「藻類」でカーボンニュートラル実現を推進。ちとせグループが官民20機関と新プロジェクト発足

食/地域/環境

記事の要点

・バイオベンチャー企業群 の「ちとせグループ”」が、9業種20機関と共に、藻類を活用した日本発の企業連携型プロジェクト『MATSURI』を始動。

 

・藻類培養に関わる設備の開発や物流網の整備、最終製品の開発・販売など、藻類の生産から販売に至るまで、全ての段階でそれぞれの事業を展開し、パートナー企業が一体となって藻類産業の構築を目指す。

 

・光合成を活用した藻類の生産を通じてカーボンニュートラル実現を推進すると同時に、パートナー企業間で連携して事業開発を行い、燃料をはじめプラスチックや食品、化粧品など人々の生活を支える藻類製品を社会に普及させていく予定。

LoveTechポイント

ちとせグループでは、藻の食用に向けた研究開発を続けており(参考記事)、ブルネイ・ダルサラーム国では生スピルリナの生産能力拡張に向けた工場も設立しています(参考記事)。

そんな同社が推進するMATSURIプロジェクトによって、化石資源の大量消費を前提に組まれている現代の産業構造が、少しずつ変わっていくことに期待したいと思います。

編集部コメント

バイオベンチャー企業群 の「ちとせグループ」が、カーボンニュートラルの実現に向けて、藻類を活用した新産業をつくる日本発の企業連携型プロジェクト『MATSURI(まつり)』を、9業種20機関と共に始動した。

 

 

「藻類」とは最も古い植物のひとつで、主に水中に生息しており、その大半が光合成を行っている。光合成によって合成された種々の化合物は、各産業の原料として利用することができるため、様々な産業分野で近年注目されている。

 

例えば、藻類は光合成による物質生産効率が地球上で最も高く、現行農業で最もオイル生産効率が高いパームと比べて2倍以上のオイル収量が見込める。タンパク質収量も大豆と比べ16倍以上あり、近年問題となっている「エネルギー危機」や「たんぱく質危機」解決の一手として期待されている。

 

また、有限な淡水資源の利用が社会課題とされるなか、藻類は農業や畜産よりずっと少ない量の水で培養することが可能で、生産に土壌を必要としない為、農業利用が難しい砂漠や荒地、耕作放棄地なども活用することができる。

 

実際に、世界では砂漠地帯や溶岩台地、塩田跡地でも藻類の大規模商業生産が行われおり、食料の安定供給が課題となるこれからの時代に、土地利用において食糧生産と競合しないことは、ともて大きなメリットだ。

 

このように、食料からエネルギーまで活用の幅が広く生産場所も選ばない藻類は、社会課題解決のための重要な存在となっている。ちなみに、同グループ企業の株式会社タベルモでは、地球上最古の植物と言われる「スピルリナ」を使った様々な食プロダクトを提供している。

 

今回の企業連携型プロジェクト「MATSURI」では、以上のような藻類の活用可能性を存分に活かし、サステナブルな社会づくりを目指すためにために始動したものとなる。

 

MATSURIでは、藻類培養に関わる設備の開発や物流網の整備、最終製品の開発・販売など、藻類の生産から販売に至るまで、全ての段階でそれぞれの事業を展開し、パートナー企業が一体となって藻類産業の構築を目指していく。

 

大きな特徴は、企業等とのパートナーシップを活用した、経済的な藻類製品の展開にある。

 

現在、健康食品や化粧品等の分野では藻類から得られる成分を用いた製品が既に販売されているが、燃料やプラスチックなど、比較的単価が安い製品は、藻類原料の生産コストと製品価格が折り合わない為、事業化が進んでいない。

 

そこでMATSURIでは、それぞれ異なる分野で藻類製品の開発を志すパートナー企業と共に、藻類を構成するタンパク質・脂質・炭水化物など全ての成分を最大限活用することで、あらゆる分野で収益性が確保できる産業構造の構築を目指していく。

 

また、透明性のある情報発信にも力を入れるという。近年、欧米を中心に、環境へ配慮していることを装いながらも、その実態はごまかしである「グリーンウォッシング」な取り組みが問題視されている。だからこそMATSURIでは、製品中の藻類原料の含有量や生産方式といった定量・定性的な情報を開示し、サステナブルな社会づくりに向けた透明性のある取り組みを徹底するという。

 

2021年5月13日時点では、以下9業種20機関のMATSURIへの参加が決定しており、今後も、共に新産業を創っていくパートナー企業を広く募集していく予定だ。

 

《パートナー企業とMATSURI参加の目的》

 

  • ENEOS株式会社:低炭素・循環型社会実現のため、燃料のみならず参加企業と共に多様な製品開発を行い、持続可能な藻類事業を目指す。
  • 三井化学株式会社:「カーボンニュートラル」の実現に向け、原料転換の方策の1つとして藻類の活用に取り組む。自社製品・技術の藻類産業への応用。
  • 日本精化株式会社:藻類由来素材の探索・評価と、サステナブルな化粧品原料や特徴ある化成品などの藻類由来素材製品の開発と販売。
  • 株式会社富洋海運:海外での藻類の大規模培養・藻類由来燃料の購入、運輸。
  • 日本特殊陶業株式会社:環境持続性のある藻類事業に対する調査検討。
  • 本田技研工業株式会社:藻類由来の石油代替樹脂原料の可能性を皆さんと見つけていきたい。
  • 三菱ケミカル株式会社:藻類培養、加工への自社技術の応用による新規事業の開発。
  • 興和株式会社:藻類由来の製品の販売網構築。
  • DIC株式会社:オープンイノベーションの推進・既存事業の拡大。
  • 富士化学工業株式会社:自社事業で得られる藻類残渣の活用、藻類を活用した新規事業探索。
  • 株式会社日立プラントサービス:藻類加工プラントエンジニアリングへの自社技術の応用・新規事業を見据えた顧客への新たなソリューションの開発。
  • 池田糖化工業株式会社:食分野における藻類由来の製品の開発・販売。
  • 武蔵塗料ホールディングス株式会社:塗料分野における藻類由来の製品の開発・販売。
  • 新潟県長岡市:バイオエコノミーの推進、検討会における参画企業(団体)との情報交換、地域企業における事業参画機会の創出。
  • 佐賀県佐賀市:バイオマス産業都市構想の実現に向けた、藻類事業によるCO2利活用及び藻類の多段階利用によるパートナー企業との共同事業の展開。
  • 山梨県北杜市:脱炭素社会の実現を目指す「ゼロ・カーボンシティ宣言」の取り組みの一環として、科学的知見に基づく様々なアイディアを取り入れること。

 

今後MATSURIでは、カーボンニュートラル実現の推進と併せて、2025年に世界最大となる2,000haの藻類培養設備を建設し、様々な製品の原料として300円/kg以下の生産コストで140,000トン/年(乾燥重量)の藻類を供給できる体制を確立すると表明している。

 

藻類由来の製品を、社会の文化にするというわけだ。

 

化石資源の大量消費を前提に組まれている現代の産業構造が、MATSURIのようなプロジェクトの存在によって、少しずつ変わっていくことに期待したい。

 

LoveTechMedia編集部

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