リアル店舗こそ最高のメディア、4/5オープン「蔦屋家電+」が目指す小売と日本の未来

インタビュー

 4月5日より「蔦屋家電+(つたやかでんぷらす)」がオープンした。二子玉川 蔦屋家電2階に設置された、世界中のユニークなプロダクトに実際に触れることができるショールーム型店舗である。

 品揃えのコンセプトは「博物、美術、そして万博」だという。どういうことだろうか。

 事前情報で製品一覧を拝見すると、LoveTech Mediaでこれまで取り上げたプロダクトも複数展示されているようだ。

 早速現地に行き、店内の様子や仕掛け人であるプロデューサーにお話を伺ってきた。

「リアル店舗での小売は儲からない、今後は間違いなくネットに代替されていく」

 そんな泣き言はもう時代遅れである。リアルな店舗だからこそ提供できる価値は必ずある。そんなことを感じさせる空間であった。

蔦屋家電+の前に、「蔦屋家電」とは

 そもそも蔦屋家電+の前に、「蔦屋家電」とは何なのか。

 正式名称は「二子玉川 蔦屋書店」。ライフスタイルを提案する家電店を目指して、2015年5月にオープンした。TSUTAYAでおなじみカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(以下、CCC)直営の新業態店舗であった。同年の4月に複合商業施設「二子玉川ライズ・ショッピングセンター テラスマーケット」がオープンしており、その一角に誕生した、アート&テクノロジーに満ちた場所として話題になった。

 広々とした2フロア構成になっており、衣食住の中の「住」にフォーカスし、住まいや暮らしを便利にそして楽しくする家電と、生活を豊かにする本や雑貨を中心に、飲食やボタニカルショップなどのテナントを交えて展開している。

 また、2018年3月10日には住まいや暮らしの提案力を強化するべくリニューアルオープンしており、パナソニックによる暮らしの知恵や住まいに関する最新情報を提供するコミュニティスタジオ「RELIFE STUDIO FUTAKO」が新たに開設されたり、世界の知育玩具や育児用品を販売する「ボーネルンド」と児童書フロアと遊び場がつながることでファミリー層が過ごしやすい環境に整備された。

デジタルとアナログを駆使して、来店者と創り手が交流

 この度オープンした「蔦屋家電+」は、この二子玉川 蔦屋家電2階の一角にオープンしている。今回はオープン前日のマスコミ向けプレオープンにお邪魔した。

 会場には全部で30のユニークなプロダクトが展示されており、それぞれに詳細確認用のタブレットが設置されている。

 具体的な使用方法について、タブレットを操作してムービー(動画)やギャラリー(写真)、そのほかスペック資料等を通じて確認することができる。

 蔦屋家電+の醍醐味の一つは、五感で楽しむ「体験」と創り手との「繋がり」である。

 特に後者について、創り手のプロフィールや製品に込められた思い、デザインのコンセプトなど、普段触れることが難しいリアルな情報を、蔦屋家電+の「キュレーター」が独自の目線で編集し紹介してくれている。タブレット情報はその中の一つである。

 またこちらの店舗、プロダクトの創り手に来店者の属性や行動データをフィードバックするべく、専用のシステムを導入している。

 AI・IoT・ビッグデータなどのプラットフォームを提供するオプティムが開発し、すでに小売、飲食、商業施設に導入されているAI Cameraによる分析システムを応用した「OPTiM AI Camera for Retail CE」だ。こちらを利用し、蔦屋家電+ 内に設置されたカメラで来店者の属性および行動データを、リアルタイムに個人を特定できない形に変換・収集し、創り手にフィードバックするという。

 また定量的なデータだけでなく、来店者と店員との会話を通じた製品への質問や要望といった意見内容も、閉店後に集約してフィードバックされる仕組みになっているという。

 デジタルとアナログが交錯し、来店者・出展者・蔦屋家電+、いずれもがWin-Win-Winとなる仕組みが設計されているというわけだ。

品揃えのコンセプトは美術、博物、そして万博

株式会社蔦屋家電エンタープライズ 蔦屋家電+プロデューサー 木崎大佑氏

 こちらが、蔦屋家電+ をプロデュースされた木崎大佑(きざきだいすけ)氏だ。

 学校卒業後に家電量販店で店舗・本社勤務を経験し、2013年にCCCに入社された。先ほどご紹介した「二子玉川 蔦屋家電」には企画段階から立ち上げに携わっており、売場マネージャー・広報・MDなどの職種を経て、今回の蔦屋家電+ の立ち上げ責任者となった。

