日本の少子高齢化が止まらない。現在4人に1人の割合である高齢者は、2024年には3人に1人と劇的に増加し、日本は「超・高齢者大国」になる。また2016年には子どもの出生数が初めて100万人を割り、その後も減少を続けていることから、将来の母親となる女児の数が着実に減ってきており、「少子化」も止まりようがない状況だ。
それに併せて悲鳴をあげているのが介護の現場である。急増する要介護者、それに併せて逼迫する介護保険財政、介護施設建設の遅延、慢性的な人手不足など、問題が山積みとなっている上に、抜本的な解決策を講じることができていないのが現状である。
そんな介護業界の未来に早くから危機感を覚え事業展開をしているのが、株式会社ウェルモだ。同社はITを通じて介護業界の情報透明化と働き手の負荷低減に着手するソーシャルベンチャー企業である。
Love Tech Mediaでは前編・後編に渡って、同社代表取締役CEOである鹿野佑介氏にインタビューした。
まず前編では、鹿野氏の事業展開にあたっての”思い”の部分にフォーカスをしてお話を伺う。
株式会社ウェルモの介護領域事業
まず初めに、同社の介護領域事業について簡単に説明する。
ウェルモでは、介護にまつわる地域資源情報を可視化して利用者に必要な情報を提供できるようにするプラットフォーム「ミルモ」と、介護支援専門員(以下、ケアマネージャー)によるケアプラン作成を支援する人工知能「ケアプランアシスタント」の開発が、大きな事業軸となっている。それぞれの事業概要について、以下に記載する。
ミルモネット
ケアマネジャーやソーシャルワーカーといった介護の相談支援の専門職が地域包括ケアに必要な情報を検索、管理できるWEBシステム。これまでほとんどが大量のチラシやフォルダに埋まっていた介護サービス関連情報をWEB上で透明化することで、利用者の機微なニーズに対応した情報に簡単にアクセスできるようにしている。特別区と全国の政令指定都市を主な対象として、順次対応エリアを拡大予定。
ミルモタブレット
介護支援専門員(以下、ケアマネジャー)が被介護者向けに、適切な介護事業所を検索・提案できるように設計された、タブレット端末のサービス。120以上の項目を掲載した事業所情報、事業所の外観/内装等の写真閲覧、保険請求分/自己負担分計算等が、全て本システムだけで可能となっている。現在は福岡市を中心にサービス展開している。
ミルモブック
ミルモの冊子版として生まれた介護サービス情報誌。全事業所外観・内装写真付きで、1ページあたり1事業所の充実した情報を掲載。デザインの見やすさ、利用者のニーズがある情報の多さから、たくさんの評判の声が届く。年刊誌として福岡市内で発行しており、順次拡大予定。
ケアプランアシスタント
「知らないことを無くす」「ケアプランの理由を説明できる」「相談援助に注力できる」をコンセプトに研究開発を進める人工知能。幅広い専門職の知識・知見を人工知能化することで、基礎資格による知識差やケアマネジャーの業務負担やストレスを軽減させ、客観的で質の高い介護計画(ケアプラン)の作成支援を可能とする。国立情報学研究所との共同研究でプロジェクトが進んでいる。
以下の動画も併せてご覧いただきたい。
上記理解を前提に、インタビューを進めさせていただいた。
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