これからは「与える人」が幸せになる時代、令和時代の“シェア”談義 〜SHARE SUMMIT 2019レポート《後編》

イベントレポート

人間にとって、合理的であることばかりが必ずしも幸せではない

佐々木氏:「シェアリングエコノミーの巨大プラットフォーム化」って、すごく重要なテーマですよ。

例えばAirbnb。当初はものすごくコミュニティ感のあるサービスだったけど、大きくなるにつれて、どこかでビジネス化が起きていったわけです。

どんどん儲けようとするユーザーが出てきたんですが、そういうのを排除できるかというと、排除できない。なぜならそっちの方が儲かるから。

確か英語版『WIRED』に、GAFAみたいなプラットフォームと、起業家スピリットの関係について言及した記事が載っていて、それが面白かったです。

つまり、Facebookみたいなのは解体した方が良いのではないかと。

アメリカでは、常に古い企業は撤退していき、その後にマイクロソフトやグーグルといった、新しい企業がのし上がっていく。そのリフレッシュされるサイクルにこそ、米企業の強さがある。

でも今は、GAFAがどんどん巨大化して強くなっていくばかりなので、産業としての強みがなくなるのではないか、という警鐘を鳴らしていました。

一方で今のGAFAは、巨大化することでデータが集約され、AIが駆動しやすくなるという仕組みで回っています。つまり、巨大化はもはや“宿命”なんです。

巨大化していくことと、それによってアントレプレナーシップが失われ、同時にシェアリングエコノミーが持っていたコミュニティ機能が失われていき、どんどんビジネスライク化していってしまう。

この矛盾を、我々はどうやって解決するのか。

今出てきたように、小さなコミュニティを少しずつ作っていって、それが横断的に世界を覆う、という方向はありなのかなと思います。

プラットフォーム的に水平展開している企業と、特定の文化圏に垂直に刺さっていく企業。

この2つが並存していく可能性はあるかなと。

津田氏:みんな、“AI疲れ”していくと思います。

巨大化していくほど、本当に合理的で最適なものを引き出していくだけになっちゃう。

人間にとって、合理的であることばかりが必ずしも幸せではないですよね。むしろそうでないものが刺さるケースもかなりありますし。

高木氏:なのでシェアには、効率化じゃない側面とコミュニティがあると思います。

例えばアメリカで開催される「バーニングマン」。あれとかもう、他とは分断されてる場所で、みんなお金を使わずに、究極のシェアが行われる。

佐々木さんのおっしゃる垂直的なものは、結構ローカルになっていくと思います。

あえて壁を作って、コミュニティになっていって、その中で異常なほどのシェアが行われる。

そういうのがたくさん出てくるのではないかと。

欧州で勃興するプラットフォーム・コーポラティズム

石山氏:今年8月にヨーロッパに行ってきましたが、まさに巨大化・効率化を拒むプラットフォームとして、「プラットフォーム・コーポラティズム」という運動が出てきていました。

例えば「WhereBnB」という、個人組合型の地域でしか使えない非営利プラットフォームができていたりして、小さなコミュニティの中でシェアリングを徹底的にやっていくのが、ボコボコ生まれてきています。

こういったものにスケーラビリティはないのですが、色々なファウンダーと話して感じたのは、めちゃめちゃ“思想”を持っているということ。

「俺たちのこれが、幸せのスタンダードだ」と、すごくはっきりという人が多かったですよ。

佐々木氏:そもそもですが、「巨大プラットフォームがAIを駆使して、効率化がいき過ぎている」というのは、少し考え方が古いです。

例えばSpotifyを使ってみると、全く知らないけど好きそうな曲をリコメンドしてくれるわけです。

今のAIは、セレンディピティのような、“気づき”を与えるところにまできているわけです。つまり、実は私たちの生活をより豊かにしてくれる可能性を秘めているもの、と言うのは、大前提としてあるんですよ。

それともう一つ。

確かに閉じたコミュニティを小さくやっていくのは素晴らしい考えだとは思うんだけど、一方で「小さいコミュニティになればなるほど、より抑圧に転ずる」という問題もありますよね?これをどうするかを考える必要がある。

