記事の要点
・京都市でWebを活用したものづくり企業の支援を行なう株式会社Ggrowが、規格外で行き場のない野菜を使った乾燥野菜ブランド「OYAOYA」をリリース。
・ 規格外野菜による乾燥野菜の販売と、感想を生産者へと直接送ることができる仕組みにより、京都の中山間地域における農業存続の、持続可能なモデル構築を目指す。
・リリース時点で展開されている乾燥野菜は9種類で、「にんじん」や「ごぼう」のほか、大根の「紅くるり」や「もものすけ」(カブの一種)など、珍しい京野菜も揃えてある。
LoveTechポイント
乾燥野菜は、味噌汁パックなどで目にされたことがある方も多いのではないでしょうか。
一般的な流通網に乗らない野菜を付加価値をつけて販売することで、地域の食産業を活性化しようというビジョンが、LoveTechだと感じます。
編集部コメント
京都市でWebを活用したものづくり企業の支援を行なう株式会社Ggrowが、規格外で行き場のない野菜を使った乾燥野菜ブランド「OYAOYA」を立ち上げた。
乾燥野菜販売を通じて、京都の中山間地域における農業存続に向き合い、地域農業のリブランディングを進めるためだという。
どういうことか。
京都府は、全農地面積のうち、中山間地域の割合が比較的高い場所となっている。
例えば2017年データでは、京都府全体として耕地面積約3.1万haのうち中山間地域は65%だ。中でも北部地区では南丹地区76%、中丹地区74%、丹後地区85%となっており、南部の山城地区38%と比較すると、中山間地域割合が特に高い数字となっている。
また、京都府の農業就業人口は直近10年間で約4割が減少傾向にあり、全国と比べ高齢化が進んでおり、特に中丹・南丹地区においては農業人口の減少が顕著であることから、この両お行きの対応も喫緊の課題となっている状況だ。
そんな中、同社が京都の丹後・中丹・南丹地域において20代〜40代の若手生産者にヒアリング調査を行ったところ、2つの「流通課題」が浮き彫りになったという。
一つは、行き場のない規格外野菜の流通課題だ。
中山間地域では大規模で単一品目を生産するのには適していない土地であることから、少量多品種栽培が行われている。つまり、大きな市場がある都市部から離れた地域の場合、少量多品種となると規格外野菜の輸送費がかかることで利益になりづらくなっており、生産者が儲からない状況が続くことになる。
またもう一つは、消費者との接点が少ないという情報流通の課題。
安定的な卸先はある一方で、決まった卸先に卸すだけでは消費者との繋がりが薄く、リアルな声を直接聞く機会がなく市場の声が届きにくいのだ。
特に、Ggrow代表の小島怜氏が、若手の農家から「5年後は続けていないかもしれない」と聞いたことで、改めて農業存続の課題を実感したという。
そこで同社は、上記2点の流通課題の解決と、若手農家の大規模化による農業存続モデルの確立のため、OYAOYAを立ち上げた。
野菜を収穫した地域内で乾燥加工された乾燥野菜は、日持ちし、長期間保管が可能となるだけでなく、生野菜に比べ輸送費も下げることができる。
また、商品に同封した冊子には実際の生産者が載っており、購入者がWeb上から感想を送ることができるため、消費者と生産者が直接繋がることも可能だ。
消費者側での野菜の廃棄も問題となっているなか、沸騰した鍋に入れて5分で完成する乾燥野菜は最適な商品であり、家庭でのフードロス削減にもつながることが期待される。
この乾燥野菜、まずは試作として2021年3月に大垣書店京都本店にて販売され、40個が完売。同年5月には、Instagramにて先行販売を開始し10日間で70個が完売したという。
リリース時点で展開されている乾燥野菜は9種類で、「にんじん」や「ごぼう」のほか、大根の「紅くるり」や「もものすけ」(カブの一種)など、珍しい京野菜も揃えてある。
夏からは野菜の収穫量が増え、30種以上を予定しているそうだ。
内容量は30gで、賞味期限は製造年月日から起算して約6ヶ月だという。単品から購入でき、常温保存なので、一般的に野菜を買うというよりかは、スナックフードを購入する感覚に近いだろう。
在宅勤務により、自宅で昼食をとる人も増えているであろうからこそ、仕事の合間に手軽に調理ができる乾燥野菜は、何かと重宝する食アイテムだと言えるだろう。