脳波でコミュニケーション、ALSの未来を変える第一歩がクラウドファンディング実施中

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LoveTech Media編集部コメント

脳が正常なまま全身が動かなくなり意思疎通が困難になっていく難病・ALS当事者が仕掛ける、脳波でのコミュニケーションを実現するための第一弾プロジェクト「BRAIN RAP」が、絶賛クラウドファンディング実施中である。

 

 

ALS(筋萎縮性側索硬化症)については、理論物理学者の故スティーブン・ホーキング博士の存在や、バケツに入った氷水を頭からかぶる寄付運動「アイスバケツチャレンジ」、分身ロボット「OriHime」などでご存知の方も多いかもしれない。

 

運動を司る神経の変性によって筋肉への命令が伝わらなくなり、意識や五感・知能の働きは正常のまま、筋力の低下が引き起こされ、徐々にコミュニケーションが取れなくなっていく難病である。

 

発症してからの平均余命は3~5年と言われており、極めて進行が速く、治癒のための有効な治療法は現時点で確立されていない。

 

世界で35万人、日本には約1万人のALS患者が闘っている状況だ。

 

低下する筋力は手や足だけでなく、声帯や目・肺の動きについても該当し、症状が進行すると人工呼吸器の装着が必要となる。

 

このように、ALSの最終的段階にはTLS(Totally Locked-in State:完全な閉じ込め状態)という状態になり、眼球運動やまばたきなど、全ての筋肉が完全に停止して、周囲との意思伝達を奪われてしまうことがある。

 

多くのALS患者が最も恐怖を抱いているのが、この状態だ。

 

そこで意志を伝え続ける、最後の希望となるのが「脳波」である。

 

脳波を使って、コミュニケーションを取ることができれば、例えTLSになったとしても、自分の意志を伝え続けることができるというわけだ。

 

この背景から、脳波でコミュニケーションの未来を変える第1歩を仕掛けているのが、一般社団法人 WITH ALS代表の武藤将胤(むとう まさたね)氏である。

 

武藤氏自身、2013年にALSを発症・2014年に宣告を受けており、現在はALSと闘病を続けながら、「テクノロジーの力で、すべての人に、表現の自由を。」というメッセージを掲げ、これまで目でDJ・VJをプレイする“EYE VDJ”として、ボーダレスエンターテイメントを創出してきた。

引用:「BRAIN RAP」プロジェクトクラウドファンディングサイト

 

第1弾のプロジェクトテーマは「BRAIN RAP」。

 

武藤氏が伝えたい想いを自身の脳波で選択し、その言葉を元に意識の辞書(AI)がリリック(韻を踏んだ歌詞)を生成、ラッパーさんと共に音楽にのせて想いを伝えるというものだ。

 

脳波を通じたコミュニケーションでラップを成立させるという、新しい形のエンターテイメントだ。

 

ここでは2つの最先端技術が使われている。

 

まず一つ目。音を意識する時に発生する特殊な脳波を捉えて、どの音(コマンド)を選びたいのかを知ることができる技術だ。

 

具体的には、脳波によって様々なコマンドを選択できるという新しいコミュニケーションツール「NOUPATHY(脳パシー)」の開発を進めているという。

 

共同開発パートナーは電通サイエンスジャム。

 

脳波をはじめとする生体信号解析をベースに、先端科学技術にアイデアを加え、新たなビジネスの開発と産業の創造および育成を行っている企業だ。優れた技術を掘り起こし、適切なパートナー(企業・団体等)との橋渡しを通じて、新しいビジネスへと昇華させていくテクノロジーブリッジングカンパニーである。

 

共同開発を進めているNOUPATHYは、小型でポータブルな脳波計とタブレットで、「音」に反応する特殊な脳波を読み取り、使用者の発したい意思を選択肢の中から選ぶことができるので、例えばTLSの状態で意思疎通が困難になったとしても、「食べたい」「飲みたい」「トイレ」など複数のコマンドから脳波で選択し、自分の意思を伝え続けることが出来るようになる。

 

現時点(2019.6)では2つの言葉(コマンド)から1つを選択しているが、徐々に精度を高め、年内には5つのコマンドから脳波で選択し、意思を伝えることが出来るように開発を進めていくという。

 

二つ目としては、「意識の辞書」である。

 

意識の辞書は、ニューラルネットワークによる単語のベクトル化技術を用いて、”特定の個人・集団の持つ意識の流れ”を収めた辞書をつくるプロジェクトだ。

 

テキストを解析し、そこで得た単語ベクトルの集合から最小全域木を構成。その後、深さ優先探索により単語を”意味の近いものをたどるように”並べていく。解析するテキストを特定の個人や集団のものに絞ることで、その人(ら)の”意識の中で意味が近い順に”言葉が並んだ辞書を作ることが可能になる。

 

この「NOUPATHY」と「意識の辞書」を組み合わせて、脳波からラップを生成するのが「BRAIN RAP」である。

 

ラップには本人の思いが込められており、ラッパーがそれを音楽に乗せて伝えてくれるわけだ。

 

BRAIN RAP披露の場は、WITH ALSがプロデュースする、様々な意志あるアーティストと送る、ALS啓発音楽フェス「MOVE FES. 2019〜NO LIMIT,YOUR LIFE.〜」。

2019年12月22日(日)@新木場STUDIO COASTでの開催が決定している。

 

今回のプロジェクト資金用途は以下の通り。

①プロジェクト開発、運営費:150万円
②PRリリース・動画制作費:20万円
③イベント開催費:150万円
④リターン費用:20万円
⑤クラウドファンディング利用手数料:60万円

※目標金額を上回った場合は、WITH ALSの啓発活動費として、大切に使わせていただきます。

 

ALS患者の方々を大きくエンパワーするLoveTechな取り組みである。

 

全ての人が自分らしく挑戦できる、ボーダレスな社会を目指したプロジェクトとして、本記事をご覧になった方は、ぜひ、詳細をプロジェクトページでご覧いただきたい。

 

以下、クラウドファンディングページとなります。

https://camp-fire.jp/projects/view/170345

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「”愛”に寄りテクノロジー」という切り口で、社会課題を中心に、人々をエンパワメントするようなサービスやプロダクトを発信しています。

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