記事の要点
・有機JAS菌床キノコメーカーであるハルカインターナショナルが、キノコ菌を原料とするこの人工皮革の生産を検討開始。ビジネスミーティング参加企業の呼びかけをスタート。
・2022年中には、試行原料の供給を開始、素材化に関するメンバー企業群と研究開発作業を進めて、商品素材への活用に挑む想定。
・食用キノコの栽培や栽培技術については、日本や中国など東アジア地域が古来より欧米に先行してきたが、キノコ菌をサスティナブルな素材として位置付けて新事業分野を拓いている海外の動きには遅れを取っているのが現状。
編集部コメント
近年、再生可能で環境負荷が低い特徴などから注目を集めている「キノコレザー」。
キノコ菌を原料とするこの人工皮革であり、「マッシュルームレザー」「ヴィーガンレザー」とも呼ばれているものだ。
海外では10年ほど前から注目されている新素材だ。米国などのベンチャー企業はこぞって素材生産を始めており、世界的なファッションブランド「エルメス」や、大手スポーツ品メーカー「アディダス」も高級バッグやシューズ商品での活用を進めている。
ご存知のとおり、ファッション業界においては高級毛皮がアニマルウェルフェア(動物愛護)に反するとして敬遠されているのだが、人工皮革についても同様で、原料が原油由来で再生利用ができないものについては、サステナビリティの観点から指摘されるようになってきている。
そこで注目されているのが、キノコ菌由来の人工皮革。アンレザー(非動物性皮革)であることはもちろん、耐久性においても優れているとの観点から注目度が高まっているのだ。
一方で、この領域における日本のプレゼンスは決して高くないのが現状。食用キノコの栽培や栽培技術については、日本や中国など東アジア地域が古来より欧米に先行したわけだが、キノコ菌をサスティナブルな素材として位置付けて新事業分野を拓いている海外の動きには、遅れを取っているのだ。
そんななか、日本におけるキノコレザーの開発を進めようとする会社の一つが、有機JAS菌床キノコメーカーである株式会社ハルカインターナショナルだ。
同社は国産キクラゲのトップメーカーであり、その他にもシイタケやキヌガサタケなど、計8種類のキノコで有機認証を獲得している。独自の生産技術を活用して希少なキヌガサタケの人工栽培に成功している他、菌床キノコの有機栽培と太陽光発電を組み合わせたソーラーシェアリング事業を2022年春から開始する予定など、キノコにまつわる様々な取り組みを進めている企業だ。
そんなハルカインターナショナルでは、キノコを栽培する菌床の材料に、近在で採取した「広葉樹」を自社でおが粉にして使用。あまり用途のない雑木と呼ばれる広葉樹だが、おが粉の生産のための定期的な伐採によって樹木自体の萌芽更新を促すことができ、健全な森林環境づくりに寄与しているという。
菌床自体にも化学薬剤・添加剤、農薬は使っておらず、不用になった菌床は堆肥商品として活用しているため、同社のキノコは「循環型素材」の特色も併せ持っているわけだ。
そんなサステナブルな仕組みで生成されるキノコを使って、同社はレザー業界への参入を探っている。開発にはグループ会社の合同会社清流日本がメインとなって取り組んでおり、今後の事業化にあたっては、前述したソーラーハウスを活用した大規模生産が検討されている。ハウス内の暖房・冷房などに自然再生エネルギーが活用され、天候や季節に左右されやすいオーガニック栽培のハンディを解消できる見込みだ。
このキノコレザーの開発に先立って、2021年12月10日には事業化に向けたオープンなビジネスミーティングを開催する予定とのこと。関連企業の参加を想定しているが、大学など研究機関や行政・団体などからの参加希望が増えれば、別途、産官学で構成する協議会(コンソーシアム)の立ち上げも検討するという。(参加は清流日本のお問い合わせフォームから)
メンバー企業群が固まり、定期的に打ち合わせを進めていった上で、2022年中にはハルカ社から試行原料の供給を開始して、素材化に関するメンバー企業群が研究開発作業を進めて、商品素材への活用へと進める想定とのことだ。
今年9月には『素晴らしき、きのこの世界』という映画も公開され、素材としてだけでなく存在自体が注目されている「キノコ」。
皮素材としての魅力が、そのまま国内で具現化する日も近いのかもしれない。