昆虫×テクノロジーで食糧危機の解消に挑戦するムスカ《中編》

インタビュー

 「イエバエ」を使って、畜産ふん尿や食品残渣等を有機肥料や飼料に100%リサイクルする循環システムを構築している株式会社ムスカ。

 前編では同社代表取締役会長の串間充崇氏に、ムスカ立ち上げまでの経緯について教えていただいた。

 中編でも引き続き、同氏のこれまでの事業展開における思いを中心に、お話を伺う。

》前編記事はこちら

 

人間が食べても問題ないです

 

--こういう新しい飼料を開発する際に、「安全性」を示すのって非常に大変だと思います。その辺りはいかがでしょうか?

串間充崇(以下、串間氏):まさに、その「安全性」がずっと課題でした。

もともと畜産糞尿など汚いものからできているものですから、しっかりと検証しないといけないと、フィールド時代から感じていました。

ですので、アビオスの代表として独立してからは、主に安全性の検証として、愛媛大学・宮崎大学と共同研究を進めて行きました。

正直、そこまでやるかというくらいまでやりましたよ。

 

--どういった観点で検証を進めて行かれたのでしょう?

串間氏:各種成分分析をしつこくやりましたね。

環境ホルモン、成長ホルモン、重金属類、残留農薬など、あらゆる成分分析を実施しました。

イエバエの幼虫からできた飼料を食べると、通常の飼料よりも魚が大きく、そして美味しく成長するんですよ。「それっておかしくない?絶対に何か変な成分が入ってるんだよ」と言われる方もいらっしゃるので、徹底的に検証していきましたね。

結果として、人が食べても問題ないくらいくらいまでやり尽くしました。

 

--例えば僕がこれを食べても、問題ないということでしょうか?

串間氏:問題ないです!飼料としてだけでなく、人間の食料としての基準もクリアできるくらいに考えていただければと思います。

飼料の安全性検証だけで、3年の期間を費やしました。

 

イエバエ配合エサを与えた魚は強く大きくなる

 

--先ほどおっしゃっていた「魚がイエバエ飼料を食べると大きく美味しく育つ」という点について、もう少し詳しく教えてください。

串間氏:先ほどの「安全性」の他に、「機能性」についても大学と共同研究をしていきました。マダイのエサとして使った場合にどうなるかの実験を記録したものがあります。

左側にイエバエを配合したエサが、右側に普通のエサがそれぞれあります。

 

串間氏:水中に投下すると、魚は一斉にイエバエ配合エサに群がっているのがわかります。

 

串間氏:イエバエ配合エサを食べ尽くしたら、今度は普通のエサに、群がります。

 

--極端なくらいに魚の反応が良いですね!

串間氏:しかも、イエバエ配合エサですが、イエバエはたった5%しか含まれていません。

ものすごく高い誘引効果があるわけです。

その他にも、マダイにわざと菌を感染させる実験では、イエバエ配合エサを与えたものは一匹も死なず、またサイズが最大40%も大きくなることが確認されました。

非常に高付加価値な動物タンパク性飼料となる事が立証されました。

 

僕の都合でやめたら人類に対する罪だ、くらいに考えていました

 

--25年以上イエバエを守って来られたわけですが、相当苦労されたのではと推察します。一番苦労したことは何だったでしょうか?

串間氏:売り上げがゼロの状態でも続けなければならないことが、しんどかったです。

数年前、大学との共同研究が一通り終わった段階で、大企業との提携の話も何社か進んだものの、結局は途中で止まってしまうんですよね。イメージが悪いって。まだ早すぎたんだと思います。

 

--確かに、大企業となると株価などへの影響も心配されますからね。

串間氏:そうなんです。

全員が良いものとわかっているのに、そういったリスクがあるので、みなさん、一番風呂に入りたくないんですよ。

それでいよいよ電気代も払えなくなってきた、どうしよう、ということが続いた時期がありました。

それでも、このハエが必ず世界に必要とされる、という確信だけはありました。今考えたら無駄な自信だったかもしれませんが、その確信だけでなんとか続けていきましたね。

 

--事業自体をやめよう、と考えられたことはなかったのですか?

串間氏:やめるという選択肢が頭をよぎったことは、正直あります。

でも相談していた大学の先生方から、絶対にやめない方が良い、という励ましの言葉を頂き、思いとどまったりしたこともありました。

何より、僕の都合でこのハエの種を途絶えさせることは、人類に対する罪だという、一種の強迫観念がありましたね。

 

--人類に対する罪って、すごく広い話ですね。

串間氏:この技術を世に提供することで、将来的に何億人もの命を救うことになるかもしれないのに、それをやめるということは、間接的に人を殺しているのと一緒だと。

それでなんとか続けていく中で、今出資していただいている株式会社BASESと出会い、一気に事業化へと舵を切ることができるようになりました。

 

昆虫メジャー企業に育っていきたい

 

--事業化フェーズに進まれたムスカさんの、今後の展望を教えてください。

串間氏:今の私たち人類が生活する世界で、陸海空の生物の中で一番使われていないのは昆虫なんですよ。

昆虫の機能を工業的・産業的に利用している事例はほとんどご存知ないはずです。

 

--確かに、思い浮かびませんね。

串間氏:せいぜい蚕(かいこ)くらいだと思います。

つまり、昆虫はほぼ未利用資源なんです。

こんなに可能性のある分野は、他にはないと考えています。

弊社としてはイエバエに限らず、複数の昆虫の機能性や特徴をうまく人類の役に立てる、”昆虫メジャー企業”に育っていきたいと考えています。

そのための最初の足がかりが、イエバエです。

 

--先ほどの話ですと、イエバエが最強のシステムに感じるのですが、他の昆虫を育てる必要性はあるのでしょうか?

串間氏:イエバエの仕組みは素晴らしいですが、不向きなこともたくさんあります。

例えばですが、イエバエは稲わらとかおがくずなど、繊維質なものの分解が苦手です。歯がないですしね。

一方、他の昆虫で繊維質を分解することに長けたものもあるわけです。

用途に応じて、ソリューションとなる昆虫を選べるようになりたいと考えています。

 

--展開は国内がメインですか?

串間氏:いえ、僕たちは最初からグローバルを狙っていきます。

 

 

》後編記事につづく

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