LoveTech Media編集部コメント
ALS(筋萎縮性側索硬化症)。
運動を司る神経の変性によって筋肉への命令が伝わらなくなり、意識や五感・知能の働きは正常のまま、筋力の低下が引き起こされ、徐々にコミュニケーションが取れなくなっていく難病である。
発症してからの平均余命は3~5年と言われており、極めて進行が速く、治癒のための有効な治療法は現時点で確立されていない。
世界で35万人、日本には約1万人のALS患者が闘っている状況だ。
このALSという難病を認知している方の多くは、次のいずれかがきっかけだったのではないだろうか。
一つ目は、アイス・バケツ・チャレンジ。
ALS研究を支援するため、バケツに入った氷水を頭からかぶるか、またはアメリカALS協会(英語版)に寄付をする運動であり、2014年に米国でスタートしたその活動は、その後YoutubeやSNSを中心に社会現象化し、多くの国へと波及、ALSの認知向上に大きく貢献した。
そしてもう一つは、2018年11月26日に期間限定オープンしたロボット接客カフェ「DAWN ver.β」。
遠隔コミュニケーションロボット「OriHime-D」がカフェの従業員として働くという、近未来の働き方を提案したものであり、このロボットを操作していたのが、ALS患者や障がい者、引きこもりなどの人たちであった。
このOriHime-DをはじめとするOriHimeシリーズを開発する株式会社オリィ研究所が、新たに、音声合成プラットフォーム「コエステーション™」を提供する東芝デジタルソリューションズ株式会社とALS支援団体の一般社団法人WITH ALSとともに、「ALS SAVE VOICE PROJECT」を発足し、2019年7月31日よりサービスを提供を開始した。
ALS患者が、視線を使った意思伝達装置「OriHime eye」と、音声合成プラットフォーム「コエステーション™」を使用し、自分の声で発話し続けられるサービスを開発する共同プロジェクトだ。
ALSの最終的段階にはTLS(Totally Locked-in State:完全な閉じ込め状態)という状態があり、眼球運動やまばたきなど、全ての筋肉が完全に停止して、周囲との意思伝達を奪われてしまうことがある。
多くのALS患者が最も恐怖を抱いているのがこの状態であり、当然ながら声も出すことができなくなる。
オリィ研究所のヒアリングによると、ALSなどの神経難病の症状が進み発話が困難になった多くの当事者や家族は、「本人に似た声で話せないだろうか」「もう主人の声を忘れてしまった」「自分の声は自分の顔や身体の一部のようなもので、無くなる事はとても寂しい」といった声を寄せていたという。
本人の声を残す技術はこれまでに存在していたが、質の高い合成音声の生成には十数万円~数百万円ほどの費用が発生してしまうため、経済的負担が非常に大きいことが課題としてあった。
そのような背景から、”本人の声を簡単に残せて、かつ患者さんに大きな費用がかかる事なく、利用できるサービスを届ける方法”を目指す「ALS SAVE VOICE」プロジェクトが発足し、クラウドファンディングで資金を募り開発をすすめ、7月31日にサービスリリースを行う事が決まったということだ。
使い方は簡単な3ステップ。
まず、まだ話せるうちに、iPhoneの無料アプリ「コエステーション™」により自分の声の特徴を学習させ、声の分身「コエ」を作成する。
次に、意思伝達システム「OriHime eye」を導入する。病気が進行し、話す事、手も動かす事が困難になった時点で、購入補助制度が対象となる。
その上で、OriHime eyeの設定から「コエステーション TM 」と連携し、会話モードで発話したい文字を入力し、発声ボタンを押す。
この際に、読み上げ時の感情を設定することが可能となっている。
「ALS SAVE VOICE」プロジェクトでは、ゆくゆくは、ALSなどが進行した患者が自分のもうひとつの身体を操り、自分の元々の声で接客し、様々な職業で自分らしく生きていける、孤独にならない未来の実現を目指していくという。
私たちの多くは、自分の声で喋ることを「普通」のことと感じている。
しかし、失声した方々にとって、自分の声で話すということは非常に尊いことだという意識がある。
ALS患者の方々をはじめ、声を失ってしまった多くの方々、もしくはこれから声を失う可能性があることを認知できている方々の「声」を守るサービスとして、多くの方々に認知してもらいたいと願っている。
以下、リリース内容となります。