合計6時間の研修プログラム受講を義務化しています
--貴社が契約されているシッターさんはどのような方なのでしょうか?
草加氏:全員学生です。私と同じ東京家政大学や専門学校に通っている方々ですね。
--全員学生さんなんですね!それはなぜなのでしょうか?
草加氏:2つ理由があります。一つは私の実体験として、学生の方が保育士さんなどのプロの方よりも、困っているママさんたちが心を開いて相談してくれやすいと感じたからで、実際にママさんからも学生さんの方が家にあげやすい、呼びやすいという声を頂いたからです。これは先ほども(前編で)お伝えした通りです。
もう一つは、家庭での保育を経験できる場を、学生のみなさんにどんどん提供したいと考えているからです。
--ママさんと学生さんの両方にとってメリットのある仕組みですね! 何か教育体系などあるのでしょうか?
草加氏:通常のベビーシッターマッチングサービスではきちんとした研修がないところが実は多いのですが、弊社では現場の保育士さんと作った研修プログラムを用意しています。
座学研修3時間と、現場実習3時間です。
この合計6時間のプログラムを受講しないと、弊社では基本的にシッティング業務に従事できないことにしています。
--6時間はそれなりに長い研修ですね。最初の段階でのフォロー以外にも、何かございますか?
草加氏:研修を修了した人でも、まだ現場経験が少なく不安があるメンバーは多いので、「お姉さん制度」というものを導入しています。
まだシッターに慣れていないメンバーは、先輩のシッターについて行って、一緒にシッティングに行って現場に慣れる、という仕組みです。
現場に慣れてきたところで、今度は自分たちが新人シッターのメンバーの「お姉さん」になってあげるという、フォローの循環を作るようにしています。
ママさん達に継続した支援ができるよう日々試行錯誤です
--草加さんにとって、現在のベビーシッター業界の課題は何ですか?
草加氏:一つは教育の不徹底と考えています。これは先ほどお伝えした通りです。
もう一つはそもそもの構造的な課題なのですが、弊社のようなマッチング型ベビーシッター事業では、継続したサポートが法的に難しいことがあります。
--どういうことでしょうか?
草加氏:シッティング事業は大きく2つ、民間により行われている「一般型家庭訪問保育」と、子ども・子育て支援法に基づいて主に自治体や行政により行われている「制度上の家庭訪問保育」に分かれます。
弊社のような民間企業は前者に分類されるのですが、その中でも従来の「派遣型」ベビーシッターサービスに比べ、現在は多くの民間サービスが「マッチング型」と言われる、ユーザーが直接シッターさんを選ぶことができるCtoCモデルになっています。派遣型に比べ、依頼から到着までの時間が短かったり、手続きが簡素であること、安価なので気軽に頼めることがメリットです。
しかしこのマッチング型ベビーシッターサービスの場合、サービス提供者である会社、ユーザー、実際にマッチングして家庭訪問するシッターさんとでは、情報を共有してはいけない、と法律で決まっています。つまり、どんなに虐待が迫っているリスク家庭を訪問したとしても、そこでの留意事項やフォロー内容を、会社として蓄積することができないんです。
これだと、せっかく虐待の芽を見つけたとしても、会社として継続的な支援をすることが困難になります。
--それでは、派遣型が良いということですか?
草加氏:派遣型ですと、そもそも手続きが煩雑であったり長い場合は依頼から1ヶ月も先の派遣になってしまうこともあり、差し迫ったママさん達に寄り添うことができません。
--なるほど。一長一短ということですね。
草加氏:難しい問題です。弊社としても、できるだけママさん達に継続した支援をできるよう、試行錯誤しているところです。
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