コミュニタリズムは排外を生み、また同調圧力が強すぎて、中にいる人たちが息苦しく感じてしまう。

小さなコミュニティの連続体みたいなものと、大きな社会がどうやって滑らかにつながるかを、もっと考えなければいけません。

高木氏:今って、巨大プラットフォームが個人単位のアカウントになっちゃってるから、コミュニティが育ちにくい構造があると思っているんですよ。

イメージとしては、Facebookグループがコミュニティになっていかないのと同じ問題。究極は友達数の最大化に向かっちゃうんで、コミュニティを蓄積していこうって動きにならないんですよね。

個人の最大化とプラットフォームがいい具合で共伴関係になっていて、結果としてコミュニティを破壊していく構造になっている。

これが、もう少し中間的になるプラットフォームも出てくるだろうし、ローカルに紐ついて、新しいリテールになっていくのかなーとは思います。

「幸せ」や「孤独」という指標は、あいまいで難しい

石山氏:ここで、もうちょっとミクロな視点に入っていきたいと思います。

コミュニティの中において、個人の視点から見た、これからの価値観や考え方について。シェアが普及した社会では、豊かさや幸せの定義がどう変わっていくのか、そしてどう捉えていくべきなのか、について話したいと思います。

高木氏:さっき出てきたGDPですが、これって「人口増加している国」には良い指標だと思っています。

一方でヨーロッパとか見ていると、脱炭素化とか、GDP以外の指標を重視し始めてますよね。そういったアジェンダセッティングが、めちゃくちゃ上手いなと思うんです。

日本もアジェンダセッティングが上手くなっていく必要がある。なぜならGDPで勝負していったら負けてく一方だから。どんどん自信を失っちゃいます。

今強くて弱くなっていく指標よりも、今弱くてこれから強くなっていく指標を掲げた方が良くて、その方が国民の幸福度が絶対に上がると思います。

その一つが、「つながり数」かなと。

社会関係資本って、日本はすごく低いと言われていて、だからこそそういうものを増やしていくことが幸せになっていく、という文脈を作っていくことが大切だと考えています。

なかなか難しいんですけどね。

佐々木氏:「幸せ」って、その指標自体があまりはっきりしないんですよね。

例えば中国の社会監視システムを考えたときに、僕たちからしたら息苦しい!って思うじゃないですか。

でも向こうの30代女性に感想を聞いてみると、例えば信用度が高い人がゲートを優先通過できたりするといったことについて、「普通の国だとお金持ちが優先されるけど、わが国では善行を積んでいるかどうかで優先される。そっちの方が幸せじゃないですか?」って言うわけです。

確かに、そうだなと。

だから、豊かさとはなんなのか?幸せってなんなのか?をもう一回立ち止まって考えねばならないですよね。

高木氏:別の見方になりますが、「寂しい」ってのが人間の基本コンセプトだと思うんです。豊かさや幸せの形は色々な形があると思うけど、その逆は実にシンプル。

佐々木氏:「孤独であるか」って指標自体も、また難しい。

ある特殊清掃員のブログで、おじいさんがお風呂に浸かったまま亡くなった時のことが書かれていました。

おじいさんは携帯電話を掴んでいたそうなんですが、どうやら孫の声を聞きながら死んでいったようだと。

「外形的には孤独死だけど、本当に孤独死と言えるのだろうか」と書いてあって、そうだよなと思ったんです。

人間の幸せ感って、もう少し曖昧じゃないですか?我々は、そこをどう考えるのか。

高木氏:物理的に一人だから孤独、ってわけじゃないですよね。もうちょっと精神的なものとか。

佐々木氏:例えばFacebookで、誰かれ構わず友人承認して、友人数が数千人になってる人がいるじゃないですか。

あれって幸せなの?

高木氏:拠り所になる人間関係じゃなきゃダメだと思うし、そう言う人たちって、つまりは孤独を感じてるんじゃないかとは思います。

石山氏:拠り所が宗教、みたいな国もありますよね。

例えばこの前フィジーに行ってきたんですが、現地ではキリスト教がしっかりと根付いていました。自分は何のために生まれて何のために存在しているのかを、毎日肯定しながら祈っているわけです。

佐々木氏:勝手に人のTシャツ着てるしね。人の家でご飯食べたりね。

高木氏:それは、コミュニティが濃いからそうなってるんですか?

石山氏:いや、本当に知らない人(笑)

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長岡武司

LoveTech Media編集長。映像制作会社・国産ERPパッケージのコンサルタント・婚活コンサルタント/澤口珠子のマネジメント責任者を経て、2018年1...

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