きちんとしたエビデンスに基づいた情報の提供
--妊活って、それこそ色々なソリューションがあると思うんです。タイミング法や体外受精から、漢方やアロマオイルのマッサージ、サプリメントなど。この辺りはどの範囲までアドバイス領域にされているんですか?
石川氏:基本的には「きちんとエビデンスに基づいた方法」のみを情報提供するようにしています。例えば極端な例ですが、『これを飲むと妊娠できる』という情報がネット上であったとしても、その根拠となるエビデンスがないのであればトピックとして紹介をすることはないです。
--なるほど、因果関係が確認できないということですね。漢方なんかはどうでしょうか?
石川氏:実は漢方の分野については、結構な人数の専門家の方々とディスカッションしてきました。漢方は、どちらかというと、ゆっくりと長期的なスパンで身体に効いてくるという側面があります。現状は選択肢として組み込んでいないのですが、エビデンスや今後の研究次第では、将来的にご夫婦のリクエストに応じてアドバイスに組み込む事を検討していく可能性もあります。
あと、不妊に効くサプリメントという意味では決してないのですが、葉酸の摂取はアドバイスに組み込んでいます。葉酸を摂取することが、胎児の先天性障害を減らす効果があることはわかっているので、啓蒙の意味も込めて、積極的に発信していく予定です。
--今後はチェックシートに対する回答だけでなく、そう言った情報も積極的にリコメンドもされる、ということですか?
石川氏:その可能性はあります。今はメインのアドバイスとして、どの妊活ステップを進むべきか、どんな視点から病院を選ぶべきか、という観点でのアドバイスを軸に回答するようにしています。病院の情報は特に判断が難しく、現在は妊活ブログや口コミで選んでいる方が大半で、通院しながら病院をいくつも変えている方も多いのが現状です。
今後は、どんなサプリがいいのか、生活習慣としてどうするのが望ましいか、なども含めて、エビデンスに沿ってその人の状況に応じて妊活に向き合うきっかけを作っていきたいと考えています。妊娠後の情報提供も大事ですね。
妊活や不妊治療がもっとポジティブな印象になってほしい
--妊活をサポートする方々にお話を伺うと、男性をいかに巻き込むか、ということに課題を感じている方が多い印象です。ファミワンとしてはどういった対応をされていますか?
石川氏:我々としては、「男性としていっぱいできることはあるよ」ということを、とにかくたくさん発信するようにしています。男性は協力的ではないと言われていますが、実は単に情報を知らないだけで、正しい知識を得ると、むしろ女性よりも積極的に関わろうとする意識がある、という印象があります。ですので、男性がしっかりと情報をキャッチできるように、ファミワンとして発信をし続けることが大切だと感じています。
--今年の春に放送されたテレビドラマ『隣の家族は青く見える』では妊活の専門家として監修も手がけられましたね。やはり反響は大きかったですか?
石川氏:やはりテレビの影響の大きさを実感しました。このドラマは深田恭子さん演じる五十嵐奈々と松山ケンイチさん演じる五十嵐大器夫妻による妊活の取り組みを軸に、お互いが成長していくという物語なのですが、そのリアルな様子が妊活当事者である視聴者の皆様に響かれたようで、妊活の機運醸成に繋がったことは間違いないです。7月発売のDVDは、異例の予約状況のようですよ。
http://www.fujitv.co.jp/tonari_no_kazoku/index.html
--妊活があそこまでオープンな話題としてドラマになったことはなかったと思います。
石川氏:そうですね。ただ、海外では妊活や不妊治療をオープンにするところが多いです。もちろん、倫理観や宗教観の違いから同様にとは言えないものの、日本でももっと妊活や不妊治療がポジティブな印象になってほしいと考えています。もっと企業や行政とも幅広く連携して、社会の意識を変えていきたいですね。
--行政と連携した取り組みとはどういうかたちでしょうか?
石川氏:主に早期の啓蒙ですね。個人に対する不妊治療への医療費助成は前からありますが、もっと若い世代に知ってもらいたいという気持ちを行政も強く持っています。私たちも行政主催のセミナーに登壇して、積極的に情報を発信するようにしています。6月には東京都が主催する「不妊治療と仕事の両立セミナー」のパネリディスカッションでも登壇します。
不妊治療と仕事の両立セミナー
http://www.hataraku.metro.tokyo.jp/josei/katsuyaku/childplan/
石川氏:妊活自体の情報もですが、助成対象となる特定不妊治療や、助成を受けるための条件など、まだまだそういった情報を知らない方も多いですね。
また最近は、企業の福利厚生の観点から、従業員の不妊治療の費用補助やそれにまつわる休暇制度を整えているケースも見られるようになりました。まだまだ金額としては十分とは言えないのが現状ですが、そこに対する奨励金が出る場合もあります。ようやく働くという視点でもサポートも始まったな、という印象です。
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