1秒に2組がマッチング!「タップル誕生」の挑戦《後編》

新しい出会いの形として、スマホ上のアプリを通じて理想のパートナーと出会えるマッチングサービス。前編では、「タップル誕生」を開発・運営する株式会社マッチングエージェントの取り組みと今後のビジョンについて、同社代表取締役の合田武広氏と、取締役の伊香賀淳氏にお話を伺った。
後編では、同社のCS(カスタマーサクセス)部門のリーダーを務める味噌里美氏にお話を伺った。また、ユーザーの声をリアルにヒアリングする場として同社が2018年から新たに取り組んでいるイベント「Tapple Tea(タップルティー)」の現場に潜入し、実際に参加された方及び運営メンバーの皆さまにお話を伺った。
社内外を巻き込んでの悪質ユーザー対策
まずはCS(カスタマーサクセス)部門のリーダーを務める味噌里美氏にお話を伺った。
——まずは味噌さんのお仕事について教えてください。
味噌里美(以下、味噌氏):現在、「タップル誕生」のカスタマーサクセス部門の責任者をつとめています。2015年に中途で入社をしたのですが、当時はユーザー対応の体制が不十分でして、その状況を改善すべく対応の仕組み化や体制を整ていきました。
——前編のインタビューで、サービス立ち上げ当初は合田代表自らがお問い合わせ対応のメールを打っていた、というお話を伺いました。体制を整えるにあたって、どのような課題感があったのでしょうか。
味噌氏:私が入社して少ししてから、利用規約に反する行動をとるユーザーが増えた時期がありました。。いわゆる、アプリ内での「通報」がすごく多くなったんですね。放っておくと、優良なユーザーにどんどん迷惑がかかってしまうということで、本格的に「監視業務の効率化」を進めることになりました。
——悪質なユーザーとは、具体的にどのようなユーザーでしょうか?
味噌氏:一言で申しますと、利用規約に反するユーザーのことで、大きくは3つのグループに分けることができます。
まず一つ目が、利用対象外ユーザーです。いわゆる18歳未満で年齢制限に引っかかっていたり、既婚者だったりで、アプリをそもそも利用できない方です。
二つ目は、なりすましユーザーです。いわゆる業者ですね。例えばですが、女性のふりをして実は男性が操作していて、男性ユーザーさまを自分たちのサイトに誘導して商売に引き込んで、お金を支払わせたりするような手口があります。
三つ目は、他の利用者に対して嫌がらせをするユーザーです。誹謗中傷したり卑猥な言葉をかけるなど、迷惑行為をするユーザーのことです。
この3つのグループの中で、二つ目の業者対策に特に注力して着手しました。
——具体的にどのように進められたのでしょうか?
味噌氏:我々の監視業務は、沖縄に拠点を構えるCAグループの子会社、株式会社シーエー・アドバンス(以下CAアドバンス)と連携して行っています。
CAアドバンスでは、これまで弊社のメディア事業「アメブロ」などのサイト監視を行っており、そのノウハウを活かしながらマッチング事業でも監視を行っています。
その中で改善するにあたり、大きく2つのアプローチが必要でした。一つは、実際に監視業務を担っているCAアドバンスとより密な連携を取れる地盤を作ること。もう一つは、そこで吸い上げた課題感を社内の開発チームに適切にフィードバックするということです。
特にCAアドバンスとの連携には密なコミュニケーションが必要なので、定期的に共通の目標を設定する合宿をするなどして、その地盤を整えていきました。
具体的には以下のような施策を実施していきましたね。
- CAアドバンスと共通の目標を設定する合宿の定期開催
- CAアドバンスの現場担当者全員と面談実施
- 連携スローガンをチームメンバー全員で考える
- 代表・合田氏を含めた定例MTGを実施
- 毎日の朝会で定期的にユーザーやCAアドバンスの声を届ける
上記のような施策を続けていったことで、CAアドバンスと当社内での一体感が生まれ、積極的な業務改善に繋がり、結果として業者被害をなるべく未然に防止できるような監視体制を整えることができました。
恋が成就するためのカスタマーサクセス
——そもそも貴社の「カスタマーサクセス」と言う呼び方がユニークですね。カスタマーサポートとはなにが違うのでしょうか?
