LoveTech Media編集部コメント
今、子ども達の“本離れ”が深刻な状況となっている。
それもそのはずだ。
一昔前に比べ、本と接することのできる環境が激変しているのだ。
例えば書店。
公益社団法人全国出版協会出版科学研究所による2019年版出版指標年報によると、2017年時点の書店総店舗数は13,576店舗となっており、これは10年前に比べて 2割以上減少していることになるという。
内訳として300坪以上のお店は960店舗(2007年)から1,162店舗(2017年)へと増加している一方で、それ以外の書店が軒並み減少しているという状況だ。
つまり、街の本屋さんが次々となくなってしまっている。
さらに本離れを加速されているのが、昨今のデジタルメディアの急速な普及に伴う、乳幼児期にスマートフォンやタブレット端末に触れる子どもの増加である。
ベネッセ教育総合研究所が2018年に発表した「第2回乳幼児の親子のメディア活用調査報告書」によると、2013年と2017年における乳幼児期のスマートフォン利用率は、以下のように変遷している状況だという。
- 0歳児:13.9%(2013年)→44.0%(2017年)
- 1歳児44.5%(2013年)→64.6%(2017)
- 2歳児65.1%(2013年)→80.4%(2017年)
このような子どもを取り巻く読書環境の改善を目的として、‘本’の価値を科学的なアプローチで明らかにする「子どもと絵本・本に関する研究」プロジェクトが立ち上がった。
プロジェクトメンバーは、出版社であるポプラ社と東京大学大学院教育学研究科附属 発達保育実践政策学センター(以下、東京大学Cedep)である。
(左から)東京大学教育学研究科Cedep:野澤祥子氏、東京大学教育学研究科長:秋田喜代美氏、株式会社ポプラ社代表取締役社長:千葉均氏、東京大学教育学研究科Cedepセンター長:遠藤利彦氏
この研究では、子どもの発育発達プロセスにおける絵本・本の固有性や、認知能力・非認知能力の発達への寄与の可能性、保育園・幼稚園での絵本をとりまく環境などを、以下3点の中核的な問いを前提にしながら、科学的アプローチによって明らかにしていく。
- 絵本・本には子どもや親子にとって固有の意味や価値があるか?
- 家庭や園における絵本・本の量や環境の質には、多様性や格差があるか?それは子どもの発達に影響するか?
- 絵本・本に関する環境づくりに関して参考になる園や自治体の先進事例が国内外にあるか?
これにより、デジタルメディア時代の絵本・本の新たな価値を発見し、その研究成果を広く社会に向けて発信することで、未来の子どもたちにより豊かな読書環境を提供することを目指して行くという。
本が子どもの発達に良さそうだということは、多くの人々が何となくイメージできていることではある。
しかし、そこに核としたエビデンスベースでの認知が伴っていないのも現状である。
今回の共同研究をきっかけに、「本は子どもの発達に良い」という確固としたエビデンスが出てきて、それによる読書体験の価値の再発見がなされることを期待したい。
以下、リリース内容となります。