Pairs×東大、産学連携で「偶然と必然の出会い」の仕組みを共同研究

インタビュー

偶然と必然、両方の出会いを創出

 次に、Pairs独自のアルゴリズムについて、株式会社エウレカ CTOの金子慎太郎(かねこしんたろう)氏に解説いただいた。

世の中の男女が交際相手を探さない理由について当社が独自に調査したところ、『好きな人がいない』『自分に合う人がわからない』『探し方がわからない』など、能動的に交際相手を探すことに自信のない人が多いことがわかりました

 ここで、従来のマッチングとPairsのマッチングの仕組みの違いについて確認したい。

 従来の婚活サイトやアプリで行われていたマッチングは、会員自身が設定した希望条件にマッチする相手を表示していた。例えば「20代(20歳〜29歳)、東京在住」という条件に合致した相手はしっかりと抽出されるものの、一つでも条件が合わないと、候補リストから外れてしまっていた。

 一方Pairsでは、上記のような希望条件だけでなく、相手のプロフィールから共通項を見つけて、マッチングを提案する。定量的な項目の一致だけでなく、「サッカー好き」のような定性的な項目についても、コミュニティの設定を通じてピックアップする。

 またお互いの共通項だけではなく、過去800万人以上の会員が残したビッグデータを元に、「これが好きな人は、こんな人もおすすめ」というような提案もしてくれるという。例えば上図の通り、散歩が好きな男性に対しては、カフェ好きの女性をレコメンドしてくれる、という具合だ。マッチング率の高い項目セットが、ビッグデータの解析からわかるという。

今回の山崎研究室との共同研究開発により、より多くのマッチング”切り口”と、その組み合わせから生まれる新たなレコメンドの創出を実現したいと考えています。恋愛・婚活における出会いに偶然と必然の両方を創出し、かけがえのないお相手と結ばれるチャンスを実現していきたいと考えています。

マッチングの予測から始める婚活へのAI活用

 次に、山崎研究室の研究分野と事例について、東京大学 大学院情報理工学系研究科 准教授の山崎俊彦(やまさきとしひこ)氏にお話を伺った。

 山崎研究所ではこれまで、魅力工学(Attractiveness Computing)という分野において、ビッグマルチメディアデータを用いた「魅力」の定量化、予測、解析、強化を行なってきた。

 例えばプレゼンテーションの印象や解析広告の「刺さる」度解析、SNSの人気度予測と強化などのマーケティング分野から、婚活、妊活、子育て・保育などのライフコースに即したテーマまで、幅広く研究領域とされている。

近年高齢化に伴い、高齢者層への福祉・医療支援などは手厚いかと思います。一方で、若年世代への支援が薄いと感じます。私たちは、若年世代にとっていかに生きやすい世界にするか、ということにミッションを持って取り組んでいます。

 上記のミッションを達成する一つの取り組みとして、今回のPairsとの婚活データを活用した解析プロジェクトをスタートしたという。

とはいえ、婚活領域での”相手の推薦”研究は難しい分野です

 こう語る理由は、データの数や質による。

 例えばAmazonやNetflixのようなプラットフォームと比較すると、利用者数こそ遜色ないものの、利用者一人あたりの活動量や消費量が圧倒的に異なるという。また、例えば一般的な消費財は色違いのものなど類似製品が複数存在するのに対し、マッチングサービス上の人物は唯一無二だ。同じ人間同士を比較する、という概念がそもそも存在しない。このような要因から、婚活領域の研究は難易度が高いという。

 マッチングサービスで成功するためには、何点かコツが必要だ。プロフィールをライバルより魅力的に演出し、できるだけ成功確率を上げるようにいいね!を送り、マッチング後のメッセージでは会いたくなるような会話をする必要がある。

 今回の取り組みではまず、いいね!の成功確率を上げるための研究として、Pairs上で飛び交った「いいね!」200万件のデータの解析結果をご紹介いただいた。

 160万件を学習し、残り40万件について「このいいね!はマッチングするか」というマッチング率を予測させた。その結果「いいね!返し予測精度」(※1)は、プロフィールのみの解析だと21%だったが、プロフィールと併せて活動履歴も解析すると36%まで上昇した。また「いいね!返し網羅率」(※2)も同様に62%から75%にアップしたという。

※1.いいね!返し予測精度: AIが、このいいね!は「いいね!返し」がもらえる、と予測したもののうち、ちゃんといいね!返しされた確率

※2.いいね!返し網羅率:テストデータ「いいね!」40万件の中で、「いいね!返し」があった数を100とした際に、AIによって「いいね!返し」されると予測されたものの正解確率

 今後研究を進めることで、この予測確率数値が上がっていく可能性が期待できる。そしてその先に、ユーザー一人ひとりの婚活がよりスムーズにいくべく、登録が望ましいコミュニティ情報の推薦やプロフィール情報の拡充支援、メッセージ時のチャットによるコミュニケーション支援などといったサービスにつなげていきたい、ということだ。

次ページ:未だ発見できていない「出会いの切り口」を探して

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長岡武司

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LoveTech Media編集長。映像制作会社・国産ERPパッケージのコンサルタント・婚活コンサルタント/澤口珠子のマネジメント責任者を経て、2018年1...

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