ちがいを ちからに 変える街。渋谷区
現在の渋谷区の基本構想は「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」。これからの20年間の渋谷区のビジョンとして、ダイバーシティー(多様性)とインクルージョン(包摂、包含)を最重要事項として考えていこう、という思いを表すべく、「ちがい」という言葉をあえて入れているとのこと。
この「ちがいをちからに変える」取り組みの一つが、LGBTに関する取り組みだ。渋谷区のパートナーシップ制度は、制定されて丸3年が経過する。
制定当時は「パートナーシップ条例」と世間では呼ばれることもあったようだが、これは正確ではない。正しくは「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」という男女共同参画の条例があり、そこで「男女の人権の尊重」と「性的少数者の人権の尊重」の両方を掲げているので、パートナーシップ制度も含まれている、ということだ。
ちなみに現在、日本でパートナーシップ制度を持つ自治体は全部で9つ。
そして、渋谷区とその他の自治体とでは大きく以下の3点が異なる。
・渋谷区は条例として制定されており、その他は要綱
・渋谷区は申請に公正証書が必要で、その他は不要
・渋谷区は「パートナーシップ証明書」を発行するが、その他は「受領証明書」を発行する
パートナーシップ証明は、ポータブルで流通するものでなければならない。そのような思想から、渋谷区では条例に基づき、公正証書の仕組みを使った申請を通じて、証明書を交付する流れとなったとのこと。
ちなみに渋谷区でのパートナーシップ証明書交付数は、現在時点で30組とのことで、人口当たりの交付数はトップである。
戦略としてのLGBTアライの可視化
「パートナーシップ証明書を取得すると、戸籍や住民票に何か記載されるんですか?」
「申し訳ございません、区の取り組みなので、何も記載はございません」
「それは良かったです。」
上記はよくある問合せと回答例なのだが、これが当事者心理の現状である。様々な「暴露」リスクに怯えているのだ。
LGBTの皆様が暮らしやすくなるように、地域でより一層の地道な啓発が必要と考え、渋谷区では「LGBTアライ」(Ally、支援者の意)の可視化が重要と考え、そのために「しぶやレインボー宣言」POPというものの交付もスタートしている。
「しぶやレインボー宣言」POP とは、LGBTアライ宣言を行い、以下の3条件を満たした渋谷区内の民間企業・事業所・店舗に対して交付されるもの。
・すべての顧客に対する、平等かつ誠意ある対応の約束
・すべての従業員に対する、平等かつ誠意ある対応の約束
・誰もが自認する性に基づいて、望むトイレが利用できる環境づくりの約束
様々な場面で、どのような扱いを受けるかわからず不安になってしまうお悩みが、LGBTの皆様にとっての課題の一つ。本取り組みを通じて、LGBTの方々が少しでも過ごしやすい地域社会のあり方を模索して頂きたい。
次ページ:カップル入場とブロックチェーン宣誓式