最初の評価は散々でした
--次に、パパっと育児@赤ちゃん手帳を作られた背景について教えてください。
服部氏:もともとは妻の育児中の気づきからですね。ミルクや排泄の時間、その日のメモなど、ノートに記録していたんです。もっとIT化して効率よく記録できないものかと考えまして、色々とスマホアプリを中心に調べました。
育児記録をメモするアプリは他にありましたが、本当にメモするだけ。もっと育児項目ごとに記録しやすくしたものが欲しいと思い、最終的に自分で作ることに決めました。
--奥様のオペレーションが原体験だったんですね。最初にご自身のアイデアをお話された時の反応はいかがでしたか?
服部氏:育児記録を見える化しようというコンセプトでアプリを設計したんですが、「ちょっと違うかも」という感じでした。知り合いのママ達にもヒアリングしてみたんですが、気を使って回答をしてくれているのがありありでして、、、。ストレートに言うと、評価は散々なものだったなと(笑)。
--評価が散々だったと考えられたのはどうしてですか?
服部氏:育児記録の統計を可視化したら面白いでしょ、って感じで説明するんですが、全然ささらないんですよ。男性的だって。20人目くらいでしょうか。
「男性的な考えですね。でも、実際にグラフとか見れたら便利な気もするし、触ってもらわないとわからないと思いますよ。」と言ってくれた方が出まして、何割の人に支持してもらえるかわからないけど作ってみようと思いました。で、実際に触ってもらったら事前評価から一転、みんなグラフや統計を私以上に見ていたんですよ。使ってみてもらわないとわからないという言い方もできますが、聞き方が悪かったなと反省しています。「見える化、可視化」という言葉は、ママ達に寄り添ったキーワードではないなと。
それ以来、どうやって「リアルな声を聞き出すか」には細心の注意を払っています。
--今もユーザーさんからのフィードバックは開発の参考にされているんですか?
服部氏:もちろん、定期的にアンケートをとっていまして、新しい機能の反応を見たり、今後の改善のための大事な声として大いに参考にしています。
数億件の育児データ解析から見えたもの
--それにしても、30万人の方が育児を記録されていると、相当な量のデータになりますね。
服部氏:おっしゃる通り、育児のビッグデータが弊社のデータベースに溜まっています。データ量としては数億件以上に上りますからね。
他社にはない貴重でユニークなデータなので、昨年1月より国立成育医療研究センター研究所さんとの共同研究をスタートさせました。
弊社のビッグデータを解析することで、子どもの成長、発達、生活習慣の多様性など、育児の中でも様々な切り口での育児実態が解明できる、ということを期待しての共同研究です。
実際にほんの一部ですが、以下のような調査結果が出てきました。
■深夜の授乳はいつまで続くのか?
調査結果:2ヶ月頃(5〜8週)まで深夜授乳が特に多く、それ以降は徐々に減っていく
母乳のグラフ
ミルクのグラフ
■睡眠リスムが安定するのはいつ頃か?
調査結果:5〜6ヶ月ごろ(21〜24週)ごろになると睡眠リズムが安定し、夜の決まった時刻に眠るようになる
■赤ちゃんが成長しやすい季節ってあるのか?
調査結果:最も身長が伸びる季節は夏
--これは面白いですね!通常のアンケート調査では正確にわからないものばかりで、とても貴重ですね。
服部氏:そうなんです。昔から「子供は夏に身長が伸びやすい」と言われることがありましたが、0歳児の成長の季節差に関する研究は世界的にもありませんでした。弊社の育児ビッグデータを活用した今回の研究で、0歳児の成長にも季節が影響することがわかりました。こういったエビデンスを育児ビッグデータを用いて、これからも作っていきたいです。
--育児って、自分にとっては前例がないことなので、「これで正しいのか」という不安は常にあると思います。このような調査結果データがあることで、平均値から離れているのかそうでないのかが分かるのも、育児中のパパ・ママにとっては大きいですね。
服部氏:そういう指標として、ぜひ使っていただきたいと思っています。
これまでは主に入力いただいた文字データを溜めていっての解析だったのですが、今度は赤ちゃんの泣き声という「音声データ」を溜めていって、「この子はなんで泣いているんだろう」ということを可視化したく、この度「泣き声診断機能」をリリースしました。
--いよいよ泣き声が解析されるんですね。ぜひ詳しく教えてください!
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