旅×お手伝い=おてつたび、地域との新たな関わり方が地方創生の特効薬となるか《後編》

社会課題

 仕事とボランティアの中間としてある「お手伝い」を通じて、地域の人と地域外の若者が出会い、地域のファン、すなわち関係人口を創出できる仕組み作りを狙う株式会社おてつたび。

 前編では、事業内容とこれまでの経緯について、同社代表取締役CEOの永岡里菜(ながおかりな)氏にお話いただいた。

 後編でも引き続き同氏に、事業への思いと今後のビジョンについてお話を伺った。特に2019年1月30日に、β版サイトを正式にリリースされたので、その内容についても詳しく伺った。

》前編記事はこちら

交通費問題解消が地域への扉をあける

--2017年末〜2018年始にかけての旅館のお手伝いで、どのような発見があったのでしょうか?

永岡里菜(以下、永岡氏):まず先ほど(前編で)申し上げた他人を家に泊めることへの抵抗」というものが、旅館であればそもそもなくなります。

旅館サイドにとっては、人手不足を解消する手段として、地域外の手を借りることができるのは大きなメリットでした。

また旅行者にとっても、旅館でのお手伝いを通じて地域密着の情報や食に触れることができるので、赴き甲斐があります。

さらに私たちにとっても、地域でのお手伝いがそのまま地域の魅力発見につながるので、ビジョンにかっちりとはまりました。

三方良しの仕組みとして、これはいけると感じました。

 

--つまり、事業モデルとしては旅館や民宿がメインのお手伝い先になった、ということですね?

永岡氏:そういうことです。

方向性の仮説がたったら、早速全国の旅館に電話とメールで連絡し、お返事をいただけた旅館を通じて、学生の方向けにサービス検証しました。

参加した学生は約20名だったのですが、皆さんの満足度が高く、また旅館サイドの評価も上々でしたので、本格的に事業化すべく、株式会社おてつたびとして法人化しました。

--学生の皆様にとって、交通費を支払わずに異郷の地にいけるのは、魅力的ですよね。

永岡氏:もちろん、これは学生の方だけの話ではないとも思っています。

例えば先ほどお話しした私の生まれ故郷である尾鷲市ですが、私にとっては魅力溢れる特別な場所です。

でも、多くの方にとっては、わざわざ時間とお金をかけて行こうと選択されるような場所では、残念ながらありません。

同じ交通費で3万円かかるのだとすれば、もっと楽しさが顕在化した別の地域に行こうとするでしょう。旅行者は、旅行という楽しいものに対して金銭的なものも含めリスクを負いたくない、つまり「つまらなかったら嫌だな」と思うわけです

おてつたびは、この「交通費の障壁」をなくすことで、無名の地域に行くハードルを下げ、様々な地域に赴くきっかけを作ろうとしています。

 

--確かに、交通費がかからないとなれば、旅先の候補は格段に広がりますね。

永岡氏:現状は1週間程度のおてつたび先が多い事もあり、学生の方のご利用が多いのですが、一方で社会人の方のご利用も着々と増えています。もっと社会人の方でもご利用いただきやすいよう期間等調整していきたいと思っています。

地域のファンになってもらうための細かい調整

--先日(1月30日)、おてつたびのβ版サイトがリリースされましたね。おてつたびの具体的な進め方とコンテンツについて伺わせてください。まず何から始めれば良いのでしょうか?

永岡氏:まずおてつたびのβ版サイトで、ご希望のおてつたび先を見つけていただきます。

おてつたび案件掲載例(上記は2019年1月31日時点のβ版サイト掲載情報です)

永岡氏:「行ってみたい!」と思われたおてつたび先が見つかったら、「ここへ行く」ボタンを押して、必要項目を入力していただきます。

おてつたび申込画面例

永岡氏:申込が完了しましたら、私含めたおてつたびメンバーと簡単なオンライン面談をさせていただいています。今はまだβ版なので、一人一人のマッチング精度を高めての検証をしたく、そのようにしています。

その後、地域の方とマッチングしてやり取りをしていただき、当日いよいよ、おてつたびに出発していただきます。

 

--一人ひとりと面談とは、すごく丁寧な進め方ですね!いざ「おてつたび」に行くことになった時、旅行者は何かお手伝いの準備が必要なのでしょうか?

永岡氏:現地では、旅館と学生さんのと関係で進むので、おてつたびは不安解消などのサポートを行っています。お手伝いの内容は基本的に旅館の方が現地で説明いただくので、何も準備する必要はありません。お皿洗いや布団敷きなど、旅館の方から教えてもらえれば簡単にできる事ばかりです。

スキルを活用したお手伝いも現地で説明があります。ですので、基本的にはいつも旅行に行く持ち物だけで大丈夫です。

地域の事を事前にインターネット等で調べてから行くと、地域の方とより深い話やもう一歩先の話が出来るので、オススメですよ。

 

--旅行といっても、1日中お手伝いをしてしまうと、結局地域の観光ができないのではと感じましたが、そのあたりはどうなのでしょうか?