「家電量販店勤務時代から、現場でモノを売る難しさを痛感していました。せっかく店舗にご来店いただいて、色々な製品についてご説明して購入をご検討いただいても、最終的にはネット上で購入されてしまう。そんなことが頻繁に起こっていました。

CCCに転職して約4年前に二子玉川 蔦屋家電を立ち上げた時も、結局モノを販売して利益を得るというビジネスモデルだと、ネットとずっとバッティングしてしまうなと感じていました。ネットの方が明らかに安くて便利で品揃えもありますから、消耗戦になってしまいます。

そこで『モノを売るのをやめたらどうか』という考え方をしたのが、蔦屋家電+ のそもそものきっかけです。

リアルの絶対的な価値って『触れる』ことなんですよね。

だからこそ、メディアとしての価値がWEBや紙媒体よりもあるのではないかという仮説のもと、店舗設計していきました。

 メディアとしてのリアル店舗の存在は、同じくWEB空間でメディア運営しているLoveTech Mediaとしても、非常に興味深い内容だ。店内には販売中のものはもちろん、販売予定であったり、現在開発しているクラウドファンディング中のものまで、様々なフェーズのプロダクトが展示されている。

「品揃えのコンセプトは美術、博物、そして万博です。

ネットや展示会などさまざまな場所から『未来が見えるような魅力的なもの』を私たちキュレーターが探してきて、創り手にお声がけしていきます。展示料金は、30日を1タームとして提供しています。もちろん、60日や360日など、創り手側のご希望によって最初から展示期間を長く設定いただくことも可能です。店舗内でプロダクトを実際に販売することももちろん可能でして、その際はマージンを頂きません。

全て展示契約料で収益をまかなうようにしています。

 素敵なコンセプトだが認知が広がっていないプロダクトはたくさんあるので、そのような創り手にとっては最高の話だろう。ちなみに正確な価格は非公開だが、展示契約料は数十万円前半程度の価格帯だという。

「構想から1年ほどかけて、ようやくオープンに至ることができました。

毎月30プロダクトを常に提案し続けるのは簡単なことではないですが、これを維持し、将来的には40・50・60と増やしていければと考えています。

また、ここ二子玉川だけでなく、将来的には地方都市にも展開していき、地方創生施策で人が集まるスポットとしての提案もしていけたらと考えています。

LoveTechな展示プロダクトをご紹介

 それでは、実際にLoveTech Mediaが入店してみて、「愛に寄り添っている」と感じた展示プロダクトを一部ご紹介する。

nemoph(パルスボッツ株式会社)

担当キュレーター:Ayaka Sato氏

 nemoph(ネモフ)は「ねむりのおとも」をコンセプトに開発された、もふもふのおやすみロボットである。ロボットといっても、複雑な操作は必要ない。撫でると時間を教えてくれ、話しかけると、寝ぼけたような返事をしてくれる。また、眠気を誘う不思議な話をゆっくりと優しい声で聞かせてくれたり、心地よいオルゴール音楽を流してくれるなど、一歩進んだ癒しを提供してくれる。もちろん、目覚めの時間もお供してくれ、爽やかな音楽とともにコトコト体を揺らしながら起こしてくれる。

 これまで様々なコミュニケーションロボットを見てきたが、睡眠に特化したものは珍しく、非常にユニークなプロダクトである。

 現地で実際に触ってみたが、なんとも言えない触り心地であり、そのまま自宅のベッド横に持って帰りたい気分になった。

スノアサークル EMSパッド いびきストッパー(株式会社Gloture)

担当キュレーター:Daikuke Kizaki

 同じ眠りでも、こちらのテーマは「いびき」である。

 いびきには肥満などの様々な要因があるが、スノアサークルはこの要因の中で「舌根沈下」によるいびきの発生の解消を意図して開発されている。舌根沈下とは舌根周囲の筋力の衰えにより、睡眠時に重力で舌根が下がり気道を狭めてしまう症状。狭い気道を空気が通ることで「いびき」が発生する。

