実際にモニターで無精子症の方がいらっしゃったんです
--Seem開発を進めていかれるにあたって、社内での空気感や認識はどうでしたか?
入澤氏:それこそ最初は、だいぶ距離感があったと思います。中途入社してきた人間がずっと精子に関するプロダクトを作っているので、そりゃ怪しいですよね(笑)。
でも社内でプレゼンを進め、試作品を作って説明を進めていく中で、これが「新しい生命」に繋がるサービスだということが徐々に浸透していきました。
--2016年4月にリリースされる前に社内でモニター実験をされたとありますが、実際に社内の方に使っていただいて、どのような反応でしたか?
入澤氏:何名もモニターに協力してもらったのですが、その中で一切精子の動きが見られない方がいらっしゃいました。
おかしいなと思って何度かトライしてもらったのですが、やはり精子が見当たらない。念のため不妊治療専門の医療機関の先生にも見ていただいたところ、すぐに医者に診てもらった方が良いということになり、至急病院に行っていただいたことがありました。
結果としてその方は「無精子症」(※)であることが判明し、即座に治療に進むことが決まりました。
Seemでチェックしなければ発見が遅れ、対応にさらなる時間がかかっていたはず、ということで、Seemが実際に夫婦の妊娠に向けたアクションにつながったとても良い事例でした。
※無精子症:精液中に精子を確認できない状態。精巣で精子が作れているけど通り道が詰まっていて出てこない「閉塞性無精子症」と、そもそも精子かがうまく作れない「非閉塞性無精子症」の2つの症状に分岐される
--その方にとっては本当に幸運でしたね。Seemを使ったとしても、それとは別で医療機関でも診てもらった方が良いのでしょうか?
入澤氏:たまに誤解される方がいらっしゃるのですが、Seemは医療機関の代替ではなく、あくまで「自分の状態を知るきっかけ」として使ってもらいたいです。
自分の精子の状態を知るのに、いきなり医療機関に行って調べるのはハードルが高いので、その前にまずはSeemでチェックしてみよう!というのがサービスの思想です。
なので、Seemの測定結果がどうであろうと、しばらく妊活をされて妊娠しなければ必ず医療機関でちゃんと検査していただきたいです。
まだまだ男性不妊という課題自体が認知されていない
--Seemはどこで購入できますか?
入澤氏:ネットと大手ドラッグストアで購入いただけます。
ドラッグストアって、妊活のコーナーがあるんですよね。妊娠検査薬や排卵日予測検査薬、サプリなど置いてある場所です。そこにSeemも置いてもらっています。
--男性不妊のキットですが、そうなると女性の購入者も結構多いのでしょうか?
入澤氏:そうですね、多いと思います。妊活コーナーにいらっしゃった方に、不妊の原因の半分は男性です、精子の濃度と運動率を計測できます、とポップやチラシを使って説明しているので、そこで手にとっていただく機会が多いです。
--これまで様々な場所で発表されたりメディア取材されたり、だいぶSeemの認知は広がっていると感じるのですが、いかがでしょうか。
入澤氏:いや、本当にまだまだですよ。
おっしゃる通り、メディアに取材いただいたり、Seemがプロダクトとして賞をいただいたりなど、有難いことにフォーカスしていただけることが非常に多いです。そしてその度に「こんなのがあるんだ!」って大きな反響もあるんです。
それって裏を返すと、課題やサービス自体がまだまだ認知されていない証拠でもあるので、妊活夫婦だけでなく、これから子供が欲しい全ての方々にとってのきっかけになっていただきたいと考えています。
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