LoveTech Media編集部コメント
あなたは「シーマン」をご存知だろうか。
1999年7月29日に発売された育成シミュレーションゲームソフト「シーマン~禁断のペット~」の架空の生物の呼称である。
人の顔と大昔から受け継がれたという知恵を持ち合わせ、かつ人語を解すという、古くからエジプトで伝説となっている生物「シーマン」を水槽内で飼育し、ある場所へと向かわせるのが目的のゲームである。
そのふてぶてしい態度を、CMやゲームで確認し、忘れることができないでいる方も多いのではないだろうか。
このゲームの最大の特徴は、シーマンの容姿ももちろんだが、簡単な音声認識をする点と言えるだろう。呼びかけるとやって来たり返事をしたり、プレイヤーの年齢や性別、職業などを覚えたりするという、一方的な操作ばかりであった当時のゲーム業界の中では特異な存在だったと言える。
そんなシーマンも、今年で20歳となるわけだ。
これを記念し、シーマンの名前を冠した「シーマン人工知能研究所」が、コミュニケーションロボットなどを企画・開発・販売するユカイ工学株式会社との業務提携を発表した。
シーマン人工知能研究所とは、上述のゲームソフトの続編を作るプロジェクトではない。
日本語口語の会話エンジンの開発を目指し、2017年に民間資本で創業された開発会社である。
具体的には、会話の中の「音」がもたらす文法的規則性に着目し、会話の意図をベクタライズ・エンジンによって数値化するという試みをしている。
さらに、ユーザーの発話した言葉のイントネーションを解析し文法化する文法体系「メロディ認識」によって省略補完や文脈生成する言語という、まったく新しいアプローチ方法で「日本語の会話を理解するエンジン」の研究・開発に取り組んでいる。
今回の業務提携内容は、主に以下2点。
- 共感する対話エンジン「ロボット言語」の共同開発
- ユカイ工学による、「日本語会話生成エンジン」(シーマン人工知能研究所、2020年リリース予定)の販売代理店事業の展開
特に前者について、ユカイ工学が開発を進めている次世代版コミュニケーションロボット「BOCCO emo」上で動作する対話エンジン「ロボット言語」を、両社で共同開発していくという。
ロボット言語の第一歩として、独自の文法体系を持つ原始的な音声言語を開発し、「BOCCO emo」 に搭載、ユーザーはロボットとの共同生活を通じて次第にロボットの意図を理解するようになる体験を目指すという。
これは、語学能力が開拓される原始過程そのものの追体験であり、コミュニケーション能力開発の基本ともいうべきプロセスと言える。
思い出してほしい。
映画「スターウォーズ」シリーズのR2-D2というロボットは、所謂機械語しか発信できない。
しかし、周囲のルーク・スカイウォーカーやハン=ソロ、C-3POなどの登場人物は普通に会話できている。
実際に鑑賞者であるあなた自身、最初の作品を見たときよりも、作品数を重ねていったときの方が、R2-D2への理解が深まっていったと言えるだろう(もちろん、これは作品のストーリーテリング技術の賜物でもあるのだが)。
ユカイ工学が力を入れている「ロボットによる感情表現」もこの会話学習体験に大きく作用しており、学習工程と情緒教育の二面性を実現する、全く新しい同居型体験ロボットとなる予定だ。
2020年初旬には「BOCCO emo」サービスをリリースし、同年中に会話エンジン搭載開始を目指しているという。
一方通行ではない“共感型”の会話ができるロボットの誕生が、今から楽しみである。
以下、リリース内容となります。