キュレートポイント
各国の「STEAM教育」最新情報やSTEAM人材インタビューなどの情報を発信する、日本初のSTEAM特化型WEBメディア『STEAM JAPAN』。
その編集長に株式会社Barbara Pool 代表取締役の井上祐巳梨(いのうえ ゆみり)氏が就任されたということで、今回はそのインタビュー記事となります。
実は井上氏、昨年当メディアで取材した「Edvation x Summit 2019」のセッションにも登壇されています。
STEAMを推進するためには、子ども達が過ごす「環境」構築が非常に大切になります。
だからこそ、親御さんや先生方のマインドチェンジが必要だということを井上氏は強く提唱されており、そのメッセージを多くの方に受け取ってもらうべく、本記事をキュレートしました。
なぜ今「STEAM」が重要なのか?なぜ我が国から世界に向けて発信する必要があるのか?メディア名に「JAPAN」を冠していることへの想いとは。
STEAMに限らず、“学び”の当事者である全ての方に読んでいただきたい内容となっています。
本記事は「STEAM JAPAN」のキュレーション記事で、元記事の一部転載版となります。
2019年11月のSTEAM JAPANサイトリニューアルに伴い、編集体制も強化され、新編集長に井上祐巳梨(いのうえ ゆみり)さんが就任されました。井上さんといえば、これまでクリエイティブ事業を中心に地方創生や商品開発など、様々なプロジェクトを創出してきた人物。どのような経緯と想いをもって、STEAMという教育領域の事業を立ち上げ、WEBメディア編集長となったのか。編集長就任インタビューをご覧ください。
井上 祐巳梨氏 プロフィール
株式会社Barbara Pool 代表取締役 / クリエイティブプロデューサー
東京都出身。日本大学芸術学部卒業。学生時代から地域の町おこしイベントや、2,000人超を動員する学生最大級アートイベントの立ち上げを代表として行う。芸術学部奨励賞(最優秀表彰)受賞。大手広告代理店に入社。大型イベント案件にて社長賞受賞。2013年オーストラリア政府のキャンペーン「The Best Job in the World(世界最高の仕事)」では、世界60万人から日本人唯一の25名の中に選出。同年6月に株式会社Barbara Pool 設立、代表取締役に就任。企業・地域の課題を解決するクリエイティブ事業を主体に、多数のプロジェクトに携わる。主な作品に、唐津市PR統括、コスモ石油「スマートビークル」、シーボン.「私たちの心の原点」など。2016年、日芸アートマネジメント会事務局長就任。2017年、豊島区・アートカルチャー構想 池袋シティブランディング戦略会検討委員。2018年、地方創生×クリエイティブ人材育成プログラムをエリア拡大実施。2019年、(株)Barbara PoolにてSTEAM事業部を立ち上げ、WEBメディア「STEAM JAPAN」の編集長に就任。同時期に、経済産業省『「未来の教室」実証事業』に採択。一般社団法人STEAM JAPAN設立、代表理事に就任。新しい次世代STEAM教育事業を推進中。
21世紀の教育改革について語っていた中学時代
長岡:「まずはじめに、どのような経緯でSTEAMという教育テーマにいき着かれたのでしょうか?井上さんといえば広告や商品開発、ブランディングといった“クリエイティブ業界の人”というイメージです。」
井上さん:「STEAMを知った直接のきっかけは、一番上の姉からの情報でした。シリコンバレーに住んでいる彼女が、STEAMという教育トレンドがあって、これからの世界の教育スタンダードは「何かを創る」ことだと言うんです。私は三姉妹の末っ子なのですが、長女はシリコンバレーに、次女はロンドンにそれぞれ住んでおり、日本・アメリカ・イギリスの3拠点をハブにして各国のSTEAM教育事情を調べていって、これは間違いなく今後重要なものになる!と確信したわけです。数年ほど前の話です。」
長岡:「三姉妹3拠点でのSTEAM調査!すごいですね。これまでクリエイティブ畑にいらっしゃった井上さんにとって、STEAMの何が心に刺さったのでしょうか?」
井上さん:「弊社では、地域課題をクリエイティブや横断したスキルで解決していく、というのを実際に行なっている会社です。そこで、さらなる本質は、考えた時に「地元の方々が、自分たちで実際に課題解決できるようになること」、そこがキーになると思いました。そこで、自治体主催の『クリエイティブ実践カレッジ』や『クリエイティブラボ』を企画運営しているのですが、その活動を通じて「クリエイティブはクリエイターだけのもの」「普通の人には縁のないもの」という感覚が想像以上に世間一般にある、ということを節々で感じていました。