 寝るときにこのスノアサークルを喉元に設置し、微弱電流により筋肉を刺激する。一般的にEMSとも呼ばれており、このテクノロジーが舌根沈下の解消に効果的だという。

 専用スマホアプリ「Sleeplus/スリープラス」と連動させることで、いびきの回数・音量・睡眠時間・サイクル・寝返り回数など睡眠の環境を確認することが可能にもなっている。

 パートナーのいびきに悩んでいる方にとって、非常に良いプロダクトだと言える。

STEM Portable(株式会社カドー)

担当キュレーター:Ayaka Sato氏

 加湿器でおなじみのカドーから、今度はポータブルマルチディフューザーが登場した。加湿のみならず、除菌消臭、アロマと、一台で三役をこなしてくれるという。

 本体にFANを搭載しているので、パワフルなマイクロミストが真上に向かって拡散し、周囲はすぐに潤う。また付属している“空間を洗う”除菌消臭剤「ピーズガード」をタンクの水に薄めて使用することで、ミストとして拡散し、安定型次亜塩素酸ナトリウムが、ウイルス、カビ、花粉やハウスダストなどに即座に反応して除菌消臭を効果的に実現する。同じくアロマについても、4種類のカドーオリジナルのフレグランスウォーター(別売り)を使えばおだやかな香りが広がり、居心地の良い空間を創ってくれる。

 STEM(ステム)とは植物の茎を意味する言葉であり、土の中から養分と水分を吸い上げ植物全体に届けていくイメージを製品に託しているという。

 蔦屋家電+の会場に良い香りが漂っていたが、STEM Portableのおかげだったようだ。

Catlog(株式会社RABO)

担当キュレーター:Ayaka Sato氏

 猫の生活データを24時間記録し、歩く・走るなどの運動や睡眠・休息、飲食などお留守番中の行動をスマホで見ることができる猫専用首輪型ウェアラブルデバイス「Catlog™」。猫に寄り添ったプロダクトだ。

 日本で猫は約952万匹飼われており、世界に目を向けると約6.3億匹と、猫は地球上のなかで最も飼育されているペットであるといわれている。そんな家族化する猫だが、基本的にはひとりで過ごすことが多く、病気などの異常に気づきにくい。

 そのような課題感から、猫の生活データを常に取得することができるようなバイオロギングを実現すべく、首輪型ウェアラブルデバイスの開発に至ったという。※バイオロギング:元々は水中で目視できない海洋生物に加速度ロガーなど小型のセンサーを装着し、生態行動を調査する研究手法。

 猫好きチームによる、猫のための最高のプロダクトだと言えるだろう。

ヘルスサーバー(ドリコス株式会社)

担当キュレーター:Ayaka Sato氏

 医学博士と管理栄養士が監修したアルゴリズムで、その人に必要な栄養素を自動で推算し、その場でサプリメントとして提供までしてくれる世界初のオーダーメイドサプリメントサーバーの誕生である。

 動画をご覧いただくとわかる通り、生体センサが指から取得できる「生体電位」を測定することで、自律神経の状態を推定し、今の自分に必要な栄養素を決定してくれるという優れものだ。

 ちなみに、サプリメントの元となる粉末は、このようにカートリッジ方式でのセッティング仕様が採用されている。プリンターを見ているようで不思議な気分である。

RETISSA Display(株式会社QDレーザ)

担当キュレーター:Shinya Yoshizaki氏

 近い将来、近視・遠視・乱視・老眼など、視力に課題のある方のライフスタイルを変えてしまうかもしれない。そんなプロダクトが「RETISSA Display」である。

 なんと、ごく弱いレーザを用い、映像そのものを壁面ではなく眼の中の網膜に直接投影するという、“網膜投影”という最新テクノロジーを採用している。遠方にも近方にも同時に焦点を合わせることができるため、通常のHMDで困難な画像と実視界の重ね合わせができ、真のARを実現できるデバイスと言えるだろう。

 そんな最新テクノロジーであるが、サングラスや眼鏡と同様の外観を実現しており、突出部をなくした特徴的なデザインによって、誰にとってもつけ心地のよいアイウェアとなっている。

TOYODA TRIKE OMEGA(豊田TRIKE株式会社)

