記事の要点
・植物肉の研究開発をすすめるグリーンカルチャーが、植物性ゆで卵「植物卵(しょくぶつたまご)」プロトタイプの開発に成功。
・味・質感の他、ビジュアルとしても卵らしさの追求が必要となる「ゆで卵」という、難易度の高い形状での開発に挑戦。
・今後はそのままサラダやお弁当に入れることや、潰して料理に使うなど、様々な調理方法に適応できるよう更なる物性改良を進め、プロトタイプから量産化を目指す。
編集部コメント
近年、健康志向の高まりや地球環境への配慮の視点、動物性倫理の視点から「プラントベース食品」への関心、需要が高まっている。
プラントベース食品とは、Plant Based Association(プラントベースアソシエーション)によると、以下のように定義されている食品のこと。
野菜、果物、全粒穀物、ナッツ、種子、および/または豆類(エンドウ豆、豆類、豆類など)を含む植物由来の成分からなる完成品
たとえば当メディアでも先日取り上げたDAIZなんかは、大豆を原料とするプラントベース食品の一つである。
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現在、国内外で多くの企業がこのプラントベース食品の商品開発を進めているが、その市場最前線として注目が集まっているのが「植物性卵」だという。
実は日本は卵の消費大国で、2017年に行われた世界154カ国を対象に人口一人あたりの卵の消費量を調べた調査によると、日本は中国に続き世界2位とあり、その市場規模の大きさから今注目の市場となっているのだ。
ただし、卵は食肉同様に環境負荷が大きく、温室効果ガス排出量は1kgあたり4.67kg、土地の使用量は1kgあたり6.27㎡、水の消費量は1kgあたり578リットルにも及ぶ(Environmental impacts of food productionより)。また、畜産技術協会の「採卵鶏の飼養実態アンケート調査報告書」(平成27年3月)によると、調査に回答した養鶏場の鶏舎棟数のうち約92%がバタリーケージ飼育を行なっているという。
バタリーゲージとは、ワイヤーでできた金網の中に鶏を入れ、それを連ねて飼育する方式。工場化され効率のみが優先された飼育方法は、衛生面や動物福祉の側面から問題視されており、すでにEUではバタリーケージが禁止されており、アメリカの5つの州においても全てのケージ飼育を禁止している状況だ。
このように、環境負荷やアニマルフェアの観点から、植物性卵の開発が世界的にも求められている状況だ。
そんななか、植物肉の研究開発を事業としているグリーンカルチャー株式会社が、植物性ゆで卵「植物卵(しょくぶつたまご)」のプロトタイプ開発に成功した。
同社が開発・提供する植物肉「Green Meat」は、都内のレストランや食品宅配においても広く採用されており、2021年6月には植物性タンパク等を主原料とした魚肉「Green Meat™ Model F」を発表。植物肉開発に用いる物理化学特性を解析・再構築するコア技術を横断的に活用することで、様々な動物性食品を植物で再現する取り組みを開始している。
今回、新たに開発した植物卵は、味・質感はもちろん、ビジュアルとしても卵らしさの追求が必要となる「ゆで卵」の形状で、あえて難易度が高い開発に挑戦したという。
今後は、そのままサラダやお弁当に入れたり潰して料理に使うなど、様々な調理方法に適応できるように物性改良を進めていくとのことで、凡庸性の高いゆで卵形状だからこその広い普及が期待できそうである。
植物由来の卵の誕生は、環境への影響はもちろん、ヴィーガンの方やアレルギーを持つ方にとっても嬉しいニュースであるだろう。果たしてどんな味で、どんな食感なのか。編集部として、入手でき次第チェックしたいと思う。