記事の要点
・「ルナルナ」等を展開するエムティーアイが、低用量ピルの意識調査「Shift P白書2021」を公開。
・本調査は、同社とメディパルホールディングスが2019年より行っている、月経困難症の治療方法のひとつである低用量ピルの服薬を支援するプロジェクト『Shift P』の活動の一環として実施。
・ピルの服薬経験者をはじめ女性のリアルな声を届けることで、月経困難症に悩む人の参考やピルの正しい知識の啓発、そして女性の健康課題に対する社会の意識・イメージを変えるきっかけとなることを目指す。
編集部コメント
昨今、女性特有の健康課題として取り上げられることが多い「月経」。
総務省統計局人口推計(2012年10月1日時点)によると、月経中に激しい痛みなどの病的症状がある「月経困難症」を患う患者は、国内に推定800万人以上にもなるという。
有効な治療方法のひとつに低用量ピル(※)(以下、ピル)があるが、「避妊のためのもの」「副作用が辛い」というイメージが強く、社会における理解にはまだ改善の余地が多いのが現状と言えるだろう。
※合成された卵胞ホルモン(エストロゲン:E)と黄体ホルモン(プロゲスチン:P)の2つのホルモンが含まれたEP配合剤で、エストロゲンの量が50㎍未満のもの。
そこで、女性のための健康管理アプリ「ルナルナ」などを提供する株式会社エムティーアイが、株式会社メディパルホールディングスとの協業により立ち上げたのが、ピルの服薬を支援するプロジェクト『Shift P』だ。
プロジェクト名にある「P」には様々な意味が込められており、“Pill(ピル)”のイメージを変えていきたいのと併せて、Period cramps(生理痛)やPMS(月経前症候群)、PMDD(月経前不快気分障害)などといった、様々な「P」の概念を「悩まないもの」へ変化させていきたいという想いが込められているという。
前述の通り、偏ったイメージなどから、有効な手段であるにも関わらずピルの服用は進んでいない。実際に、ルナルナが実施した調査の結果によると、生理痛やPMSなどの症状が仕事に影響していると感じている人が86.7%もいる一方で、ピルの服薬経験者は32.0%。現在服薬中という人は12.2%にとどまっていることが明らかになった。
服用しない理由としては、偏ったイメージや副作用の心配のほか、受診への負担や抵抗、効果を知らない、などがあるという。また、いざ服薬を開始しても服薬初期に起こりやすい吐き気や頭痛などの症状により、自己判断で服薬をやめてしまう患者も多いとのことだ。
ただ、これらの症状は服薬開始後2〜3ヵ月で収まることが多いとされ、それを乗り越えた先の効果を感じて服薬し続ける人も多く存在している。
今回、Shift Pでは新たにピルに関する意識調査を実施し、その結果を「Shift P白書2021」として公開。Shift Pプロジェクトサイトおよびルナルナなどでの実施により、6,000名以上の女性が回答した結果が集約されている。
まずもって「現在、生理痛やPMSについて悩みがあるか」という設問には、78.5%の人が悩みを感じていると回答。生理痛が婦人科系疾患につながる可能性があることについては66.9%が理解していると回答する一方で、解決策として婦人科など病院への受診は5.7%にとどまり、1割にも満たない結果となった。
またピル服薬経験者については、「現在、服薬している」(15.0%)「以前は服薬していたが今は服薬していない」(25.9%)を合わせると40.9%。ピルの服薬を支援する機能を提供しているルナルナのユーザーにおいても、全体の半数弱となっている。
ピル服薬未経験者のピルに対するイメージについての調査もあり、「避妊のためのもの」(69.5%)という回答が最も多く、続いて「重い生理痛の軽減ができる」(60.0%)、「生理不順の改善ができる」(54.4%)と続いている。
2019年に実施した別のアンケート調査(※)における、「重い生理痛の軽減ができる」が36.7%、「生理不順の改善ができる」が33.5%と比べると、避妊目的だけでなく、月経困難症などの改善にも有効であるという理解がこの2年で大きく広がってきてるという結果となったわけだ。
※『ルナルナ』による、ピルのイメージに関するアンケート実施 期間:2019年9月10日から9月13日。調査対象:10代から50代以上の女性5,402名 (服薬未経験者の声のみ抜粋)
ピル離脱の課題に対しては、副作用や費用面の不安が大きいとの結果が調査で明らかになってはいるものの、現在はピルの種類も増え、自身にあった薬を選ぶ選択肢も広がりつつある。また費用面や医療機関への受診などの負担については、ジェネリック医薬品やオンライン診療などを活用し、カバーできる点もある。
本調査では他にも、医師への期待や新型コロナウィルス流行における変化、オンライン診療の活用状況についてもまとめられており、最後は「生理痛やPMSが辛いと感じたら我慢せず、ピルの服薬も選択肢のひとつとしてとらえ、まずは婦人科に相談することから始めてほしい」と締めくくられている。
月経に困難を抱えている場合、それが当たり前となってしまっていることも多く、病気と疑って受診するまでのハードルは高いのかもしれない。今回の調査のように、実際に当事者である女性の声を知ることで、ピルをはじめとする様々な改善策について、正しい理解と活用が進むことを期待したい。