Pairs×東大、産学連携で「偶然と必然の出会い」の仕組みを共同研究

インタビュー

 国内最大級の恋愛・婚活マッチングサービス「Pairs(ペアーズ)」を運営する株式会社エウレカが、恋愛・婚活ビッグデータ × AIで新たな取り組みをスタートした。東京大学 大学院情報理工学系研究科 山崎研究室と、マッチングアルゴリズムの共同研究開発プロジェクトを開始したという。

 Pairsといえば、日本でマッチングサービスが勃興した2012年からサービスを展開しており、2018年8月に累計会員数が800万人を突破、Pairsをきっかけに交際・入籍をした人数が2018年12月時点で少なくとも18万人を超えたという。名実ともにマッチングサービス業界を牽引する存在だ。Love Tech Media読者の周りにも、きっと「Pairs婚(Pairsで結婚すること)」の男女が身近にいることだろう。

 そんなマッチングサービス界の雄が、東京大学と共同研究開発を始めるという。この新たな産学連携の取り組みは、どのような背景と目的で始まったのだろうか。詳しくお話を伺った。

Pairs(ペアーズ)とは

 はじめに、恋愛・婚活マッチングサービス「Pairs」についておさらいする。解説いただいたのは、株式会社エウレカ 取締役CPO/CMOの中村裕一(なかむらひろかず)氏。

かけがえのない人との出会いを生み出し、日本、アジアにデーティング文化を定着させる。これが私たちのビジョンです。

 同社は2012年にPairsを国内リリースし、翌年2013年には台湾に進出、早くも2カ国での展開となる。その後順調にユーザー数を伸ばしていき、2015年には米国ニューヨークに拠点を置くIACグループへのバイアウトを発表、傘下のThe Match Groupがエウレカの発行済株式全株を取得した。そして2017年に韓国にも進出し、現在3カ国合わせて累計800万人以上のユーザー登録実績を誇る。

 使い方は非常にシンプル。アカウント登録し、条件で検索した一覧から気になる相手を選び、プロフィールを開いてチェック。いいなと思ったら「いいね!」を押し、お互いがいいね!を押し合うとマッチングが成立。マッチングしたもの同士がやり取りできるメッセージを重ね、ぜひ会いたいと思ったらリアルの場で会うことになる。

 Pairsを使う上で代表的な機能が「コミュニティ」だ。現在約10万件のコミュニティが登録されており、1人あたりの平均登録数が約22件という。趣味・ライフスタイル・価値観としてプロフィール上で表現でき、それぞれのコミュニティに所属しているお相手からも探すことができる。

 安心・安全への取り組みについても、同社は特に力を入れている。2018年2月に、業界では初となる、24時間365日オペレーター常駐でのカスタマーケア体制を、完全インハウス化したのだ。つまり、いつ何どき問い合わせをしても、エウレカ社員が直接問い合わせ対応してくれるのだ。

お客様からの声や課題をなるべく早くプロダクトに反映させるような体制にしています。また、どんな時でも質の高い対応を提供することで、お客様が不安に思ってしまう状況をできるだけなくすことを目指しています。

 今年9月にはHDI格付けベンチマークで最高ランクの三つ星を「問合せ窓口(Eメール)」にて獲得している。マッチングサービス業界に限らず、エウレカのカスタマーケアが高い評価を受けた証拠であると言える。

 このような企業努力もあり、Pairsで出会って結婚した男女の満足度は非常に高い。「現在の結婚相手に対して、やっぱり結婚するべきではなかったと感じますか?」という質問に対し、実に93%のPairs婚男女が「全く感じない」もしくは「それほど感じない」と回答している。

 他の出会い手法でもっともポイントの高い「合コン・街コン・婚活パーティー」の57%と比べると、段違いに満足度が高いことがお分り頂けるだろう。

偶然と必然、両方の出会いを創出

 次に、Pairs独自のアルゴリズムについて、株式会社エウレカ CTOの金子慎太郎(かねこしんたろう)氏に解説いただいた。

世の中の男女が交際相手を探さない理由について当社が独自に調査したところ、『好きな人がいない』『自分に合う人がわからない』『探し方がわからない』など、能動的に交際相手を探すことに自信のない人が多いことがわかりました

 ここで、従来のマッチングとPairsのマッチングの仕組みの違いについて確認したい。

 従来の婚活サイトやアプリで行われていたマッチングは、会員自身が設定した希望条件にマッチする相手を表示していた。例えば「20代(20歳〜29歳)、東京在住」という条件に合致した相手はしっかりと抽出されるものの、一つでも条件が合わないと、候補リストから外れてしまっていた。

 一方Pairsでは、上記のような希望条件だけでなく、相手のプロフィールから共通項を見つけて、マッチングを提案する。定量的な項目の一致だけでなく、「サッカー好き」のような定性的な項目についても、コミュニティの設定を通じてピックアップする。

 またお互いの共通項だけではなく、過去800万人以上の会員が残したビッグデータを元に、「これが好きな人は、こんな人もおすすめ」というような提案もしてくれるという。例えば上図の通り、散歩が好きな男性に対しては、カフェ好きの女性をレコメンドしてくれる、という具合だ。マッチング率の高い項目セットが、ビッグデータの解析からわかるという。

今回の山崎研究室との共同研究開発により、より多くのマッチング”切り口”と、その組み合わせから生まれる新たなレコメンドの創出を実現したいと考えています。恋愛・婚活における出会いに偶然と必然の両方を創出し、かけがえのないお相手と結ばれるチャンスを実現していきたいと考えています。

