはなおのことだ。
本取り組みが、誰もが容易に地理空間情報を活用できる社会の実現と、特色を生かした地域づくりの第一歩となることを期待したい。