記事の要点
・海の共通の課題であるフジツボを切り口に海をデータ化していくことで、海に関わるすべての産業をアップデートする「株式会社シーテックヒロシマ」が、2021年6月1日に設立。
・同社が独自開発する「フジツボ除去システム」では、画像解析技術とエッジコンピューティングを搭載した自立制動型の水中ドローンが、海中構造物に付着したフジツボの幼生が自らを石灰化・固着する前に除去してくれる。
・また早期除去の前段階として、青色発光ダイオードやマイクロバブル等を活用した完全に自動化されたシステムを運用することで、付着を防ぐ防着技術の開発にも取り組む。
LoveTechポイント
夏の風物詩の一つであるフジツボが様々な課題を引き起こす存在だということは、多くの人が知らない事実なのではないでしょうか。
課題解決のソリューションはもちろん、それに伴うフジツボ問題の啓発にも期待したいところだと感じました。
編集部コメント
海の共通の課題であるフジツボを切り口に海をデータ化していくことで、海に関わるすべての産業をアップデートする「株式会社シーテックヒロシマ」が、2021年6月1日に設立された。
これは、広島県主催のアクセラレーションプログラム”HIROSHIMA SANDBOX D-EGGS プロジェクトに参加していた有志団体「チーム 海が好きじゃけぇ」のメンバーが中心となっている。
同社の主なサービスは、フジツボの除去システムである。
フジツボは春先~夏にかけて成長する海洋生物で、岩場などで良く見かける身近な生き物だが、海水浴の際に足を切ったりすることのほか、実は様々な悪影響を及ぼしているという。
例えば、フジツボには一度くっつくとはがれにくく密集して生息するという特徴があり、船底に付着すると重量や水流抵抗の増加により船舶の航行が妨げられ、燃費が低下するとともに、二酸化炭素ガス排出量が増加することになる。
また、養殖網などに付着した場合は、網の目が塞がれて海水交換量が低下するので、細菌や寄生虫などの繁殖による魚の病気が増加し、魚体表面への損傷なども引き起こすことから、漁作業の負担を増やし、また漁獲量も減らしてしまうことになる。
さらに工場や船などの冷却装置を塞いでしまうこともあり、ブラックアウトや運転停止など、大きな被害にもつながっているという。
国内におけるフジツボの被害総額はおよそ1,000億円にのぼると言われており、イガイやヒドロ虫といった他の海洋付着生物と合わせて「汚損生物」とも呼ばれている状況だ。
従来の洗浄作業はダイバーが目視で確認してすべてを手作業で行っているが、非効率である上に対応漏れも発生しやすい。
そこでシーテックヒロシマでは、独自開発する「フジツボ除去システム」により、フジツボ被害の課題解決を目指している。
同システムでは、画像解析技術とエッジコンピューティングを搭載した自立制動型の水中ドローンが、海中構造物に付着したフジツボの幼生が自らを石灰化・固着する前に除去してくれる。
また同社では、早期除去の前段階として、青色発光ダイオードやマイクロバブル等を活用した完全に自動化されたシステムを運用することで、付着を防ぐ防着技術の開発にも取り組むなど、未病ならぬ未着段階でのソリューションも模索しているという。
SDGs目標の14番目に「海の豊かさを守ろう」というゴールがあるが、これに対するアプローチとして「フジツボの除去」に特化したテックソリューションを提供している点が、非常にユニークだと感じる。
まだ設立されたばかりの法人ではあるが、着目点が面白いということもあり、引き続き動向を注視していきたい。