旅×お手伝い=おてつたび、地域との新たな関わり方が地方創生の特効薬となるか《前編》

インタビュー

 「全く新しいアプローチで地方の関係人口増加を目指すスタートアップがある」

そんな噂を聞きつけたのは、自治体と民間企業の移住マッチングをするイベントでのふとした会話だった。

 「関係人口」とは、移住する「定住人口」でも観光に来る「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉。若者を中心に、変化を生み出す人材が地域づくりの担い手となることが期待される層を示した、地方創生の取り組みから生まれた言葉である。

総務省HP内「関係人口」ポータルサイトより

 日本全体が人口減少・高齢化の波を受け、多くの地方自治体が地域づくりの担い手不足という課題に直面する中、この関係人口の増加が地方創生の次なる一手として注目されている。

 現在、関係人口創出に向けて様々な自治体・企業・団体が切り口の模索を続けている中、「旅」と「お手伝い」を掛け合わせた事業は、おそらくはじめてだろう。

 事業を手がけるのは株式会社おてつたび。仕事とボランティアの中間としてある「お手伝い」を通じて、地域の人と地域外の若者が出会い、地域のファン、すなわち関係人口を創出できる仕組み作りを行っているという。

 どういうことだろうか。

 お話を伺いたいと思っていたまさにそのタイミングで、2018年12月27日に【第1回おてつたび説明会】が行われるとのことで、まずはこちらにお邪魔させていただいた。

金銭的な負担なく地方に行ってお手伝いをする

株式会社おてつたび 代表取締役CEO 永岡里菜氏

 第1回おてつたび説明会は、二子玉川駅にある楽天クリムゾンハウス本社にて行われた。実はこの「おてつたび」、2018年7月より楽天株式会社が展開するRakuten Social Accelerator(※)というプログラムに採択されていることから、今回の説明会は共同での開催だという。

 参加者を見渡したが、半分以上が学生の方々のようだ。

※Rakuten Social Accelerator:社会起業家と楽天社員がプロジェクトチームを組成しテクノロジーを活用した社会課題解決に取り組む半年間の協働プログラム。

 簡単なアイスブレイクの後、さっそく株式会社おてつたび 代表取締役CEOの永岡里菜(ながおかりな)氏からの事業説明に移った。

私たちおてつたびは、旅+お手伝いを通じて、地域の方々と深い関係性になり、地域の魅力を知ることができるサービスを提供しております。

 おてつたびの事業概要はこうだ。

 旅行者は交通費をかけることなく、行きたい地域に行くことができる。代わりに、地域の旅館や民宿でお手伝いをする。だいたい3日〜1週間程度のおてつたび案件が多く、現時点では学生の方の利用が多いという。ちなみに、現状のビジネスモデルは、お手伝い先からのマッチング費用を頂戴する、というものだ。

おてつたびのポイントは大きく3つあります。

まずは、金銭的な負担なしで色々な地域へ行けるということ。交通費をかけてでも行こう、と思われにくい地域でも、交通費の負担がなければ行くきっかけになると考え、利用者は交通費一切不要で地域に行けるようにしています。(※2019年1月現在)

次に、お手伝いを通じて地域の方と仲良くなれるということ。ただお手伝いするだけではなく、いかに地域の方々とコミュニケーションをとってもらうか、という点を重視して設計しています。

最後は、自分の得意なことやスキルを試すことができるということです。お手伝いの内容は何も旅館での接客だけではなく、SNS集客などのマーケティングやお料理の調理など、多岐に渡ります。画一的なお手伝いではなく、様々な領域でのお手伝い内容を用意するようにしています。

 

 説明会では一通りの事業説明が終わった後、実際に利用者がおてつたびをしている様子をまとめた映像を見せてもらい、さらに実際におてつたびをされた方への質問タイムとなった。詳細は省くが、みなさま、報酬のない「おてつたび」に大変満足されているようである。ぜひ、以下の動画をご覧いただきたい。

 

 お金をもらわずに一週間も拘束されて満足できるものなのだろうか。旅行と言いつつ、観光の時間は果たしてあるのだろうか。そもそもどのような経緯と目的でこのような事業を展開し、どんな未来を描いていらっしゃるのか。

 もっと詳しくお話を伺いたいので、後日、代表の永岡氏にお時間をいただくことにした。

魅力ってどの地域にもある

--先日はありがとうございました!これまで色々な地方創生プロジェクトをみてきましたが、お手伝いと旅の掛け合わせ事業は初めて拝見しまして、非常に面白いと感じました。

永岡里菜(以下、永岡氏):ありがとうございます。おかげさまで興味を持ってくださる地域も増えてまいりまして、現在、おてつたび先の開拓をすべく各地を飛び回っています。ですので、実はほとんど東京にいない、という状況です。

 

--そんな貴重なタイミングで有難うございます。まずはじめに、永岡さんのことについて伺わせてください。もともとこういった地域創生系のお仕事をされていらっしゃったのですか?

