睡眠時無呼吸症候群患者むけ体位変換機『横向きベルト』、患者会「SASネット」が開発・提供

医療/福祉

記事の要点

・睡眠時無呼吸症候群の啓発や患者のサポートを進める患者会・SASネット(NPO法人睡眠時無呼吸症候群ネットワーク)が、患者向けプロダクト『横向きベルト』を開発。従来のCPAP(シーパップ)療法や体位療法のデメリットを克服するプロダクトとして発表。

 

・『横向きベルト』は、体位センサーとバイブレーターの働きで使用者を横向きに寝かせる器具で、ベルトをお腹に巻いて布団に入り、スイッチをONにするだけで、睡眠中に上向き寝になるとセンサーが感知し、バイブレーターが弱く振動する。振動により無意識に横向きになると、今度は横向きになるとバイブレーターが止まるという仕様となっている。

 

・こちらの効果の試験は、東京都新宿区の駒ヶ嶺医院睡眠呼吸センターで実施しており、結果は今年6月27日開催の日本睡眠学会で報告され、論文が2019年9月25日発行の医学雑誌「睡眠医療」に掲載されている

LoveTechポイント

過度なテクノロジーを活用せずとも、睡眠時無呼吸症候群患者に寄り添うプロダクトを提供している点が、LoveTechだと感じます。

自身や近親者が睡眠時無呼吸症候群で困っているという方は、負担が少なく効果のエビデンスも取得できている『横向きベルト』を使ってみてはいかがでしょう。

編集部コメント

安らかな睡眠時間のはずが、過眠や高血圧などを引き起こす時間に変わってしまっているかもしれない。

 

それが「睡眠時無呼吸症候群」である。

 

睡眠時無呼吸症候群とはその名の通り、眠り出すと呼吸が止まってしまう病気。

 

呼吸が止まると血液中の酸素濃度が低下するため、目が覚めて再び呼吸し始めるが、眠り出すとまた止まってしまう。こんなループが一晩中繰り返されるため、深い睡眠がまったくとれなくなり、日中に強い眠気が出現してしまう。

 

酸素濃度低下を補うために心臓の働きが強まる結果として高血圧になったり、動脈硬化が進んで心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなったり、さらには睡眠不足に伴うストレスにより血糖値やコレステロール値が高くなり、さまざまな生活習慣病やメタボリック・シンドロームがひきおこされる原因にもなりうるという、恐ろしい症状だ。

 

これに対する現状で最も効果が高い治療法は、CPAP(シーパップ)療法と呼ばれるもの。

 

機密性の高いマスクで鼻周辺を覆う形で固定し、マスクにポンプで空気を送り込む。この圧力によってノドが広がり、呼吸が維持されるという、即効的な手段だ。

 

一方、仰々しい装着による違和感や空気圧の不快感、鼻粘膜の乾燥、マスクからの空気漏れによる目の刺激などがあることから、治療を中止している患者が30%程度いることも現状なのである。

 

これ以外にも、横向きで寝るのを促す「体位療法」というものがあり、舌の根(舌根)が気道に落ち込み、空気がスムーズに通らなくなるのを防ぐ形で、無呼吸の程度の悪化を防止する方法もある。

 

しかし、眠っている間の体の向きをコントロールするのは、容易ではない。

 

そこで、睡眠時無呼吸症候群の啓発や患者のサポートを進める、NPO法人睡眠時無呼吸症候群ネットワーク(以下、SASネットワーク)が開発したプロダクトが『横向きベルト』だ。

 

『横向きベルト』は、体位センサーとバイブレーターの働きで、使用者を横向きに寝かせる器具。

こちらのベルトをお腹に巻いて布団に入り、スイッチをONにするだけで、睡眠中に上向き寝になるとセンサーが感知し、バイブレーターが弱く振動する。

 

振動により無意識に横向きになると、今度は横向きになるとバイブレーターが止まるという仕様だ。

 

こちらの効果の試験は、東京都新宿区の駒ヶ嶺医院睡眠呼吸センターで実施しており、結果は今年6月27日開催の日本睡眠学会で報告され、論文が2019年9月25日発行の医学雑誌「睡眠医療」に掲載されている。

 

その時の試験方法と結果は以下の通り。

試験方法:

対象者    周囲よりイビキを指摘されている人
被検者数   男性12名、女性2名、計14名
試験方法   1日目は横向きベルト装着無し、2日目はベルト装着あり。これを群間比較。
測定項目   上向き寝・横向き寝の時間、就寝時間、血中の酸素濃度
解析対象者  全く上向き時間がなかった1例(男性)を除く13例

 

結果:

  1. 上向き寝の時間は、横向きベルト装着により3時間22分から31分へと有意に減少し(p<0.004)、1/6以下となった。
  2. 横向き寝の時間は、横向きベルト装着により2時間42分から5時間55分へと有意に増加し(p<0.003)、2.2倍になった。

    「横向きベルト」装着により各被験者の横向き時間が増加した

  3. 睡眠時無呼吸症候群が悪化すると、血液中の酸素濃度は低下する。横向きベルトを装着すると、低下度を示す3%ODIの値は有意に抑えられ、改善がみられた。低下度の中央値は、横向きベルト無しで13.6、横向きベルト装着で7.0(p<0.003)であった。

「横向きベルト」の装着により各被験者の酸素濃度の低下が小さくなった

 

自身や近親者が睡眠時無呼吸症候群で困っているという方は、負担が少なく効果のエビデンスも取得できている『横向きベルト』を使ってみてはいかがでしょう。

 

以下、リリース内容となります。

LoveTechMedia編集部

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