記事の要点
・米Appleと米Googleが4月10日(現地時間)、Bluetoothを活用して、iOSおよびAndroidの両OSで起動する「COVID-19感染者と濃厚接触した人の追跡技術」を共同開発することを発表。
・ユーザーによる明示的な同意の必須化や、個人を特定できる情報やユーザーの現在地データを収集しないなど、「プライバシーとセキュリティを設計の中心に据える」ことを強調。
・まずは2020年5月に、AndroidとiOS間の相互運用を可能にするAPIをリリースし、並行して数カ月以内に、各国の公衆衛生当局提供のCOVID-19公式アプリにAPI含めた機能を組み込むことで、濃厚接触した人の検出・追跡レベルを劇的に向上させる予定。
LoveTechポイント
netmarketshare.comの世界OSシェア調査によると、Androidが約71%でiOSが約28%(2020年3月データ)となっていて、今回の発表は社会的インパクトが非常に大きいと言えるでしょう。
産官学マルチステークホルダーによる連携エコシステムを促進させるべく、互いの巨大なプラットフォームをコラボさせる点が、LoveTechだと感じます。
編集部コメント
新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)が世界中で猛威を振るう中、その感染拡大防止に向け、普段はなかなか交わることのないテックジャイアント2社によるコラボが、4月10日(現地時間)に発表された。
米Appleと米Googleが、Bluetoothを活用して、iOSおよびAndroidの両OSで起動する「COVID-19感染者と濃厚接触した人の追跡技術」を共同開発するという。
Googleがアップしている説明資料によると、具体的な流れはこうだ(画像は資料より引用)。
まず、特定の距離内に接触した人同士のスマホが、特定不可の識別キーを交換する。たとえ数分程度の会話であっても、接触ログとして残ることになる。資料では、初めて出会った男女がベンチで10分ほど会話をしている間に、互いのスマホがBluetoothを通じて識別子を記録している様子が描かれている(上画像左サイド)。
その数日後、男性サイドがCOVID-19に感染していることが判明したとする。男性は、公衆衛生当局からのアプリに診断結果を入力するのと並行して、自身のスマホに蓄積された過去14日間の接触端末識別キーをクラウドにアップロードすることになる。もちろんこれは、男性がアップロードに合意した場合にのみ行われることになる(上画像右サイド)。
一方女性は、数日前に10分程度会話した男性がCOVID-19に感染した事実など知る由もなく、日常生活を過ごしている。だが彼女のスマホには、自分の地域でCOVID-19陽性反応のあった人の全識別キーが定期的にダウンロードされており、そこから当該の男性識別キーとの接触履歴が明らかになった(下画像左サイド)。
すると、女性のアプリ上に「最近、COVID-19検査で陽性となった人に接触しました」というメッセージが表示され、今後行うべきこと等が公衆衛生当局のアプリまたはウェブサイトから提供されることになる(下画像右サイド)。
ここで両社が強調するのが、「プライバシーとセキュリティを設計の中心に据える」という点。以下の事項を前提に機能開発していくという。
- 明示的なユーザーの同意が必要
- 個人を特定できる情報やユーザーの現在地データを収集しない
- 識別キーリストが自身のスマホから出ることはない
- 陽性と判定されても、他ユーザーやGoogleまたはAppleには識別されない
- 収集された情報は、公衆衛生当局によるCOVID-19パンデミック管理の接触追跡にのみ使用される
- AndroidとiOS(iPhone)、どちらでも機能する
両社CEOもTwitterでコメントを投稿しており、いずれも、個人のプライバシーへの厳格な取り扱いと配慮に言及していることがわかる。
Contact tracing can help slow the spread of COVID-19 and can be done without compromising user privacy. We’re working with @sundarpichai & @Google to help health officials harness Bluetooth technology in a way that also respects transparency & consent. https://t.co/94XlbmaGZV
— Tim Cook (@tim_cook) April 10, 2020
To help public health officials slow the spread of #COVID19, Google & @Apple are working on a contact tracing approach designed with strong controls and protections for user privacy. @tim_cook and I are committed to working together on these efforts.https://t.co/T0j88YBcFu
— Sundar Pichai (@sundarpichai) April 10, 2020
機能開発のマイルストーンとしては2ステップを予定。
まずは2020年5月に、AndroidとiOS間の相互運用を可能にするAPIをリリースする。これによって、いずれのスマホ端末ユーザーであっても、上述の識別キー交換等ができるようになる。
またこれと並行して、今から数カ月以内に各国の公衆衛生当局提供のCOVID-19公式アプリにAPI含めた機能を組み込むことで、濃厚接触した人の検出・追跡レベルを劇的に向上させるという。
現在、世界中の主要な公衆衛生当局や大学、NGO等がオプトイン型の連絡先追跡技術を開発しているので、それらと幅広く連携していくというわけだ。まさに、産官学マルチステークホルダーによる連携エコシステムを促進するLoveTechな取り組みである。
なお、両社は今回の発表に伴い、その技術仕様書ドラフト版PDFも併せてリリースしている。
上段左)接触追跡-Bluetooth仕様書、上段右)接触追跡-暗号化仕様書、下段左)接触追跡-フレームワークAPI仕様書(Apple)、下段右)接触追跡-フレームワークAPI仕様書(Google)
今回のコラボ発表によって、COVID-19との“共存”に向けた世界構築が加速することを期待したい。
以下、Appleによるリリース内容(原文)となります。