2年間で97家庭466件のシッティングを経験
「ココハグ※前身のこどもの居場所」時代の写真
--草加さんがこの事業を始められた経緯を教えてください。
草加氏:もともと私は子どもが大好きで、東京家政大学家政学部の学生として児童福祉の勉強をしています。今はここはぐのサービス立ち上げのために休学中なのですが、来年から復学予定です。
--草加さん、学生起業なんですね!
草加氏:そうなんです。
そもそものきっかけとして、私自身が中高生の時に、親子関係で悩みを抱えることがありました。虐待ではないのですが、自分から誰かに相談することがなかなかできない、気持ちを表面化できない、というモヤモヤとしたな思いをずっと抱いて生きていました。
高校生のある時に「社会起業家」の存在を知って、世の中とこんな関わり方ができて社会を変えることができるんだ!って感動しました。
その後、色々なNPO団体を調べたりしながら自分の今後のミッションをじっくりと考え、「日本の全ての子どもたちが、健やかに幸せにはぐくまれる社会を実現したい!」と志すようになり、保育の東大と呼ばれる東京家政大学に入学して、児童福祉を学びながら様々な現場に飛び込むことにしたんです。
--どのような現場に飛び込まれたのですか?
草加氏:保育園、学童保育所、児童養護施設、自立支援ホーム、地域の小学生向けワークショップ、そしてベビーシッターと、5年間、本当に色々な経験をさせてもらいました。
--すごい数ですね!
草加氏:最後に飛び込んだのがベビーシッターの現場で、大学3年生〜4年生の約2年間で合計97家庭、466件のシッティングを経験しました。
そこでの体験が、「ここはぐnow」の原体験となります。
1/3以上のご家庭が「リスク家庭」
--シッティング経験を通じて感じたことを教えてください。
草加氏:最初にびっくりしたのですが、一部の家庭の家の中が壮絶な状況なんです。
部屋は散らかり放題でゴミがそのままになっている。食事はレトルトが中心でちゃんと調理する時間も気力もない。昼夜問わず泣き続ける子どもに怒り続けるママ。静かにするためにYoutubeをずっと見させられる子ども達。
私が依頼を受けたシッティング先は高層マンションが多かったのですが、その外見からは想像もできない、隠れた家庭の姿を見ることになりました。
--それはすごい状況ですね。
草加氏:私がシッティングを担当したご家庭のなんと42%が、このような状況でした。1/3以上のご家庭で、いつ子どもが虐待の犠牲になるかもしれないわからない「リスク家庭」だったんです。
また私自身ベビーシッターをしている時にはっと気付かされた瞬間がありました。自分の体調が悪くなった時に「体調悪いから交代してください」なんて言えないということです。シッターを代わってくれる人は誰もいないので。
代わりを頼めない環境の中、思い通りにならない状況がずっと続くことの辛さを、この時に初めて実体験として思い知りましたね。
--外から見ているとなかなかわからないのですが、ママさん達はどのような状況なのでしょうか?
草加氏:本当に色々です。子どもが生まれてからはなかなか自分の時間を確保できない。子どもは何時間も泣きわめく。片付けても片付けても部屋を汚される。旦那さんの手伝いを期待できず、ワンオペ育児を余儀なくされている。ご飯を作っても、食べないでぐちゃぐちゃにされる。
聞けば聞くほど、そりゃそうなるよね……と感じました。
--そういったお話って、家庭の中でも見せたくない部分だと思うのですが、ママさん達はよく草加さんに話してくれましたね。
草加氏:私が学生だったことが大きいと思います。これがちゃんとした保育士さんやベテラン育児経験者さんですと、誇れる育児をしていない自分を晒すのは恥ずかしいし怒られるしで、そもそもベビーシッターを頼むことさえできなかったと思います。
あと、私自身がベビーシッターのプロフィールで「24時間365日対応可能」と明記していたことも、選ばれやすい要因だったと感じます。現に、最短45分で現場に行くようにしていました。
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