記事の要点
・バイオテクノロジー企業のムスカが、独自に生産する「ムスカ有機肥料」を使った新たな施策、「熊本県菊池市アグリ技術実証事業への採択」と「個人向けクラウドファンディング」を同日に発表。
・菊池氏との取り組みでは、地作りや減農薬栽培にこだわりを持って野菜等を栽培する農業生産者と共に、「豚糞由来のムスカ肥料」を既存で利用する堆肥等の農業資材の代替品として使用する実証事業を行う。
・個人向け園芸肥料のクラウドファンディングは、開始45分で100%を達成。ムスカ有機肥料プランや、ミニキャロット・ワイルドストロベリー等を有機肥料で育てる園芸セットプラン、ムスカ肥料を使って収穫したお米3kgプランなどが用意。
LoveTechポイント
サーキュラーエコノミーは循環が目的ではなく、その先には廃棄そのものを無くすプロセス創出が前提にあるものです。一方で、畜産糞尿などはどうしても発生してしまうもの。
これらを資源として100%有効活用できることがどれほどすごい、LoveTechなことか。思いが伝わるクラウドファンディングのメッセージだと感じます。
編集部コメント
バイオテクノロジー企業のムスカが、独自に生産する「ムスカ有機肥料」を使った新たな施策、「熊本県菊池市アグリ技術実証事業への採択」と「個人向けクラウドファンディング」を同日に発表した。
ムスカといえば、生ゴミや畜産糞尿、食品残渣といった有機廃棄物を、1週間足らずで100%飼料と肥料に変えるという、独自の循環システム(バイオマスリサイクル)構築に向けた技術を持つ昆虫テクノロジー・スタートアップ。そのエンジンともなる、約50年に渡る1,200世代の選別交配を経て育った「サラブレッド化したイエバエ」は、もともとは旧ソ連における米国との宇宙開発競争の一環で“家畜化”された生物である(関連記事はこちら)。
そんなムスカが採択された「令和2年度 菊池市アグリ技術実証事業」は、同市の生産者が抱える各種課題を、ベンチャー・研究者等の先進技術により解決することで、農業生産者の事業成長促進を目指す取り組み。その中で同社は、地作りや減農薬栽培にこだわりを持って野菜等を栽培する農業生産者と共に、「豚糞由来のムスカ肥料」を既存で利用する堆肥等の農業資材の代替品として使用する実証事業を行う。
つまり、ムスカ肥料を自治体実証事業で公式に実証活用しようという試みだ。実は、同社が地方自治体との実証事業を公に発表するのは、これが初めてとなる。
ムスカラボの畑
具体的には、作物の収量や成分、土壌等の変化を分析することで、既存の農業資材に代わるムスカ肥料の有効性についての“科学的な検証”を実施するというわけだ。
例えば昨年実施された「サスティナブルフード試食会」では、宮崎県延岡市で主に米の収穫を行う祝子(ほうり)農園 園主の松田宗史氏が登壇し、7年前から使用しているムスカ肥料の効果について言及。「程なくして土がトロトロになって、雑草が生えなくなって、稲の姿が変わっていった」と表現していた。この定性的な効果を定量化し、数値上の効果として見える化することが、今回の実証実験の大きな目的の一つでもある。
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そしてもう一つ、今度は初のtoC向け施策として、「個人向け園芸肥料」のクラウドファンディングもMakuakeで開始した。その名も「一週間で世界をすこし良い未来へすすめる肥料」。思いがそのままリターン品名になったような名前だ。
先述の菊池市での取り組みにも関わってくることだが、養豚等の畜産過程で発生する畜産糞尿は、実は地球温暖化の一因になっている。
そもそもだが、日本国内で間に排出される畜産糞尿の量は年間8,000万トン、東京ドーム約61個分にも上り、年間640万トンのフードロスの実に12倍以上となっている。
これら畜産糞尿は堆肥化させることが法律で義務付けられているのだが、その処理の過程で発生するメタンガスと亜酸化窒素は、それぞれCO2の25倍と300倍の温室効果があり、畜産糞尿の処理過程での放出量が国内総放出量の11%と22%に及ぶことが、全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)の調査で明らかになっている。日本は農業活動が主要な国内産業ではなく、その割合が比較的小さいにも関わらず、排出されるメタンガスと亜酸化窒素の比率は非常に高いことが、ここからお分りいただけるだろう。
これに対して、MUSCA方式では圧倒的な省力性で、温室効果ガスの発生を大幅に削減する。具体的には、一般的な手法だと堆肥化まで約2〜3ヶ月の時間がかかるが、ムスカ肥料はものの1週間で完了してしまう。それに伴い、メタンガスと亜酸化窒素の発生も抑えられ、悪臭すら最小限にとどまる。実際に筆者が宮崎の「ムスカラボ」に行った際、畜産糞尿独特のツーンとする臭いはほとんどなかった。
このようなムスカ有機肥料の特徴を知ることで、地球の一員である我々の意識を呼び覚まし、各々の地球環境への「自分ごと化」を推進することが、本クラウドファンディングの本質と言えるだろう。
もちろん、リターン品も素敵なものばかり。ムスカ有機肥料をそのままリターンするプランもあれば、ミニキャロットやワイルドストロベリーを有機肥料で育てる園芸セットプラン、先述の祝子農園が収穫したお米3kgプランなども用意されている。
ぜひ気軽な気持ちで、話題の肥料を試してみると良いだろう。
開始45分で100%を達成したMakuakeプロジェクトページ
2018年は大いに種をまき、2019年はひたすら耕し、2020年に少しずつ芽が出る。
そんなムスカの成長を、引き続き注視していきたい。
以下、リリース内容となります。