記事の要点
・3Hグループである3Hクリニカルトライアル株式会社と国立成育医療研究センターが、遺伝子治療を受けた患者の「長期フォローアップの支援」を目的としたシステムの研究開発を開始すると発表。
・3Hクリニカルトライアルが開発したePRO(電子患者日誌)システム「3H P-Guardian」の基盤を利用することで、患者や家族が日々の生活活動を適時・的確に記録することができ、また、主治医など医療機関からの関連情報を速やかに入手できるモバイルベースのシステムを想定。
・これにより、遺伝子治療を受けた患者とその家族が、主治医等の医療関係者と密接な連携の下、最低でも成人期までの長期に渡るフォローアップが期待できる。
LoveTechポイント
遺伝子治療を受けた患者のフォローアップ手段がアナログなことにより、日々の生活におけるコミュニケーションコストが非常に大きくなる点が、治療における一つの難点であると言えるでしょう。
今回のシステム開発により、患者や家族の「生活のしやすさ」が改善されるという点で、LoveTechな取り組みだと感じます。
編集部コメント
3Hグループである3Hクリニカルトライアル株式会社と国立成育医療研究センターが、遺伝子治療を受けた患者の「長期フォローアップの支援」を目的としたシステムの研究開発を開始すると発表した。
遺伝子治療とは、ある遺伝子が欠損している患者の体内に「正常な遺伝子」を入れ、その遺伝子が作り出すたんぱく質の生理作用を活かして病気を治療する方法。世界で最初の遺伝子治療が、1990年に米国にて「ADA欠損症」の患者を対象に実施されたことを皮切りに、現在では世界で数千レベルの臨床試験が行われている。
背景にあるのは、「遺伝子解析技術」の発達。がんをはじめ、これまで様々な疾患に関連する遺伝子が多く発見されていることから、もともとは遺伝性疾患に限ってスタートしたものが、次第にがんなどの難治性疾患に対しても開発が進んでいくこととなった。また、遺伝子を患部に届けるための「ベクター技術」の進歩も、要因の一つと言えるだろう。
日本においてもすでに複数製品が承認され、投与が開始。2020年9月2日に初会合が催された政府の「再生・細胞医療・遺伝子治療開発協議会」では、2024年末までのKPIとして、非臨床POCの取得件数 25件を、そのうち遺伝子治療 5件の達成が掲げられた。
上市品の動向:グローバルにおける上市済み再生医療等製品(アーサー・ディ・リトル作成「国内外の開発動向分析・市場規模予測海外政府の投資動向について」p5)
しかし、遺伝子治療はその性質上、治療を受けた患者に対する治療の「安全性」や「有効性」評価のために、定期的な診察を主体とする長期フォローアップが必要となる。特に小児期に治療を受けた患者は成長の変化が大きく、正確な日々の生活行動の記録を長期間続ける必要がある。
そこで本研究開発では、3Hクリニカルトライアルが開発したePRO(電子患者日誌)システム「3H P-Guardian」の基盤を利用することで、患者や家族が日々の生活活動を適時・的確に記録することができ、また、主治医など医療機関からの関連情報を速やかに入手できるモバイルベースのシステム開発を目指すという。
これにより、遺伝子治療を受けた患者とその家族が、主治医等の医療関係者と密接な連携の下、最低でも成人期までの長期に渡るフォローアップが期待できるわけだ。
遺伝子細胞治療は、特に小児領域での充実が求められており、国立成育医療研究センターでは2019年4月8日に「遺伝子細胞治療推進センター」(Gene & Cell Therapy Promotion Center)を設立。遺伝子細胞治療の実施や研究開発に加え、製薬会社や医療機関などからのコンサルテーションも受け付けている。
新たな治療法の選択肢の一つとして、民主化していくであろう遺伝子治療だからこそ、フォローアップ体制の充実化に向けた本研究開発の成果に期待したいところだ。
以下、リリース内容となります。