永岡氏:いえ、最初は全然違う仕事をしていました。

もともと私は小学校の先生になろうと思っていまして、大学は教育学部に入りました。人、特に子供が好きだったことが大きいと思います。

でも実際に教育実習生として現場に入るうちに、なんだか違和感を感じまして。

今の自分が小学生という価値観が形成されるとても重要な時期の子どもたちに何を教えられるのだろうかと。色々と悩みましたが結論が出なかったので、就職先としていきなり学校の先生ではなく、まずは民間企業に入って揉まれようと思い、イベントなどを手掛ける広告ベンチャーに入社しました。展示会や株主総会など、様々なイベントの企画・運営をしました。

3年半ほどその会社でお世話になった後に、2社目の代表に出逢った事をキッカケに転職しまして、今度はそこで農林水産省と組んでの和食関係の新規事業に従事しました。

 

--またガラッとキャリアが変わられましたね。

永岡氏:この頃は色々と模索していまして、正直なところ、「うちでやりたいことを見付ければ?」と誘われての転職だったんです。

各地で和食に親しんでもらうために、全国の保育園や子育て支援センターに伺い、地域で活躍する料理人や農家の方と組んで和食の献立を考えて浸透させる、という新規事業でした。

そこで、今につながる重要な気づきを得ました。

行く前までは魅力を感じなかった地域でも、いざ伺ってみると、帰る頃には自分にとって素敵で魅力的な地域になっているんですよ。

事業を通じて地元の方と触れ合ったり、地元の方だからこそ知っているような場所に連れて行ってもらったりと、人を通じてその地の魅力に触れさせていただいていたんです。

魅力って、どこにでもあるんだな、という大きな気づきでした。

そしてそのことが、私の生まれ故郷の記憶も呼び覚ましました。

地域のありのままを見てもらえる環境を作りたかった

--永岡さん、地元はどちらですか?

永岡氏:出身は三重県尾鷲(おわせ)市です。しかも尾鷲の中でもすごく田舎の方です。

育ちは愛知県なのですが、年末年始や夏休みなどの長期休みで尾鷲に帰省したタイミングで、祖父に色々な場所に連れて行ってもらいました。

一緒に海に行ったり、祖父が通っていたスナックに連れて行ってもらったり。また、祖父の知り合いや地元の小学生たちなど、祖父を通じて様々な人に会わせてもらったので、尾鷲の住民の方々とはすっかり顔なじみだったんです。

和食新規事業での気づきと併せて、この尾鷲での原体験がフラッシュバックしました。

人を通じて地域を好きになる」という、おてつたびのベースとなる考えが頭の中でぼんやりと形になり、これがやりたいことだ!ってエンジンがかかりましたね。

結局、農水省との新規事業のプロジェクトは1年で離れ、そのままおてつたび設立に向けて動き出しました。

 

--今のおてつたびの事業形態には、どれくらいで行き着かれたのでしょうか?

永岡氏:1年間、試行錯誤を繰り返しました。

一見何にもなさそうに見える地域って、行かないと魅力はわかりません。地域の一部分を脚色してPRするという手もありますが、一過性に終わってしまいますし差別化も難しいので、結果として地域が疲弊してしまう可能性が高いです。

そんな中、地域のありのままをみてもらいやすい環境を作り、それ自体が地域の魅力発見につながる、そんなサービスを作りたいと考えました。

 

--最初はどんな事業を考えられたのですか?

永岡氏:農家や道の駅などのお手伝いをする代わりに、食事と宿泊場所を提供するという仕組みを考え、自分で実践しながら検証していきました。ちなみにこの時は、「ひと旅」という任意団体で活動していました。

おてつたび設立前に旅館のお手伝いをする永岡氏

--事業としてなぜ難しかったのでしょうか?

永岡氏:一番の要因は、他人を家に泊めることへの抵抗ですね。その当時は、農家さんを中心に検証を繰り返していたので、宿泊場所は農家さんのお家の空いているお部屋という形でした。

私・永岡もしくは永岡の顔なじみだからいいけど、どんな人が来るかわからないという状況で家に泊めるのは抵抗がある、という声がたくさんあり、事業として継続するのは難しいと判断しました。

2017年の秋あたりがそのような状況で、正直どうしようか悩んでいました。

でも、2017年末〜2018年始にかけてとある地域の旅館のお手伝いに行った時に、道筋が見えました。

 

》後編記事につづく

LoveTechMedia編集部

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