永岡氏:旅行者がしっかりと地域観光できるよう、あらかじめ旅館・民宿サイドと調整しています。例えばお手伝いは朝と夜に限定し、お昼は観光ができるように自由時間を作っていただくようにお願いしています。〔※上記に限らずイレギュラーのおてつたび先もあるとのこと〕

永岡氏:また、地域の様々な方としっかりとコミュニケーションをとっていただけるような工夫もしています。旅行者と旅館・民宿の双方でしっかりと自己紹介の時間を設けたり、受け入れ先担当者のコミュニケーションスキルに鑑みて、2名体制での受け入れにしていただくなど、細かい調整をしていますよ。

 

--お手伝いというと、なんだか殺伐とした関係になりそうなイメージもありますが、むしろ逆ということですね。

永岡氏:はい、コミュニケーションをしていただくことで「旅行者にとっての地域の顔」を作っていただくことも、おてつたびが目指す新しい地域との関係性です。

とはいえ、通常の旅行者のような「おもてなし」をしてもらうわけではありません。あくまで、おてつたびの旅行者は「おもてなしをする側」なのであって、そこに地域住民との差はないようにしています。

旅館の方と同じ目線に立ち、仲間になってっていただくことで、気づいたら地域や旅館の事を”自分ごと化”出来るようになります。

そして、旅館の方との自然なコミュニケーションを取る中で、インターネットには載っていない地域ならではの発見があり、結果としてファンになっていただけると考えています。

日本各地に眠る地域の魅力を価値に変える

--これからの「おてつたび」事業について、目標やお取り組みの予定を教えてください。

永岡氏:まずは(2019年)1月30日に無事にβ版をリリースできて、ホッとしています

これまでは手動でおてつたび先と希望者のマッチングをしていたので、そこが半自動になったのは大きいです。

今後はシステムの中に評価制度を導入し、マッチングの精度向上を進める予定です。また、旅館や民宿などの宿泊施設だけではなく、その地域の様々な産業についてもお手伝いの受け入れができるようなスキームを作りたいと考えています。

そして長期的には、お手伝いという形ではなくても、日本各地のニッチな地域へ送客ができるようになれば良いなと考えています。

結果的に、そこが誰かにとっての特別な地域になり、移住や定住まで発展したら幸せですね。

--最後に、Love Tech Media読者の皆様に一言お願いいたします。

永岡氏:私たちのビジョンは「日本各地に眠る地域の魅力を価値に変える」ということです。そして、地域には様々な観光資源がありますが、私たちがフォーカスする観光資源は「人」です。

地域の人を通じて、地域を好きになる。

このことを信念に、私たちは事業を進めてまいります。

何もなさそうに見える地域ほど面白い、知らない地域に行くから楽しい。

皆様にとって「色づいた、差別化された、自分にとっての特別な地域」の発見におてつたびが関与できると嬉しく思います。

是非、日本各地のたくさんの地域へ足を運んでいただきたいです!

 

編集後記

筆者自身、旅行が好きなので国内各地に赴くことが多いのですが、好きになった地域を要素分解すると、そこに必ず「魅力的な人」が存在します。

 

素敵な人とのご縁があった土地は、結果としてお気に入りの地域となって、何度も通うことになっていました。

 

おてつたびさんは、その体験をまさに標準的なサービスとして昇華されようとしており、お話を伺いながら非常に共感しました。

 

価値観がますます多様化する現代だからこそ、画一的なパッケージ旅行ではなく、このような体験型の先を行くコンテンツこそ、一歩先の旅行の未来なのではないでしょうか。

 

今後のおてつたびさんの動向を、引き続きLove Tech Mediaとして注視してまいりたいと思います。

 

『おてつたび』詳細についてはこちらをご覧ください

 

本記事のインタビュイー

永岡里菜(ながおか りな)

株式会社おてつたび 代表取締役CEO

三重県生まれ、愛知県育ち。幼少期は三重県尾鷲市で長く過ごす。
前職では農林水産省と共に和食推進事業を0から作り上げ、全国の市区町村と連携しながら多数の地域へ足を運ぶ。沢山の地域へお邪魔する中で、「ここには何もないのよ」とおっしゃる地域の方々がなによりも魅力的で、その方々から聞く何気ない地域の話が、自分自身にとっては新鮮で価値のあるものだと何度も感じる。この時、”地域の人” を通じて “地域” を好きになると確信。自分の信念となる。また、たまたま旅館のお手伝いをした際に人手不足の深刻さを目の当たりにし、その一方で知らない地域へ行きたいけど交通費が足かせになっていて行けない若者がいる事に気づく。両者をうまくマッチングさせたいと思い本サービス立ち上げを決意。人生をかけた挑戦をしています。
白米と地域をこよなく愛し、地域のおばあちゃん・おじいちゃんのお家で世間話をしている時が至福の時です。
“代表のただ熱いだけのブログ:https://medium.com/@nagaoka.eat

■ビジネスコンペティション実績■
・日本経済新聞社様主催「日経ソーシャルビジネスコンテスト」 ファイナリスト
・石川県主催 「スタートアップビジネスプランコンテストいしかわ2018」ファイナリスト
■アクセラレーションプログラム■
・孫泰蔵様×NPO法人ETIC様主催 社会起業家向けプログラム「SUSANOO」5期
・東京都主催 「青山スタートアップアクセラレーションセンター」5期
・楽天様主催「Rakuten Social Accelerator」1期

LoveTechMedia編集部

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