子どもの笑顔につながる保育コミュニケーションをデザインする「キッズリー」《後編》

インタビュー

 保護者と保育園をつなぐコミュニケーションサービスとして、保育現場の労働改善と子育てを、より豊かにすることを目指しているキッズリー。

 前編では、株式会社リクルートマーケティングパートナーズ「キッズリー」事業責任者である森脇潤一(もりわき じゅんいち)氏へお話を伺った。

 後編でも引き続き同氏に、キッズリーの具体的な機能とそれを開発するに至った背景、そして今後の展望について伺った。

》前編記事はこちら

 

キッズリーサービスの最終受益者は子ども

--キッズリーには様々なプロダクトや付随機能がありますよね。最初からこのようなラインナップを想定されていたのでしょうか?

森脇潤一(以下、森脇氏):大枠の構想としては変わっていませんが、顧客に対して必要なものを必要な形で用意していったら、今のような製品シリーズになりました。僕らの事業ビジョンは、「未来を切り拓く子どもに笑顔を!」です。

子どもたちが幼い時から周りの大人たちに多くの愛情を受け、幸せにすくすくと育つ環境を作ることは非常に重要だと感じていて、そのために、保護者と保育園が協力して子育てができる環境を作ることをミッションとしています。

ですので、サービスの最終受益者は”子ども”なんです。子どもが幸せに成長するために、保護者を楽にしてあげ、保育者も楽にしてあげる。双方とも楽しく子育てできるようにしてあげることが、結果として子どもの幸せとして返ってきます。

こちらのカードにも、僕たちのミッションとビジョンを明記しています。

 

--すごい、カードでもご用意されているんですね。

森脇氏:キッズリーのチームメンバー全員が持っています。ビジョン・ミッションは事業構想当初から変わっていません。事業を通して我々は何を成し遂げたいのか、常に全員が意識出来るように今年の4月に作りました。

 

--ちなみに、裏には何が書いてあるのでしょうか?

森脇氏:裏は、キッズリーのクレド(※)を書いています。クレドはチーム全員、ボトムアップで創り上げました。日々の行動指針はトップダウンで決めるのではなく、メンバーの納得感がとても重要だと思います。メンバーの総意として、やはり真ん中には「オールフォーチルドレン」と宣言してくれています。

※クレド:従業員が心がけるべき企業の信条

 

--オープンに発信されていない内容を見せていただき、ありがとうございます。

 

多くの現場でICT化されていない現状

--次に各サービスについて伺いたいのですが、そもそも保育園の運営にはどのような課題があるのでしょうか?

森脇氏:例えば登園についてお伝えすると、朝、お母さんから「うちの子が今日お休みします」と保育園に電話があり、電話応対をした保育士さんがホワイトボードに欠席の旨を記載していきます。保育士はそのホワイトボードを見て、自分のクラスの子は誰が休みなのか把握する、という仕組みなんです。

大勢の園児を受け入れながらと考えると、相当煩雑で手間がかかりますよね。

 

--てっきりそこはICT化されているものだと思っていました。

森脇氏:多くの現場でICT化されていないのが現状です。

一方、キッズリーアプリを使うと、スマホボタン一つでお休みか遅刻、遅刻の場合は何時に来れるのか、といった情報を保育園に送ることができます。さらに保育士は、その情報を各クラスごとに一覧で確認することができます。集計もしていて、クラス全体で何人休みかということもすぐに確認できます。「電話をかける」「メモする」「それを確認しに行く」という物理的な手間が省けるわけです。

お迎えの時間も同じで、電話と紙で運用しているところがほとんどです。保護者と保育園、お互いに忙しい時間にこれらの無駄な作業を行うのではなく、アプリのボタンを押すだけで完了できる環境を整えています。

 

--だいぶ登降園時のオペレーションが楽になりますね。あと、キッズリー保育者ケア(以下、保育者ケア)も大きな反響を呼んでいますよね。

森脇氏:保育者ケアは保育士の離職をいかに防ぐかというところにフォーカスした、コンディション診断システムですね。

保育園の経営課題の一つに、”人材の採用と定着”があります。

保育士がひとり減ると、預かれる子どもの数も減ります。例えば1歳児は保育士ひとりに対して3人しか預かれない配置基準のルールがあるので、影響が大きいんですよね。

現状、市場として転職しやすいという背景もあり、保育士はすぐに新しい保育園へと職場を変わられる傾向があります。一方、保育士をひとり採用する毎に、数十万円というコストがかかっています。

この理由から、新規採用ではなく、今いる保育士がいかに長く定着して働いてくれるかという観点が、費用対効果と職場環境醸成の両面で重要と捉え、サービス開発しています。

 

現場の運営を仕組みでどう担保していくかが重要

--保育者ケアについて、2017年4月のリリース当初と、1年半経過した現在とで感じる効果や、逆に課題などはありますか?

