農業に“ムスカ有機肥料”を活用、「高品質なイチゴ」の持続的生産に向けた実証実験がスタート

インタビュー

記事の要点

・「高品質なイチゴ」の生産と国内外への販売を行う遊士屋株式会社が、三重県伊賀市の農園にて、昆虫テクノロジー企業ムスカの「イエバエ技術」により作られた“有機肥料”を用いた生産実証実験を開始することを発表。

 

・実証実験では、イチゴ株の生育比較と、収穫量、食味値の比較調査を実施予定。他の農産品と比べ、より「おいしさ」の追及が進んでいる日本のイチゴ栽培において、サスティナブルな過程で作られた肥料からどのような成果が得られるのかをリサーチしていく。

 

・実証実験の設計と検証は、経験知や感覚で語られることも多い有機栽培の領域にアカデミックな視点を取り入れるために、京都大学大学院 農学研究科在学中から農業資材の研究・開発に携わってきた中道貴也氏(株式会社AGRI SMILE代表)が担う。

LoveTechポイント

自分たちの子どもや孫の世代が生きる時代にも豊かな食生活を残していくための取り組み、という点が非常にLoveTechであり、今の私たちに必要な視点だと言えるでしょう。まさに「森づくり」と同じ視点です。

昆虫技術から生産された食べ物も、他と全く変わらず、いや、さらに美味しくボリューミーになるということが“当たり前”になれば、さらなるエコシステムの拡張が期待できるので、ムスカ社の活躍に引き続き期待します。

編集部コメント

「高品質なイチゴ」の生産と国内外への販売を行う遊士屋株式会社が、三重県伊賀市の農園にて、昆虫テクノロジー企業ムスカの「イエバエ技術」により作られた“有機肥料”を用いた生産実証実験を開始することを発表した。

 

ムスカといえば、生ゴミや畜産糞尿、食料残渣といった有機廃棄物を、1週間足らずで100%飼料と肥料に変えるという、独自の循環システム(バイオマスリサイクル)構築に向けた技術を持っているリアルテック企業

 

ここで生産される「飼料」は、耐病性付与効果・増体効果・誘引効果(魚の食いつき向上)など、複数の機能性が大学機関によって実証されており、また「有機肥料」についても土壌改善効果・病原菌抑制効果・農作物の成長促進効果・収穫量の増加など、完熟させて作られた堆肥よりも優位な機能性を持つことが大学機関によって実証されている。

ムスカのバイオマスリサイクルの過程で生産される「飼料」(写真左)と「有機肥料」(写真右)(出典:株式会社ムスカホームページ)

 

一方、実証実験が行われる農園を所有する遊士屋では、苺生産ブランド「BERRY」を手掛けており、国内での直接販売や、タイ・シンガポール・台湾・香港などへの輸出も行っている。

BERRYのECサイト トップページ

 

あえて、ゆっくりと時間をかけて色づかせるという独自の手法を採用することで、少量生産ながら濃くて甘い特別な苺の生産を実現。贈答品用途としての人気が着々と高まっている。

濃い甘さと旨味が特徴の『よつぼし』と、酸味がなくて甘い白いちご『淡雪』。希少なだけでなく「おいしい」2品種を一度に楽しめるという、お土産や贈答にも人気の食べ比べセット『吟撰 完熟紅白苺 よつぼし / 淡雪』

 

このような取り組みを通じて同社は、世界でも類を見ない生産技術と品質を誇る日本のイチゴを、もっと生産者側の立場でストーリーテリングし、ビジネスモデルもシンプルにして、国内のみならず海外シーンでの価値をさらに高めていくことを目指している。

 

今回は、ムスカの「有機肥料」を使っての実証実験であり、イチゴ株の生育比較と、収穫量、食味値の比較調査を実施。

ムスカ肥料を施肥した遊士屋農園のイチゴ株

 

まずは農園での実地検証を進め、収穫までの一連の結果を見た上で、その先の研究へとつなげていくという、中長期的なスパンでのPDCAサイクルを想定しているという。

 

また実証実験の設計と検証には、京都大学大学院 農学研究科在学中から農業資材の研究・開発に携わってきた中道貴也氏(株式会社AGRI SMILE代表)が担う予定だ。

中道貴也氏/プロ農家の栽培動画配信サービス「AGRIs」を手掛けるAgriTechスタートアップ・株式会社AGRI SMILEの代表であり、他にも官庁・民間企業への農業後継者育成システムの提供や、農業資材の実証試験とそのサポート、および販売などを行っている

 

経験知や感覚で語られることも多い“有機栽培”の領域に、アカデミックな視点を取り入れることで、エビデンスを蓄積していくことが目的だという。

 

遊士屋株式会社 代表取締役の宮澤大樹氏によると、今回の取り組みで目指すところは、イチゴ栽培における「持続可能性の追求」だという。

遊士屋株式会社 代表取締役 宮澤大樹氏

 

「日本では“生食”が定番となっているイチゴですが、海外ではジャムやフルーツソースといった“加工品”用途として利用されるものも多く、故に“硬くて酸っぱいもの”といったイメージがあり、それを前提にした生産システムが構築されています。

 

つまり、日本のイチゴは、特に【美味しさ】にこだわって生産開発され続けてきました。

 

一方で、そのまま丸ごと食べることができるものとして、農薬の影響など、真偽不明な情報がたくさん出回ってしまっている側面も、イチゴにはあると感じています。

 

そもそも、日本の農産物を取り巻く“有機”や“オーガニック”といった言葉の定義には曖昧な点も多く、マーケティングに偏重していたり、実態とかけ離れた理解をされてしまったりしていることも多くあります。

 

そんな状況だからこそ、サステナブルな過程で作られた肥料からどのような成果が得られるのかをリサーチして、しっかりとエビデンスを積んでいき、その成果として『美味しい状態で持続性のあるイチゴ栽培』へとつなげて参りたいと考えています。

 

私たちの子どもや孫の世代が生きる時代にも豊かな食生活を残していくためには、今よりも環境負荷の少ない『持続的な循環システム』をつくっていく必要があるんです。

 

イチゴに限った話ではないが、インターネット上で様々な情報が簡単に発信できるようになったが故に、確証のない「無農薬信仰」のような話も出てきている。

 

だからこそ、こういった一つひとつの取り組みの「可視化」が大切になってくると言えるだろう。

 

昆虫産業元年となった2019年。

 

昨年の段階で熊本市中央区に設置された「世界初の昆虫食自動販売機」が大きな話題となり、昆虫食アイドルや昆虫食専門ECサイト、昆虫食専門Webサイトなど、専門に取り扱うヒトやプラットフォームサービスが次々と立ち上がった。

 

だが、昆虫食のインパクトはこんなものではないはず。

 

人々の“食”の根幹である肉・魚・野菜といった一次産業を支える、“0.5次産業”としての「間接昆虫食」の可能性認知が脈々と広がっており、今回の発表はその中のひとつだと言えるだろう。

 

間接昆虫食リーディングカンパニーであるムスカと、その魅力にいち早く気づいて生産・流通体制を整えた既存生産業者こそ、次世代の“食”を支えるリーダーになっていくのではないだろうか。

 

以下、リリース内容となります。

長岡武司

LoveTech Media編集長。映像制作会社・国産ERPパッケージのコンサルタント・婚活コンサルタント/澤口珠子のマネジメント責任者を経て、2018年1...

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