米インテルが進める「AI for Social Good」事業
米インテルが進めるAI for Social Good事業では、地球上における様々な社会課題に対し、AI技術を活用した解決の支援を進めている。主に「Earth(地球)」「Social Impact(社会的影響)」「Health(健康)」という3つのテーマを敷き、井戸発掘や農業開発支援、中国・万里の長城といった世界遺産の保全、人身保護、災害対策など、様々な領域でのAI支援を進めている。
以下、参考として3事例が紹介された。
Snotbot(クジラ調査用カスタムドローン)
今、人間の活動の直接的または間接的な結果として、毎年何万ものクジラが殺されたり、負傷したりしている。海洋生態系の健康は、クジラの健康と直接関係しており、このままクジラを失い続けると、海だけでなく地球全体にとっても良くない。
Snotbotsは、Ocean Alliance とOlin College of Engineeringの間のパートナーシップで作成されたカスタムドローン。
海面に浮上するクジラの上空に浮かび、その肺から吐き出された噴気(または鼻水)のサンプルを集め、ウイルスやバクテリアの量を調べたり、DNAを分析したり、クジラのシステムに吸収されている環境毒素を探すことで、個体のストレス状況や、そもそもの海の状況をチェックすることができるという。
TrailGuard AI(パークレンジャー向けモニタリングシステム)
今、世界では密猟者による自然動物への被害が絶えない。ゾウは15分毎に密猟者によって殺されているというデータもある。年間約35,000頭の割合で殺されていくことで、このままでは今後10年以内に象が絶滅するとも予測されている。サイ、ゴリラ、トラ、その他の大型哺乳類についても然りである。
TrailGuard AIは、アフリカの野生生物保護区に入る密猟者を検出し、危険な動物を殺害する前に密猟者を阻止するという、パークレンジャー向けのモニタリングシステムである。
カメラによってキャプチャされたモーションアクティブ化された画像の中から人間や乗り物が検出された場合、密猟者が活動する前に警備員を動員できるように、駐車要員に電子アラートを送信する仕組みとなっている。これには、画像処理にIntel®Movidius®視覚処理ユニット(VPU)を使用しており、カメラ内のオブジェクト検出と画像分類にディープニューラルネットワークアルゴリズムを実行しているという。
The Wheelie(顔の表情を読み取って動く車椅子)
米国には約288,000人が脊髄損傷を抱えているという推定データがあり、毎年約17,700人の新しい患者が発生している状況だという(米国立脊髄損傷統計センターより)。また2018年の研究より、”移動”が脊髄損傷者の生活の質に最も大きな影響を与えることがわかっており、可動性は一つのポイントであることがわかる。
The Wheelieとは、表情で操作できるAIシステムを搭載した車椅子である。例えば、車椅子を前進させるためにはキスの表情をする。ユーザーがキスの表情をしてはじめて車椅子が動き出す。また、これに喜びを感じて笑顔を浮かべると、今度は笑顔が停止のサインでもあるので、車椅子は止まる。
顔または首より下を動かすことができない人たちに向けて開発されたもので、鼻または額にしわを寄せる、キス、ウィンク、眉を上げるなど、最大で10種類の表情を認識することができる。これは、Intel RealSense 3D カメラを使うことで可能になったものだ。
パートナーシップを通じたエコシステム
このように、個人やグループ・団体・企業を問わず、様々な人やプロジェクトがこのAI for Social Good事業に参画してインパクトを出している。
米インテルが持つ様々な技術と、各団体が取り組む社会事業を組み合わせることで、世界に最も良い影響を与えるAI活用を促進することに尽力しているとのことだ。
次ページ:ビル&メリンダ・ゲイツ財団の活動紹介