妊婦、ベビーカー利用者、視覚障がい者、聴覚障がい者、車椅子利用者、ヘルプマーク使用者、外国からの旅行者、そのほか身体の不自由な人たち。
ユニバーサルデザインが初めて提唱されて久しいにもかかわらず、街は未だに、万人に優しいつくりになっているとは言い難い。駅一つ見てみても、階段ありきの設計となっている古い路線では、車椅子に乗った方の行動範囲を極端に狭めている。また、ホームの設計は未だに改善の見通しが立っていない駅が多く、例えば視覚障害者にとっては、常に転落事故の危険にさらされている。
建物や設備などのハード対応に時間がかかるようならば、人々によるコミュニケーションというソフトで対応するべきだろう。
本記事では、テクノロジーを活用して社会の”やさしさ”をデザインする一般社団法人PLAYERSの取り組みについてお話を伺った。なんと、メンバー全員が本業をもちながら、PLAYERSの活動をしている。それにもかかわらず、大手企業とのコラボレーションによるプロトタイプ開発や実証実験を進めているという、”超”プロボノ集団なのである。
まず前編では、PLAYERSを主宰されるタキザワケイタ氏に、これまでの経緯や活動内容についてお話を伺った。
最強打線によるワークショップ実験が始まり
--まずは主宰されているPLAYERSについて教えてください。
タキザワケイタ(以下、タキザワ氏):PLAYERSは「一緒になってワクワクし 世の中の問題に立ち向かう」をスローガンに掲げているチームでして、現在は25名ほどのメンバーで構成されています。
全員が本業を持ちながら、ボランティア・プロボノとして活動しています。
--全員が本業を持っているって、すごいですね。タキザワさんは普段、どんなお仕事をされているのですか?
タキザワ氏:私は普段は広告代理店のワークショップデザイナーとして、新規事業開発・ブランディング・人材育成・組織開発など、企業が抱える課題の解決に向け、ワークショップを実践しています。
--まさにパラレルキャリアを実践されているんですね!元々はどんなきっかけでPLAYERSを設立されたのですか?
タキザワ氏:最初のきっかけは2016年に実施されたGoogle主催の「Android Experiments OBJECT」というコンテストでした。Androidを活用したIoTデバイスのアイデアを競うものです。
もともとこのコンテストに応募したのは「ハイレベルなメンバーだけでワークショップをやったら、どんな場やアウトプットが生まれるのか?」を実験してみようと思ったことがきっかけでして、各分野の第一線で活躍する知人に声をかけていきました。
--タキザワさんの中で最強打線を組まれたワケですね。
タキザワ氏:はい。最終的には10名のチームが誕生し、3回のアイデア創発ワークショップを行ないました。そのワークショップから生まれた10個のアイデアを応募したのですが、結果として「スマート・マタニティマーク」と「Chronoscape」の2作品でグランプリを受賞しました。
次ページ:マタニティマーク問題を解決したい