マッチングの予測から始める婚活へのAI活用

 次に、山崎研究室の研究分野と事例について、東京大学 大学院情報理工学系研究科 准教授の山崎俊彦(やまさきとしひこ)氏にお話を伺った。

 山崎研究所ではこれまで、魅力工学(Attractiveness Computing)という分野において、ビッグマルチメディアデータを用いた「魅力」の定量化、予測、解析、強化を行なってきた。

 例えばプレゼンテーションの印象や解析広告の「刺さる」度解析、SNSの人気度予測と強化などのマーケティング分野から、婚活、妊活、子育て・保育などのライフコースに即したテーマまで、幅広く研究領域とされている。

近年高齢化に伴い、高齢者層への福祉・医療支援などは手厚いかと思います。一方で、若年世代への支援が薄いと感じます。私たちは、若年世代にとっていかに生きやすい世界にするか、ということにミッションを持って取り組んでいます。

 上記のミッションを達成する一つの取り組みとして、今回のPairsとの婚活データを活用した解析プロジェクトをスタートしたという。

とはいえ、婚活領域での”相手の推薦”研究は難しい分野です

 こう語る理由は、データの数や質による。

 例えばAmazonやNetflixのようなプラットフォームと比較すると、利用者数こそ遜色ないものの、利用者一人あたりの活動量や消費量が圧倒的に異なるという。また、例えば一般的な消費財は色違いのものなど類似製品が複数存在するのに対し、マッチングサービス上の人物は唯一無二だ。同じ人間同士を比較する、という概念がそもそも存在しない。このような要因から、婚活領域の研究は難易度が高いという。

 マッチングサービスで成功するためには、何点かコツが必要だ。プロフィールをライバルより魅力的に演出し、できるだけ成功確率を上げるようにいいね!を送り、マッチング後のメッセージでは会いたくなるような会話をする必要がある。

 今回の取り組みではまず、いいね!の成功確率を上げるための研究として、Pairs上で飛び交った「いいね!」200万件のデータの解析結果をご紹介いただいた。

 160万件を学習し、残り40万件について「このいいね!はマッチングするか」というマッチング率を予測させた。その結果「いいね!返し予測精度」(※1)は、プロフィールのみの解析だと21%だったが、プロフィールと併せて活動履歴も解析すると36%まで上昇した。また「いいね!返し網羅率」(※2)も同様に62%から75%にアップしたという。

※1.いいね!返し予測精度: AIが、このいいね!は「いいね!返し」がもらえる、と予測したもののうち、ちゃんといいね!返しされた確率

※2.いいね!返し網羅率:テストデータ「いいね!」40万件の中で、「いいね!返し」があった数を100とした際に、AIによって「いいね!返し」されると予測されたものの正解確率

 今後研究を進めることで、この予測確率数値が上がっていく可能性が期待できる。そしてその先に、ユーザー一人ひとりの婚活がよりスムーズにいくべく、登録が望ましいコミュニティ情報の推薦やプロフィール情報の拡充支援、メッセージ時のチャットによるコミュニケーション支援などといったサービスにつなげていきたい、ということだ。

未だ発見できていない「出会いの切り口」を探して

 新たな取り組み発表となった会場では、登壇者3名によるトークセッションが執り行われた。以下、それぞれのコメントを要約してお伝えする。

山崎氏:研究の難しいオンライン婚活領域において、この分野で国内No.1の事業者と一緒に組むことで、幸せを作る技術を提供できると期待しています。

共同研究を進める上で、ユーザーのプライバシーに関わらない範囲内で、十分魅力的なのに自己PRが十分にできていない方への支援や、メッセージが苦手な方へのチャットによるコミュニケーション支援などを実現していきたいと考えています。

昨今の人工知能業界でトレンドとなっているディープラーニングやニューラルネットワークはこれまで、”認識”や”理解”の領域でその性能を発揮していました。でも最近では、”推薦”の領域でも活用できるのでは、と可能性を感じます。

従来のオンライン婚活における「条件絞り込み」だけでは巡り会えない相手との出会いを提供していきたいです。

 

金子氏:今回の研究では「マッチングの質向上」を大きなテーマとしているので、マッチング率はKPIにしていません。マッチング率をKPIにすると、質を放棄してしまうと考えています。

これまでPairsは独自で人工知能を使ったマッチングアルゴリズムを構築してきましたが、あくまで自分たちの中だけで完結していました。今回、東京大学様との取り組みを通じて、もっと学術的で開けたアプローチができると期待しています。

弊社の持っている800万人分の恋愛・婚活データの中で、まだ使えていない資産や切り口を生み出し、必然ではなく偶然の出会いを最大化して参りたいと考えています。

 

中村氏:冒頭に申し上げた通り、弊社は日本およびアジアにデーティング文化を定着させることをビジョンに活動しています。

大多数の出会いを求める方々が「使いたい」と思うようなサービスにすべく、不要な機能はそぎ落とし、必要な機能をなるべく使いやすいようにシンプルに実装するよう心がけています。

Pairs内での成功体験が口コミとなって、どんどん世の中に広がっていく。そんな世界を実現して参ります。

 

編集後記

何を隠そう、本記事筆者は奥さんとPairsで出会い、結婚しました。そんなマッチングアプリ世代の当事者として、今回の取り組みは、さらなる出会いの幅と可能性を広げる、まさにLove Techな取り組みと確信しています。

 

今年の5月、エウレカ様はPairsカップル総勢186名をモデル起用し、ブランド広告として素敵な動画を作成しました。

 

一昔前だと、マッチングアプリに対するグレーなイメージが先行してしまい、このようなプロモーション動画への顔出し出演は、おそらく実現しなかったことでしょう。

 

そう考えると、同社が進めてきた「日本およびアジアにデーティング文化を定着させる」ビジョンは、確実に達成に向けて進んできていると感じます。

 

今後の研究発表に大いに期待したいと思います!

 

『Pairs』詳細についてはこちらをご覧ください

 

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