森脇氏:非常に満足度高くお使いいただけていると感じています。

これまで保育士が何に悩んで辞めていってしまったのかずっと分からなかったのですが、僕たちのシステムを通じて、その原因を可視化することができました。それによって今までは気がついたら辞めていってしまった状況が、辞める前のタイミングで園長先生や周囲のメンバーがフォローし、対策を立てることができるようになりました。

離職率が去年の半分にまで落ちた、という保育園もあります。

 

--保育者ケアを使用されている保育士の方々の感想を貴社ホームページで読ませていただいたのですが、本当に求められていて、救いになっているサービスなんだというのが伝わってきて感動しました。

森脇氏:ありがとうございます(笑)

今までは、保育園の運営を「保育士の頑張り」に頼ってしまっていた部分が大きかったのだと感じています。

僕の母も保育士で、昔も今も多くの保育士の方と触れ合う中で、保育士の皆さんは優しくて責任感があるので、「頼むよ」って言われたら「がんばらなきゃな」っていう良心が働く。けれどこれからは、働いてくださる人の頑張りだけではなくて、仕組みとしてどう担保していくのかを考えていくことが重要だと思います。それは、園の関係者だけでなく社会全体で議論を深めるべきです。

 

懸命に努力されている保育園に寄り添いたい

--キッズリーがリリースされる以前に、保育園が何かしらITを使って業務効率化していた事例はあったのでしょうか?

森脇氏:僕の知る限り、業務レベルで導入していた事例は殆どなかったですね。

ただ面白いもので、キッズリーのリリースとほぼ同タイミングで、類似サービスが何個も出てきました。人が何かを思いつくタイミングって、だいたい同じってことかもしれませんね。

 

--他事業社と情報交換はされたりするのでしょうか?

森脇氏:同じサービスやビジョンを持たれる他社とはよくお話させていただいてますよ!マーケットとして3万以上の潜在顧客がいる中で、キッズリーはまだ1,000園ほどしか導入していただけていません。今はまさに過渡期なのです。うちとしては競合というより、その市場を一緒に盛り上げていってくれる共同プレイヤーみたいな意識でいます。

 

--なるほど。市場競争ではなく、市場共創ということですね。サービス提供者だけでなく、広く保育業界に興味のある方向けに、オープンセミナーも実施されていますよね?

森脇氏:スポット的に開催しているセミナーのことですね。昨年より「保育シンク」という対話型フォーラムを開催して、関係者同士で学んだり意見交換したりする場を設けています。また、「保育者ケアセミナー」という、実際にシステムをご利用いただいているユーザーにお越しいただいての事例交換会も実施していますね。

 

--特に興味を持たれた活用事例やお声はありましたか?

森脇氏:保育者ケアを、離職防止だけでなく次世代リーダー育成に使っている保育園がいらっしゃいました。園長先生ひとりが全員と面談するのではなく、将来の園長候補メンバーが保育者ケアを使って他従業員と面談をして、マネジメントのケーススタディとして活用するという使い方でした。

こういった想定外の使い方は嬉しいです。

 

--素敵な使い方ですね!勉強になります。それでは最後に、Love Tech Mediaの読者の皆様に一言お願いします。

森脇氏:子どもと保護者にとって本当に良い環境を作ろうと、懸命に努力されている保育園がたくさんあります。読者の皆さまも保育園にお世話になった方も多いと思います。僕たちはそんな保育園で働く皆さまに、少しでも寄り添っていけたらと考えています。社会全体でその機運を高めていくために一石を投じ続けたいです。

 

編集後記

近年のニュースでは、定期的に「保育士不足」の話題が取り上げられています。

 

正直に申して「この業界は崩壊するのではないか」とすら感じることもありましたが、今回のキッズリーさんのような民間事業者の熱い思いと取り組みを伺って、この業界もまだまだこれから改革していける、と感じました。

 

一人のパパの熱い思いが、保育業界をどんどん良くしていく経過を、Love Tech Mediaは引き続き注視して参りたいと思います。

 

なお、文中でも言及されたイベント「ほいくシンク」には、Love Tech Mediaも取材で参加させていただいたので、後日、そのレポートをお届けします。

 

キッズリー詳細についてはこちらをご覧ください

 

本記事のインタビュイー

森脇潤一(もりわき じゅんいち)

事業開発部 マネージャー

総合広告会社を経て2013年11月にリクルートマーケティングパートナーズに入社。新規事業提案制度「NewRING byRMP」2014年度グランプリを獲得。 以来、一貫してキッズリーの事業開発全般に携わる。

LoveTechMediaは、【恋愛/結婚】【妊娠/出産】【育児】【家族生活】【福祉】【社会課題】の6分野を「人の”愛”に寄り添うテーマ」と定義し、これらのテーマをテクノロジーで補完する「人とサービス」の情報(Intelligence)をお届けする、というコンセプトで運営しています。

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