味噌氏:カスタマーサポートは、困っているユーザーを助けるという、後追いの対応と考えています。一方カスタマーサクセスは、ユーザーの「恋人を見つける」というゴールに向けての手助けをする、先出しの対応と定義しています。
細かくはこちらの表でまとめているのですが、記載の通り、ユーザーの不満を個別に問い合わせ対応で解消するだけでなく、そもそもその不満が発生しないための仕組み作りをミッションとしています。
——そうなると、アプリの設計そのものにも密に関わってきますね。
味噌氏:はい。CAアドバンスと密な連携をとってのコミュニケーションができるようになったら、そこから吸い上げられた課題を開発サイドにフィードバックして、「恋人を作る」というユーザーの目標に対して存在する障害を取り除く設計になるように橋渡しをする、という役割を担うようにしています。
またその際に、開発の優先順位を決めるためにも、アプリとしてどのような課題がどれだけユーザー行動に悪影響を与えているかだったり、会社の損失として影響しているかを、わかりやすくデータを持って説明することも、役割として重要と考えています。
——課題感の吸い上げについて、CAアドバンスからの声の他に、何か収集されている手段はございますか?
味噌氏:ユーザーの声を直接聞くことも非常に重要と考えています。CAアドバンスの吸い上げの他に、タップル誕生に関するSNSやブログ投稿をチェックするのも一つありますし、アプリ内でアンケートを実施することもあります。
あと、最近では実際にユーザー何名かにお集まりいただき、直接ヒアリングする機会を設けています。今年から始めた取り組みとして、ユーザー参加型のサービス開発体制「Tapple Tea(タップルティー)」というのが、ユーザーヒアリングの場になります。
——Tapple Teaでは具体的にどのような対象者に集まっていただいているのですか?
味噌氏:第一回目は新機能をリリースした時の感想をヒアリングする目的で、参加者に制限を設けずに集まっていただきました。直近ですと、大学生に限定して開催します。普段、大学生の方の声を聞くことはなかなかないので、「タップル誕生」を使っているグループと、全く使ったことのないグループとで、それぞれ実施する予定です。
——なるほど、ありがとうございます。最後に、今後の目標をお願いします!
味噌氏:カスタマーサクセスとして、ユーザーが何か困った時に、今以上に満足度高い対応ができることが目標です。
タップルを使って本当に良かった!と思ってもらえることが、私たちのミッションであり、モチベーションにもなります。
より充実したサポート体制を作っていきたいと考えています!
ユーザーヒアリングの場「Tapple Tea」
次に、「タップル誕生」のユーザーヒアリングの場である「Tapple Tea」に実際に潜入して、参加者及び運営メンバーにお話を伺った。
今回は参加者ターゲットを”大学生”に絞って開催とのこと。
今回は「タップル誕生」運営メンバーでも普段なかなか接することのない大学生に対し、インタビューを行いタップル誕生のカスタマージャーニーマップ(※)を完成させることを目的としている。
※カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを知り、最終的に購買するまでの、カスタマーの「行動」、「思考」、「感情」などのプロセスのこと。
そのためにまずは、好きな雑誌やメディア、最近ハマっているアプリ、好きな芸能人やSNSフォローしているアカウントなど、ライフスタイルの理解から始める。
そして徐々に、マッチングサービスを利用するまでのきっかけについてのヒアリングに進んでいった。
実際に筆者の方でも、ユーザーの大学生の男女の方に、それぞれ質問をしてみた。リアルな声の一例である。
——「タップル誕生」を使い始めたきっかけを教えてください。
女性:AbemaTVで放送している「アプリで恋して何が悪い」(※)を見て、面白そうだなと思って始めました!ああいった恋愛系の番組はよく見ます。AbemaTVとAmazonプライムをよく見てますね。
※「アプリで恋して何が悪い」とは、AbemaTV(アベマTV)にて放送された恋活アプリリアリティーショー。「恋活アプリ」での出会いを通して1か月以内に恋人を作ることを目標にした本番組は、恋人のいない男女が趣味でつながる恋活サービス「タップル誕生」完全協力の元、アプリの中での出会いに密着。さらに、番組に出演するメンバーとアプリ内でマッチングし、実際に出会える可能性があるという、アプリならではの視聴者参加型恋愛リアリティーショーです。
男性:僕の場合は、Twitterで知り合ったゲーム友達とチャットしている時に、画面共有でタップル誕生の画面を見せてもらったのがきっかけです。何人かでチャットしていたので、みんなで始めてみようというノリになって、登録しました。
——なるほど。他のマッチングアプリは何か使っていますか?
