てんかん臨床現場に即した患者&家族向けアプリ「nanacara(ナナカラ)」、9月サービス開始予定

医療/福祉

※2020.3.20追記:スマホアプリ「nanacara」が正式リリース。iOS版およびAndroid版両方にて提供開始。

iOS版はこちら。Android版はこちら

 

LoveTech Media編集部コメント

てんかん患者と家族会、てんかん専門医で構成するSachi Project(サチプロジェクト)と、 ノックオンザドア株式会社が、てんかん患者と家族向けのアプリ「nanacara(ナナカラ)」を共同開発し、9月からサービス提供を開始すると発表した。

 

そもそも、「てんかん」という病気をご存知だろうか。

 

世界保健機関(WHO)でてんかんは「脳の慢性疾患」とされており、「脳の神経細胞に突然発生する激しい電気的な興奮(原文では「過剰な発射」と表現)により繰り返す発作(てんかん発作)を特徴とし、それに様々な臨床症状や検査の異常が伴う」と定義されている、病児・障害児に罹患者の多い疾患である。

 

どういうことかというと、我々の体をつくっている細胞には全て電気的流れが存在しており、脳の神経細胞についても、本来は規則正しいリズムでお互いの調和を保ちながら電気的に活動している。

しかし、ここにてんかん発作が起こると、この穏やかなリズムを持った活動が突然壊れていき、激しい電気的な乱れ(ニューロンの過剰な放電)が生じることになる。

 

故に、てんかん発作はよく『脳の電気的嵐』と例えられることがある。

 

てんかん発作には大きく二つ、脳のある部分から始まる「部分発作(焦点発作)」と、発作のはじめから左右の脳全体が「電気の嵐」に巻き込まれ意識が最初からなくなる「全般発作」がある。

 

また、てんかんそのものは、「部分てんかん(局在関連てんかん)」、「全般てんかん」に大きく分けられ、さらに発作を引き起こす原因によって特発性(明らかな脳の病変が認められない場合)と症候性(明らかな病変が認められる場合)に分けられる。中には、部分てんかん(局在関連てんかん)か全般性てんかんかを決められない「分類不能てんかん」もあるという(参考:公益社団法人日本てんかん協会)。

 

このてんかんのある人は、100人に一人の割合でいると言われており、日本全国にはおおよそ100万人が推定されている。さらに一生の間に1回あるいは数回だけしか発作をおこさないようなてんかん周辺群も含めると、その数はおおよそ人口の 5%にものぼると言われている。

 

つまり、てんかんは皆さんの想像以上に身近な病気であり、その症状や原因は個人によってグラデーションの幅があるものだと言える。

 

てんかんは、発作を抗てんかん薬でコントロールするのが一般的であり、治療や創薬のためには、薬と発作の詳細な記録が重要になる。

 

「いつ発作が起こったのか?」「発作はどのくらいの時間続いたのか」「その時に服薬した薬は何か?」といった詳細データは、患者や家族が工夫しながら記録するのが通例であった。

 

だが、発作は突然起こるもの。

 

患者の対応に追われながら正確なデータを取ることは極めて困難であり、患者とその家族にとって大きな負担のひとつであった。

 

このような背景からnanacaraアプリ開発の企画が誕生した。

 

Sachi Projectメンバーが 1 年間にわたって、19家族50人との綿密なディスカッションを重ねて開発を進めてきたものだという。

 

また、Sachi Project発起人の本田香織氏自身もてんかん患児の母であることから、同氏の経験も反映させる形で、患者主体型で臨床現場の実態に即したアプリとして開発している。

 

機能としては、大きく3つ。

 

まずは、治療経過や薬の処方記録の管理。

 

診療明細書や薬局から渡される調剤明細書をアプリ経由で写真撮影することで、その内容を自動的にデータ化して保存してくれる。

 

いちいち手入力したり、紙管理する必要がなくなる。

 

次に発作時の記録。

 

てんかん発作は、その内容が人によって大きく変わることから、どのような発作状況だったかを正確に担当医師に伝える必要がある。

 

nanacaraでは「発作記録」画面にて動画撮影が可能となっており、てんかん発作時間が何分であったかを自動タイマーで記録しながら、後から動画で状況チェックが可能なように設計されている。

 

また、画面内に任意のメモも残せるので、当時のあらゆる所感・雑感等を残しておくことも可能だ。

 

そして最後が、日々の成長記録。

 

毎日の体調や薬の服用状況をスタンプで記録できるほか、写真をアップロードして日記のように患者の日常生活記録をつけることができる。

 

中長期的には、アップロードされた写真を学習し、患者の顔を識別して、笑顔の割合や顔色を判断し、患者の体調を自動算出・記録していくAI機能も実装予定だという。

 

患者の体調について、患者家族による手動入力とAIによる自動入力の両輪で管理されることで、医師等の第三者がより客観的でパーソナルな経過を把握することが可能になる想定だ。

 

他にも、入力した情報を家族内で共有できる仕様になっているなど、てんかん患者をもつ家族のニーズに細かく寄り添った設計がなされている点が、非常にLoveTechであると感じる。

 

てんかん患者や家族が深く関わる協働運営型アプリとして、てんかん患者に関わる方は、ぜひ 9月リリース予定のnanacaraアプリを利用されてみてはいかがでしょう

 

以下、リリース内容となります。

LoveTechMedia編集部

「”愛”に寄りテクノロジー」という切り口で、社会課題を中心に、人々をエンパワメントするようなサービスやプロダクトを発信しています。

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