記事の要点
・世界各国で「IT × ウニ」を通じて海洋資源の保全と経済活動の循環を目指しているウニノミクス社が、藻場再生を通じたブルーカーボンの推進事業において、ENEOSホールディングスとの協業を発表。
・ウニノミクス社の循環型ビジネスモデルを活用した藻場の回復・造成を行い、ブルーカーボンによるCO2削減を目指しながら、藻場の再生によって創出されるCO2削減量を、ENEOSが行う「ENEOS環境価値エコシステム」においても活用し、さらなる環境価値・低炭素事業の創出・育成につなげていく。
・ENEOSでは、グループ長期ビジョンにおいて「低炭素・循環型社会への貢献」を掲げており、革新的事業を通じたこれまでにない価値を創造するサービスの構築を目指している。
LoveTechポイント
サーキュラーエコノミーを実現するオープンイノベーションは、今後ますます増えていくことが想定されます。
今回の協業によって、ウニという切り口においても、そもそも廃棄という概念がなくなるような循環型エコシステムへの認知が広がっていくことを期待したいと思います。
編集部コメント
日本のみならず、オランダやカナダなど世界各国にてIT × ウニで海洋資源の保全と経済活動の循環を目指しているUrchinomicsグループが、藻場再生を通じたブルーカーボンの推進事業において、ENEOSホールディングスと協業をすることが発表された。
今回協業締結されたのは、オランダのUrchinomics B.V.社(以下、ウニノミクス社)。協業にあたって、ENEOS100%小会社であるENEOSイノベーション・パートナーズ合同会社との間で、出資契約が締結されたという。
藻場再生を通じたブルーカーボン推進事業とは、具体的にどのようなものなのか。
そもそも、現在のウニにまつわる海洋資源環境においては、「磯焼け」が大きな問題となっている。
磯焼けとは、増えすぎたウニによって海の森である藻場が食い荒らされてしまう問題のこと。
浅瀬の藻場では、海に吸収された大気中のCO2が水中生物などを通じて「ブルーカーボン」として貯留されることから、高効率なCO2の吸収・固定に貢献すると注目されており、小魚などを育む海洋生態系の基礎ともなっている。
つまり、「磯焼け」が発生すると、CO2の吸収もなされなくなってしまい、自然の循環システムが壊れてしまうことになる。
さらにこの大量発生したウニも、エサが少なく飢餓状態であるため、身入りもなく価値がないため、捕獲者からも人間からも放置されてしまっている状況なのだ。
この課題に対して、ウニノミクス社では、磯焼け状態の海で採取したウニを効率的に畜養する循環型ビジネスモデルを確立。ノルウェー水産研究所の技術を基に日本国内、ノルウェー、カナダ、米国における複数拠点での実証実験を行い、磯焼け状態の海で採取した市場価値のないウニを2カ月程度で食用に適した身入りと品質のウニに畜養する効率的な技術を実現している。
詳細は、以下の記事も参照してほしい。
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またENEOSでは、グループ長期ビジョンにおいて「低炭素・循環型社会への貢献」を掲げており、革新的事業を通じたこれまでにない価値を創造するサービスの構築を目指している。
そして、そのために再生可能エネルギー事業やCO2フリー水素サプライチェーン構築などを進め、2040年のカーボンニュートラル実現に向けた取組みも加速しており、そのような一連の取り組み流れから、今回の協業へと至ったことになる。
今回の協業では、ウニノミクス社の循環型ビジネスモデルを活用した藻場の回復・造成を行い、ブルーカーボンによるCO2削減を目指しながら、藻場の再生によって創出されるCO2削減量を、ENEOSが行う「ENEOS環境価値エコシステム」においても活用し、さらなる環境価値・低炭素事業の創出・育成につなげていくという。
このような、サーキュラーエコノミーを実現するオープンイノベーションは、今後ますます増えていくことが想定される。
今回の協業によって、ウニという切り口においても、そもそも廃棄という概念がなくなるような循環型エコシステムへの認知が広がっていくことを期待したい。