本来、クリエイティブって身近なところにたくさんあるもので、それこそ小さな子どものやること一つとっても、全てがクリエイティブなわけです。みんな誰でもクリエイターだしクリエイティブの力を持っているにも関わらず、どうやらそう思っていない人が沢山いるようだと。
それってなんでだろうな?と思っていた中でSTEAM教育のことを知って、これは教育から来ているのかもしれない、という仮説がたったんです。そして、社会人だけでなくまさにこれからの未来を背負って行く「子供たち」こそ、このスキルが重要だと感じました。私自身、小さい頃から一斉教育に疑問を感じていた人間だったので、特にそう感じたのかもしれません。」
長岡:「小さい頃からって、いつぐらいからですか?」
井上さん:「小学生の時にはもう、みんなが同じことをやらねばいけないことや、はみ出たことをやったらすぐに列に戻されることに、ずっと違和感を感じていました。なぜ、個性を個性として受け取ってもらえないのか。例えば小学校のときは、こんなことがありました。騎馬戦のリーダーは「男子だけ」と決められていました。幼いながらに、その理由がわからず「なんでですか?」と担任の先生に聞きました。すると、「ルールだから。前例がないから。」というのです。誰が作ったか分からないルールで、子供たちは自然とがんじがらめになっているんですよね。こんなわかりやすい例だけでなく、他にもたくさん転がっていると思います。ただ、私は母親から「常識を疑え」との教育を受けていたので、この問題は私は実際に新聞の声欄に投稿しまして(掲載されなかったと記憶していますが)その元の文章を持って、担任に「女子でも、やらせてください。機会を勝手に摘まないでください。校長にもお伝えします。」と直談判しました。結局、熱意が伝わったのか、騎馬戦リーダーになれたことが非常に思い出深く残っています。こんなことが日常茶飯事でしたので、中学の卒業文では「21世紀の教育改革について」なんて、一人だけ超堅い文章を書いていました(笑)」
長岡:「中学からすごいテーマですね(笑)先生も複雑な気分だったかもしれませんね。」
井上さん:「なぜ私たちはこういう教育を受けなければいけないのか、ずっと納得できなかったんです。高校になると少しは自由な雰囲気になり、そのあと日芸(日本大学芸術学部)に進学して、そこで「人生は自由なんだよ」という先生方のもとで、初めて「ああ、これで大丈夫なんだ」って気づいたんです。日芸では、個性を伸ばすことが全て、という風土でした。
でも社会人になって、また一斉授業の延長が続くわけです。例えば企画書一つとっても、好きな色で仕上げて提出すると「なんでこんな色で作るんだ。常識を学ばなかったのか」なんて言われたりして。良い会社ではあったのですが、それでも、こういう“型にはめる”空気からは逃れられないのか、と。違和感はずっと心の片隅で感じていました。
本当に変えていくべきは、親御さんや先生方のマインド
井上さん:「あと、震災の影響も大きいです。3.11を境に、これまでの消費型社会の限界に人々が気づき、競争社会から『共創』社会へのシフトが少しずつ始まったと感じます。私自身もあの日がきっかけで大きく価値観が変わり、のちに起業をするきっかけになりました。
教育もまた、みんなが一斉にやること自体に限界があると気づいたタイミングでもあったのではと思います。」
長岡:「高度な知識教育を受けて来られたはずの方々が、震災現場では柔軟な判断を下せていない、なんて話はよく聞きますよね。」
井上さん:「イギリスでもアメリカでも、“知識教育だけ”はもう古いというのが共通の認識です。その前提で、どうやってSTEAM教育を実践していくべきか。PBL等をどのように進めていくのが良いのか。みんな試行錯誤しながら模索している時代です。
日本でも、STEAM教育は一部の優秀な人だけのものではなく、ボトムアップ型で広く一般に必要なものであることは間違いないでしょう。でも一方で、まだ多くの親御さんが「受験に関係ないから」という理由で、後回しにしちゃっている現状があります。これは先生方も同様です。つまり、本当に変えていくべきは親御さんや先生方のマインドにある、と私たちは考えています。
だから弊社では新規事業としてSTEAM 事業部を立ち上げてWEBメディア「STEAM JAPAN」をオープンし、また並行して一般社団法人STEAM JAPANという別団体も立ち上げました。」
長岡:「先に社団について教えてください。新団体ではどんなことをされるのですか?」
つづきは以下よりご覧ください。