コンビニの数倍ある介護事業所の数
(福岡県庁にて小川洋福岡県知事を表敬訪問される鹿野氏)
--福岡を拠点にされた理由はなんだったんですか?
鹿野氏:これは全国を巡って実感したことなのですが、地域によって介護や新しいことに対する姿勢が全然違うんですね。北に行くほど閉鎖的になる印象があり、南に行くほど新しい取り組みにウェルカムな雰囲気がありました。
特に福岡に入った時に、ものすごく熱い方が多くて、僕の持っている課題感を自治体の方にお伝えしたところ、ぜひやりましょう!ということになって、福岡市を拠点に活動することになりました。要は人とのご縁があった、ということです。地縁も何もないところにも関わらず、大変有り難かったですね。
--現在は、ミルモタブレット(ケアマネジャー用タブレットシステム)は福岡で展開、ミルモネット(介護の地域資源情報検索WEBサイト)は東京で展開準備をされていらっしゃいますね。今後さらに展開を予定されているところはございますか?
鹿野氏:将来的には全47都道府県で導入するつもりで進めています。直近では、ぜひやりたい!というお話をいただいたところに、詳細を伺って導入を進めるようにしていますね。現状は北の方と関西の方でそれぞれ準備を進めているところです。
--比較的都心が優先的ですか?
鹿野氏:介護事業所が多すぎてわけがわからないって、基本的に都心の課題なんです。ご存知かもしれませんが、介護事業所って、コンビニの数よりも多いんですよ。コンビニの数倍の数があるのに情報がどこにもないから、選べないんです。だから必然的に、都心の方が課題感として高くなりますね。
45.9%のケアマネさんが自分の能力や資質に不安あり
--次にケアプランアシスタントについて教えてください。これはどういう仕組みのシステムなのでしょうか?
鹿野氏:ケアマネジャーさんが作成するケアプランの作成支援をするAIエンジンです。
2017年4月から国立情報学研究所 市瀬龍太郎准教授との共同研究を開始して、さらには東京大学 橋田浩一教授、統計数理研究所 持橋大地准教授を技術顧問に迎えて、研究開発を推進していきました。
今ようやく研究開発フェーズから、エンジンの質を上げて製品化に向けたフェーズに入っています。
--ケアマネジャーさんは、ケアプラン作成に苦労されているのですか?
鹿野氏:ケアプランって、結構難しいですよ。
これが実際のケアプランなのですが、どうですか?難しくないですか?
--はじめて見たのですが、これを一人で作るとなると、相当大変ですね。
鹿野氏:ロジカルシンキング力が相当必要なんですよ。しかも、医療から日常生活まで、必要な知識の範囲が幅広いんですよね。
日々相談者が増えて行く中で、これだけの課題分析をさせるのって、相当無理があると思います。しかもケアマネジャーさん一人当たり、平均して25人前後の被介護者を担当しているという。法律上は35人までみれるのですが、そこまで手が回っていないです。
もう業務的にパンパンなんです。
さらに、ケアマネジャーさんに向けてアンケート調査をした結果があるのですが、これが衝撃的なんですよ。
自分の能力や資質に不安があると思っているという方が45.9%にも上ったのと、ケアマネジャーを続けられないと思うことがあるという方も46.2%に上ったんです。
これ、すごく衝撃なデータですよね。
<調査結果引用元>
平成28年厚生労働省居宅介護事業所及び介護支援専門員の業務等の実態に関する調査研究事業
平成25年三菱総研 居宅介護支援事業所及び介護支援専門員業務の実態に関する調査
--これは、被介護者からしたら不安な数字ですね。
鹿野氏:これ、逆のデータもあって、担当しているケアマネジャーさんを信頼しているかどうか、という被介護者へのアンケートについては、なんと80%を超えているんですよ。
つまり、8割以上の被介護者はケアマネジャーさんのことを信頼している反面、半分のケアマネジャーさんは不安に思っているという。このギャップが僕としては非常に問題だなと感じていて、少しでもケアマネジャーさんの負担を減らす必要があると考え、ケアプランアシスタントの研究開発を早急に進めています。
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