女性:タップル誕生とPairs(ペアーズ)を使ってます。
男性:タップル誕生だけです。
——実際に、何人かとマッチングして会われていますか?
女性:5人くらいに会いました。これからもどんどん会う約束があります。
——5人の男性陣はいかがでしたか?
女性:変な人もいれば、普通の人もいるっていう感じですね。最近タップル誕生の機能で新しくできた「おでかけ機能」で、その日に会うことが決まった人が3人いたんですけど、意外と全員、普通にいい人でしたよ。
——なるほど。
男性:数人ですけど、同年代の人と会っていますね。アプリ内の文章とか読んで、趣味が一緒の人と会うようにしています。
——マッチングする上で重視しているポイントは何ですか?
女性:大卒以上、年収高め、身長高め、お酒が飲める、年齢が3歳以上上の人で探しています。
男性:とにかく趣味ですね。趣味が合わないことには始まらない、って感じです。顔の好みは、趣味が合ってこそですね。あとお酒好きってことも大事です。
——タップル誕生の「おでかけ機能」には複数対複数で会う機能もありますが、使われたことはありますか?
女性:昨日まさに2対2でマッチングしたんですけど、向こうの都合で結局会えなかったです。
——知らない人と複数対複数で会うことに、あまり抵抗はない感じなんですね?
女性:そこは、友達と一緒だし、特に抵抗はないですね。
——なるほど。ありがとうございました!
Tapple Teaでは質問シートに即す形で上記のような質問をしてヒアリングを進めていくことで、タップル誕生をより多くの方に知ってもらうための施策や、機能改善案に落とし込むことが狙いとのこと。
Tapple Teaを終えて
最後に、今回のTapple Teaを企画・運営している、株式会社マッチングエージェントのメンバーの皆様に、実施後の感想を伺った。
——イベントを終えられて、感想をお願いします。
男性社員さん:実際、ユーザーはちゃんと来てくれるのかとか、色々と不安要素がある中で、今日みたいにちゃんとお越しいただけるのは、本当にホッとしますね。本音を話してもらうため、仲良くなるために凄くフランクな雰囲気で話しているのですが、実はすごく緊張してます(笑)
女性社員さん:今回は2回目のユーザーヒアリングでした。私は1回目のイベント設計も担当したのですが、その時に初めてのユーザーヒアリングでどういったアウトプットを出せば良いのか、どうやったら本音を聞き出せるかなど、いろいろと試行錯誤しまして。1回目のフィードバックを受けての2回目だったので、いろいろと改善できた点はあったと思います。
前回も今回も感じたのですが、ユーザーの方は思っている以上に身近な人たちだな思いまして、そんな身近で良い人たちが使ってくれてるんだと思うと、何だかホッとしますね。
ヒアリングで得た結果をしっかり分析して、弊社内で共有したいと思います!
編集後記
本取材でTapple Teaに参加させていただき、実際にユーザーの方と対面して話を伺うことの大切さを、取材者ながら感じました。
想定した利用者と実際の利用者に乖離があればあるほど、サービスは独りよがりのものとなってしまいます。
マッチングサービスを牽引する「タップル誕生」の成長の秘訣は、このような地道なユーザーへの寄り添いと改善、と改めて感じました。
Love Tech Mediaでは今後も、サイバーエージェントグループで展開している各マッチングサービスを取材していく予定ですので、お楽しみに!
本記事のインタビュイー
味噌里美(みそさとみ)

LoveTechMediaは、【恋愛/結婚】【妊娠/出産】【育児】【家族生活】【福祉】【社会課題】の6分野を「人の”愛”に寄り添うテーマ」と定義し、これらのテーマをテクノロジーで補完する「人とサービス」の情報(Intelligence)をお届けする、というコンセプトで運営しています。
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