担当キュレーター:Daikuke Kizaki氏

 自転車といえば、運転性能が悪いとすぐにハンドルに手ごたえが返ってきてしまい、運転にはそれなりのテクニックが必要となる。

 超高齢化社会に突入する日本において、若者はもちろんシニアの方にももっと安全にモビリティを楽しんでいただきたい、という思いから開発されたのが、こちらの「TOYODA TRIKE OMEGA」である。

 最大の特徴は、特許技術である「前二輪シンクロシステム」。合計三輪のバランスで従来の自転車よりもはるかに安定性が増すことはもちろん、前二輪左右が別駆動することによって、段差を乗り上げる際にまるで平坦な道に感じるような快適な乗り心地を実現している。

 まさに「次世代の自転車」と言えるだろう。

DishCanvas(Game Changer Catapult by パナソニック株式会社)

担当キュレーター:Shinya Yoshizaki氏

 調理家電の進化によって料理の可能性・楽しみ方の幅はどんどん拡がってきているが、その表現方法や演出はアートの領域であり、現在の調理家電で補うことは難しい。

 そんな中、お皿2.0とも呼ぶべきプロダクトが、あのパナソニックから発表された。DishCanvasは、お皿に搭載されたディスプレイによって、料理が持っている季節感やイメージをより豊かに、より深く、より自由に表現することができる。

 こちらは、パナソニックの中でも新規事業開発に特化したプロジェクト「Game Changer Catapult」を通じて進められているものだ。本年度のSlush Tokyo 2019でも展示されており、食の新たなる未来を感じさせてくれた。

 各家庭のお皿がディスプレイに変わる日も、遠くないかもしれない。

LoveTechな展示プロダクトをご紹介

 今回の取材で驚いたのだが、LoveTechMediaが「愛に寄り添っている」と感じたプロダクトの多くが、こちらのキュレーター・Ayaka Sato氏によるチョイスであった。まさにLoveTechな人物である。

株式会社蔦屋家電エンタープライズ 蔦屋家電+ キュレーター・Ayaka Sato氏

 最後にSato氏にもコメントを頂戴した。

「今回の第1期展示において、10プロダクトをキュレートさせて頂きました。個人的にはヘルステックやビューティーテックといった領域に興味があります。

LoveTechなチョイスは、たまたまだと思います(笑)無意識に選んでいました。

今回は多くないですが、開発中のプロダクトを、今後はもっと展示できたらと思っています。

企業規模に関わらず、日本では新製品の『製作発表』に力が入っており、実際の販売リリースの発表はトーンダウンするケースが多い印象です。

せっかく製作発表のタイミングで広く興味関心を持ってもらっても、発売リリースまでに時間がかかると、それだけ興味関心が薄れてしまいます。非常に勿体無いですよね。

蔦屋家電+ では、そんな背景も汲んで、素敵なプロダクトの認知向上の場として、また実際の顧客の声がフィードバックされて開発に反映されるような場を目指しています。

これからも良いプロダクトを探して参ります!

 

編集後記

既存の価値観にはないモノに触れることが、すなわち自分自身の幅を広げる風穴になると感じており、例えば書店などはまさにそのような場として機能していると考えています。

 

書店をアップデートさせたCCCグループが、新たに家電領域でこのような取り組みを始めたことは、ある意味で必然だったと感じます。

 

テックに限らず、様々なライフハックプロダクトが展示されているので、ご自身をアップデートする意味でも、ぜひ二子玉川の蔦屋家電+ に行かれてみることをお勧めします。

店舗名 蔦屋家電+(ツタヤカデンプラス)
オープン日 2019年4月5日(金)
営業時間 10:00~21:00
定休日 1月1日
所在地 二子玉川 蔦屋家電 2階
〒158-0094 東京都世田谷区玉川1丁目14番1号二子玉川ライズ S.C. テラスマーケット
ホームページ https://store.tsite.jp/tsutayaelectricsplus-futako/
Twitter https://twitter.com/t_electricsplus
Facebook https://www.facebook.com/tsutayaelectricsplus/
お問い合わせ Mail:tsutayaelectricsplus_info@ccc.co.jp

 

『蔦屋家電+』詳細についてはこちらをご覧ください

LoveTechMedia編集部

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