すれ違いを恋のきっかけに「クロスミー」《前編》

男女の出会い手段として急速に普及が進むマッチングサービス。2012年に日本で初めてのマッチングサービスが登場してから、Facebookの普及とともに、数多くのアプリが登場してきた。市場規模は2018年に374億円、2023年までには852億円にまで拡大するとの予測データがあるほど、市場は急速なスピードで成長している。(「恋活・婚活マッチングサービスの国内市場調査」株式会社マッチングエージェント調べ)
マッチングの仕組みは、それぞれサービスの独自性を発揮されるところ。共通のコミュニティを通じてマッチングを促すものもあれば、最初にデート会場を決めてからマッチングをさせるものもある。中には完全審査制で、審査を通過した方しか利用できないものもある。
今回Love Tech Mediaでは、スマホの”位置情報”をマッチングに利用するというユニークな機能で注目されるCROSS ME(以下、クロスミー)を取材した。「すれ違いを恋のきっかけに」というサービスコンセプトが、非常にキャッチーである。
前編・後編に渡って、同アプリを開発・運営する株式会社プレイモーション 代表取締役社長の平松繁和(ひらまつ しげかず)氏にお話を伺った。同社はサイバーエージェントグループとして、「タップル誕生」「mimi」とともにグループのマッチングサービス事業を牽引している。
スマホのGPSを利用して位置情報を取得
--すれ違いを恋のきっかけにするって、とても素敵なコンセプトですね。スマホの位置情報をマッチングに利用するとは、具体的にどういうことですか?
平松繁和(以下、平松氏):皆さまが利用されているスマホにはGPSが搭載されており、位置情報を取得することができます。
その位置情報をクロスミーが取得して、ユーザー同士が一定の距離内に近づくと、すれ違ったとみなしてお相手リストに表示される仕組みとなります。
実際に至近距離ですれ違う、というケースだけではないのですが、偶然の出会いを演出したくて「すれ違い」と表現しています。
--すごくシンプルでわかりやすいですね!アプリは、常に位置情報を取得し続けるのですか?
平松氏:それは選択することができます。アプリを起動中の時だけ取得するようにできますし、常に取得して多くの方とすれ違うようにすることもできます。
また、アプリ起動中でも、状況に応じて自動で位置情報取得をOFFにすることもできます。例えば自宅や職場の近くではマッチングしたくない、というお声に対応する形で、そもそもすれ違いを発生させないエリアや時間帯を設定できる機能もついています。
--特に女性は不安な方が多いでしょうからね。
平松氏:最大2箇所まで、任意の場所から半径1kmのエリアをすれ違い対象から除外するように設定できます。ユーザーによってはプライバシーを守りたい、職場と自宅を除外するケースを想定しています。
この辺りのセキュリティ対策は、本人確認やメッセージ監視の他に、サービス設計のレベルでしっかりと落とし込んでいます。
代表藤田からのダイレクトメッセージがきっかけ
--平松さんは現在はマッチングサービスを運営する会社の代表ですが、もともとはどのようなご経歴なのでしょうか?
平松氏:もともと新卒で入った会社では、ガラケー(携帯電話)向けの着メロやデコメサイトのディレクター/プランナー、ソーシャルゲームのディレクションをしていました。またプライベートでも、企業の考察サイトなど何個かのブログやメディアを運用していました。
そんな中突然ツイッター経由で、サイバーエージェント代表の藤田から連絡がきたんです。一度会いましょうって。大変ビックリしましたが、同時に嬉しかったですね。
--藤田社長自らが連絡してきたんですね!どんなお話をされたのですか?
平松氏:最初は偽物かな、とも思いました(笑)
どんな話をしたか、細かいことは正直あまり覚えていないんですよね。
雑談だけだと勿体ないので、一応サイバーエージェントのサービス改善に関する資料を作って持って行ったことは覚えています。それ自体に意味があったかはわかりませんが、結果として藤田に「うちに来て欲しい」と言ってもらい、そのまま同社に入社することになりました。
--なるほど。もともと、今のような恋活関連の事業をされようと思われていたのですか?
平松氏:いえ、入社当初から恋活・恋愛関係のサービスをやろうと思っていたわけではなく、最初はゲーム事業の会社を同社内で立ち上げました。でも後発参入だったことが影響し、失敗してしまいました。
事業を方向転換させる必要があり、主に海外のアプリ情報を収集していったところ、マッチングサービスにまだチャンスがありそうだと考えました。
様々な国のサービスを調べていった中で、ちょうどヨーロッパで位置情報を利用したマッチングサービスが流行っていたんですね。
これは面白いと感じて国内を見渡すと、まだ検索型のマッチングサービスが主流という状況でした。位置情報を利用したサービスはほとんどなく、それ自体がエンタテインメント性を持っているとも感じたので、「すれ違い」というコンセプトでサービス設計することに決めました。
--「クロスミー」というサービス名はどのような意味なのでしょうか?
平松氏:名称は結構悩みました。
すれ違う・ばったりと出会うという意味の”cross path”という言葉があります。最初はこれを検討したのですが、クロスパスって日本人にあまりなじみのない響きだなと感じました。他にもhello(ハロー)とか色々と名称を考えたのですが、結局は日本人の頭に入りやすい「CROSS ME(クロスミー)」に決定しました。
もともと英語で”Don’t cross me”「私に逆らうな」という言葉があるので、ちゃんと意味を考えると不思議な名称なんですけどね(笑)
男性の継続率を”下げる”施策
--サービスを立ち上げてから今日に至るまで、特に苦労されたことは何でしたか?
平松氏:実はサービスリリース直後は、非常に順調な滑り出しでした。継続率が高く、ユーザーがどんどん増えていく。
さらには当時、Pokémon GOが流行っていまして、位置情報が話題になっていました。
これは来た!と思ったのですが、特に男性からの人気が高すぎたため、徐々に男性比率が高くなっていき、8:2で男性が多いくらいにまで比率がかたよりました。このまま放置すると9:1など、マッチングサービスとして成立しなくなってしまうという状況が危惧され、男性の継続率を下げる施策と、女性の継続率を上げる施策を始めました。
--男性の継続率を下げる施策って、あまり聞いたことがないので面白いですね。
平松氏:当時は学割プランをやっていました。若い方にも使って欲しいという気持ちから導入したのですが、それが男性継続を高めすぎてしまう要因になっていたので、先述の背景から、泣く泣く学割を廃止することにしました。
同時に女性の継続率を上げる施策として、先ほど申し上げた、位置情報を除外するエリアや時間帯の設定ができる機能をつけました。
これらの施策を通じて、徐々に男女のバランスが良くなっていきました。
--アプリとして安全な設計になっていることが、特に女性にとっての安心材料ですよね。
平松氏:もともと、マッチング後にメッセージのやり取りをして上手くいかなかった人と改めてすれ違ったりなどしたらトラブルの元になるので、マッチングした相手とは再度すれ違えない、という設計にはしていました。
一方、「自宅が特定されそうで怖い」というレビューや口コミが一部ありまして、そういうリスクに対応すべくどんな機能が必要かをメンバーと一緒に考え、現在の機能として実装しました。
スピードが大事だと考えています。


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